満足度★★★★★
もう一度観たい
ファンタジーかつサスペンスミステリー。そして、様々な形で姿を現す切ない愛の物語。
渡辺望さんの演出が遺憾なく発揮された舞台だと感じた。
狭い劇場と、どの席からも舞台が近く感じられる客席、そしてわずか4人の役者によって繰り広げられる濃密な芝居。
とてもシンプルな舞台、少ないセットと小道具の中、役者自身の体と道具を交えた身体表現で、次から次へと物語の世界が浮かび上がってくる。
最初はその様が興味深く、いちいち「ああ、この道具でこれを表現するのかぁ」と感心しているのだが、だんだんその表現法に慣れてくると、いつの間にかすっかり物語の方に引き込まれている。
そこからラストへ向けて、穏やかだけど着実に高く積み上げられていく積み木のような、静かな恐怖の予感。そして……。
観終わった後、しばらく声が出ないような、そんな、何とも言えない空気が立ち込めていたような気がする。もう少しこの空気を味わっていたい、そんな風に思った。