ここまでがユートピア×トラックメロウ 公演情報 劇団あおきりみかん×オイスターズ「ここまでがユートピア×トラックメロウ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    オイスターズ『トラックメロウ』:コミュニケーション苦手な人たちはひたすら不条理。
    思いもよらない攻められ方で、思わずはしたない声を出して笑ってしまった。
    とにかく笑った。

    ネタバレBOX

    前に観た『雑音』の面白けどヘンな手触り、その理由がちょっとわかった。
    そう、かなりの不条理なのだオイスターズは。
    完全な不条理劇なのに、大笑いな感じ。

    バスの設定がぐちゃぐちゃしてくるのも楽しい不条理だし、脚立でトラックの運転席を見せるアイデアも楽しい。

    冒頭から異様、というか不条理。
    感情を置き忘れてきたような、ツアーバスの乗客の様子も、絶対に自分が悪いと認めないバス運転手も。

    感情のこもらない乗客たちの会話と、その内容に神経を逆撫でされる添乗員が、ヒートアップする。思わず、名古屋の方言が出てしまうほどの。
    乗客も運転手もほとんど自分の中にいて、意識して外との接触は避けていると言うわけではないが、と言うかコミュニケーションとるのが不得意なように見える。バラバラな人が集まっての統一感。

    彼らが、雪の中でのバスの故障というトラブルに遭うことで初めて一体感っぽい感じを見せる(バスがガードレールに衝突して事故るというのは、現実があるだけに、ちょっとひやっとしたけど)。
    その一体感に、今まで神経を逆撫でされていた添乗員は、もの凄く気持ちが良くなってしまい、トラックメロウの運転はうまくて、早くて、早すぎるから、相対性理論で、タイムマシーンだの、何だのとあらぬことを口走り、妄想一直線に突っ走ってしまう。誰もそれには突っ込まないところが、コミュニケーション下手で、それが過剰で不条理。
    そしてラストの狂乱とも言える「クマを探しに」につながっていくのだ。

    トラブルに巻き込まれた彼らに救いが現れるのだが、それがトラックメロウ(女郎)、つまり女性トラックドライバーである。
    バック不得意。気の抜けた「バックします」の警報音。

    このドライバーの存在も人と接するのは苦手そう。結局一言もしゃべらず、添乗員や乗客たちのわけのわからない妄想に包まれてしまう。

    骸骨の一連のシーン、「骸骨なら踊れよ」と、骨を付ける(エンガチョみたいな)展開から、「今骨は誰?」「お前だよ」のオチには笑い転げてしまった。

    ここで描かれる不条理性は、実は日常に転がっていることで、誰しもが体験していることなのだ。我関せずで、自分のことしか考えていない。
    「つぶやき」のリアル版というか、受け手のことを考えずに、今、思ったことを、とにかく口にしてしまう。
    だから今誰かが言ったことだろうと、何だろうとお構いなしだし、「なんとなく」で大切な場面であっても発言してしまう。会話が得意じゃないから(たぶん)、手を挙げて発言する。

    そういうのって、あまりにありすぎるから、マヒしているのかもしれない。
    こうして「他人事」として見ている分には、笑っちゃうけど、当事者になったら笑えない。

    真面目に接している添乗員が、ヘンになっていくのもよくわかる。
    ちょっと恐い。

    そして、運転手にはムカツク(笑)。

    アフタートークで、少しわかったのだけれど、作・演(出演もしていた)の平塚直隆さんが、人と話すのがあまり得意ではなさそうということ(失礼!)。なんかモクモグしていて、あまり話を聞けなかった印象だったから。つまり、この中に出てくる人々は、彼の分身であり、彼自身にとってはそれほど違和感がない存在と発言なのかもしれないな、ということ。
    もちろん、面白くするために、それをかなり強めにはしているだろうけど。

    と、言うことで、オイスターズとあおきりみかん、「2010年の劇作家協会新人戯曲賞 最優秀賞」の共演なのだが、両者とも、他人との関係が描かれていたのが、印象的だった。

    狂乱とも言える「クマ探し」の行進に、水を差すような、運転手が「忘れてきた」と言っていた携帯が、見つかるラストのバランスも素晴らしい。台詞に出さず、暗転しつつある舞台に、そっと光る携帯。いいなあ。

    どうやら、「続・トラックメロウ」というのもあるらしい。これ東京で観られないのかなぁ。
    観たいなぁ。

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    2012/08/05 08:14

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