どうしても地味 公演情報 箱庭円舞曲「どうしても地味」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    線香花火
    大阪公演もあるというのに、それをまったく意識してないのか、
    あえてこういう風に作ったのか?

    役者のメンツを見てみれば分かるように、
    どの人も地味なんかではなくて
    強烈な個性を持っている(特に女性陣

    これだけテクニカルな演出が出来るのなら、
    きっと派手な交響曲も作れただろうに、
    そこを敢えて?
    地味な作品に仕上げたところが素晴らしいように思いました。

    ネタバレBOX

    物語の最初と最後を
    男二人の線香花火のシーンできっちりしめてる。

    よそ見ばかりしている男と、前しか見えない男。
    この二人は、物語を貫くこよりだ。

    物語の途中、山や谷と呼べるような物語の起伏はない。

    最後にちょっとだけ花火工場の爆破シーンがあるが、
    これも大規模なすべての終わりでもない。

    ただ、この事件を機に
    それまで地道に撒いてきた物語のカケラが
    鮮やかに速やかにそして静かに
    ドミノを倒すみたいにすっと収束していく
    (違法にタバコを所持していた住職や、彼にタバコを横流ししていた
    新一、工場に放火したそのヨメが逮捕されたらしいことなど)

    物語自体が、
    こよりとなっている男二人を軸にした線香花火になっている。

    静かに燃え続け、最後にほろっと火花を出して、燃え尽きる。


    その中で、一見取り留めも無いようで、
    本音の吐露でもあるような
    曖昧な独白、詭弁が随所に挿入されている。

    物語自体の完全な線形性を敢えて拒むように。

    地味ではない配役を使って敢えて地味な線香花火になぞらえた物語をなぞるのも粋なら、
    これだけ洗練され、完成されたプロットに、
    人の美しい感情(線香花火を消えゆく夏の思い出になぞらえたのはまさにそうだと思う)と
    生理的な感情に正直な住職の詭弁?という
    世間一般でみれば両極のようにもみえる感情・行動を
    敢えて並列に差し込んでくるあたりは、
    ストーリーテラーとして、なかなかの剛腕?
    ではないかな、などと思ったり。



    これだけ洗練され熟練されながら、あくまで抑えた語り口は、
    自分としてはどことなく、江戸前の落語などを思い返してしまったり
    (もちろん完全に同じとかそういうんではないですが(汗
    して、大阪に持ち込むにしてはあまりに東京っぽ過ぎるのではないかな、
    などと少し心配もしたり(苦笑

    ・・でも、まあ相手に合わせて自分の持ち味をおさえるよりも、
    全力で自分たちらしさを出し切って
    お互い(江戸と上方的な)の良さを勉強するほうが
    刺激的で自分は良いと思ったり。

    とりあえず、これだけ洗練された語り口の作品が大阪で公演されるというのは
    喜ばしいことだな、などと思いました(笑


    ・・ちなみに自分は観終わったあとで、
    映画「パーフェクト・サークル」を思い出してました。

    完全なる円環のなかにすべてを収めるように、
    線香花火のなかに人生を収めたようで(笑

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    2012/05/22 23:24

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