満足度★★★
理想と現実の葛藤
尾崎亜美さんの既製のヒット曲を用いた音楽劇で、歌詞と物語が巧みに結び付けられた作品でした。物語はあまり好きなタイプではありませんでしたが、音楽の力に引き込まれました。
勤めていた不動産会社が倒産して無職になりながらも仲間に支えられて奮闘する男の物語と、その男の学生時代の恋人の付き合い始めから別れまでの回想が交互に描かれていました。
前半はウケ狙いのシーンが多く客の反応も良かったのですが、個人的にはあまり笑えず、もう少し落ち着いた雰囲気にして欲しかったです。後半は時代遅れの学生運動に入れ込んで行く彼女との確執を振り返って今の生き方を考え直す様子がドラマチックに描かれていました。
既成の曲を用いていながら、この作品の為の曲に思えるような構成が良かったです。
ラッキィ池田さんと彩木エリさんによる当て振り要素の強いコミカルな振付は作品の内容にあまり合っていないように感じました。
ターンテーブルを模した円形のステージは円形劇場に似つかわしい洒落たデザインでしたが、その美術が演出と絡むような趣向がなくてもったいないと思いました。
役者の出入り口の近くの席だったですが、初日だったせいか、裏から段取り確認の(?)声や小道具を動かす音が頻繁に聞こえて来たのが気になりました。