満足度★★★★
ウェルメイド
初めての東京ストーリーテラー、初めてのシアターKASSAIは充実の一言。
終演後希望者のみに“ネタバレ・パンフレット”を配布するという姿勢、
作・演出の久間勝彦さん自らが観客に感謝の言葉を伝える前説など
劇団として「観る人が参加して初めて完成する演劇」を大切にしていることが伝わってくる。
ネタバレになるので多くを書けないのが残念だが、
それもこの作品を鑑賞する上でぜひとも必要なことだろう。
最後まで真実がわからない筋立てが素晴らしく、
ありがちな予想を立てていると見事にひっくり返される。
筋立ての面白さに加えてもう一つ、
登場人物の彫りの深い造形が、“ことの起こり”に説得力と必然性を与える。
濃密な世界を共有する師弟関係が、時間の経過とともに丁寧に描写されていく。
弟子の少年役が素晴らしくて、何も起こらないうちから泣けてしまった。
冒頭、主人公の説明的な台詞がテンションに引きずられて少し上滑りになった感があるが
ラストの別人のような表情は素晴らしかった。
「点描の絆」は、この瞬間のために語られてきたのだということがわかる。
こんな人間関係もあるのだと知らされる、幸福な謎解きだった。