満足度★★★★
地味に技巧的
ある地方の町の人達を様々な演出的技巧を用いながらオーソドックスなストレートプレイとしてまとめあげた、クオリティーの高い作品でした。
煙草が法律で禁止され、中国と国交が断絶した近未来(?)、純国産と謳った線香花火で一山当てた男とその周囲の人々や寺の住職の思いのすれ違いや伝わらなさが皮肉的に描かれた物語で、ネガティブでありながらポジティブさもある独特の雰囲気が魅力的でした。
作品全体としては面白可笑しい類の話ではないのですが、当事者は真面目でも外から見ると滑稽な場面が多く、笑えました。
畳敷きの一間が、照明と人物の立ち位置の変化によって様々な場所に瞬時に切り替わったり、日時が飛んだりする、シーンの繋ぎ方の演出が素晴らしく、そこに登場人物には分からないメタ的なネタが盛り込まれていたのも楽しかったです。
暗転しないでもスムーズに場面転換出来る技術がありながらも敢えてたっぷりと暗転の時間を取っていたのも流れにメリハリが出ていて効果的でした。
ワンシーンを除いては暗転の時にしかBGMが流れない、役者の演技力を信頼した演出が快かったです。実際、台詞のやりとりだけで十分に見応えがあり、特に気まずい雰囲気の描き方が絶妙でした。
前作に比べてマイルドで分かり易くなった分、素直に楽しめる作品になっていましたが、前作のような一瞬観客を置いてけぼりにするような魅力的な不可解さも薄まっていたのが残念でした。