2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」 公演情報 彩の国さいたま芸術劇場「2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    観劇史上、最高の。
    類稀な美しさと愛しさに溢れた舞台となりました。黒と赤を基調にした衣装は荘厳で、重厚さを纏った役者さん達が舞台を縦横無尽に駆け回る姿が幻想的で美しく。中でも、奈落で繰り広げられる芝居・・・それは、亡き王の恨みの声であったり、オフィーリアの狂気であったり。劇中劇であったり、葬式であったり、と様々なシチュエーションでその場が使われるのですが、狭い空間なのに無限の広がりを感じさせ、「そこに行きたい」との憧憬まで感じさせられます。その舞台上で「ハムレット」且つ「ハムレットを演じる役者」として生きていた川口覚くんの実力の確かさと美しさは、上演時間(4時間近く)を絶え間なく愛しいものにしてくれました。この舞台は、私の観劇史上最高の舞台です。これを超える舞台に出会える予感が今のところありません。(逆に、誰か超えてくれるのを待ってます。)

    ネタバレBOX

    語るべきはやはり、その川口くんの演技の素晴らしさ。しっかりした台詞回しの中に感情表現の確かさを感じて、その声にも仕草にも一瞬たりとも隙を感じません。観ていてゾクゾクしっぱなしです。
    4時間もの長い公演時間の間、父である先王が亡くなり、父の弟が母と結婚して王位を継いだ頃のハムレットの虚無感から始まり、父の霊の恨みを知ってからの葛藤、苦悩、狂気。それらを徐々に増幅させ、ハムレットとして役者として進化してく様をまざまざと見せられて。
    時の流れのリアルさに観ているこちらの心臓も切なく高鳴り続けて感情移入が頂点に達するその時、ハムレットが可憐なオフィーリアを「尼寺へ行け!」と罵倒して罵倒して観客の涙腺も爆発させられる辺りでの、まさかのこまどり姉妹の登場(笑)
    着物でマイクを持って演歌を歌う姉妹の圧倒的な存在感に打ちひしがれてヒクヒクとのたうち回るハムレットとオフィーリアからは「見せ場なのに・・・見せ場なのにーーー!!」という心の叫びが聞こえました(笑)

    9割方、正統派の古典の舞台なのですけれど、蜷川さんの演出意図・・・あくまでも、若い無名の役者達による上演というコンセプトが、若者達の熱演の最中に悪戯心を以ってひょこっと顔を出す、厳粛さ溢れる古典の醍醐味の中にも遊び心満載の楽しい演劇でした。

    0

    2012/03/18 18:07

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大