2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」 公演情報 2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    若々しさがまぶしい
    この舞台は、こまどり姉妹が登場するということでも話題を集めていた。



    ※彩の国さいたま芸術劇場で『トロイラスとクレシダ』を観てきたので、今年観て書き忘れていたシェイクスピア作品2本を書きます。

    ネタバレBOX

    劇場内に入ると、コの字型の座席の真ん中に黒い舞台がある。
    開演前、その黒い幕が取り払われると、透明な床が見え、その下に出演者たちの楽屋があることがわかる。

    「どうだ」という蜷川さんの顔が見えるような、観客を「おっ」と言わせるオープニング。

    役者の熱演ぶりがとてもいい。
    発散するようなエネルギーを感じる。

    こまどり姉妹の登場は、ハムレットとオフィーリアのシーンだった。
    ハムレットとオフェーリアが、互いに苦悩するシーンでの登場に、いったん客席は沸いたが(「待ってました」の感じ)、悲痛名様子で泣き叫ぶ2人の若者の上に降り注ぐ、こまどり姉妹のゆったりしたテンポの『幸せになりたい』が。

    悲痛の上に悲痛になり、客席の温度も下がったようだ。
    「幸せになりたいの」とは「今は幸せでない」ということであり、その歌詞が延々と降り注ぐ。
    こまどり姉妹が歌うからこそのリアル感とでもいうか。

    また、ラストでは、フォーティンブラスが登場し、物語のすべてを奪いさるのだが、どうやらそれだけの力がなかったようで、銃器による大殺戮の上に、ここでもこまどり姉妹の「幸せになりたいの」と歌詞が鳴り響くのだ。

    登場人物たちすべての上に「幸せになりたいの」が降り注ぐ、ということなのだ。

    悲壮、悲痛なハムレットであった。
  • 満足度★★★★★

    観劇史上、最高の。
    類稀な美しさと愛しさに溢れた舞台となりました。黒と赤を基調にした衣装は荘厳で、重厚さを纏った役者さん達が舞台を縦横無尽に駆け回る姿が幻想的で美しく。中でも、奈落で繰り広げられる芝居・・・それは、亡き王の恨みの声であったり、オフィーリアの狂気であったり。劇中劇であったり、葬式であったり、と様々なシチュエーションでその場が使われるのですが、狭い空間なのに無限の広がりを感じさせ、「そこに行きたい」との憧憬まで感じさせられます。その舞台上で「ハムレット」且つ「ハムレットを演じる役者」として生きていた川口覚くんの実力の確かさと美しさは、上演時間(4時間近く)を絶え間なく愛しいものにしてくれました。この舞台は、私の観劇史上最高の舞台です。これを超える舞台に出会える予感が今のところありません。(逆に、誰か超えてくれるのを待ってます。)

    ネタバレBOX

    語るべきはやはり、その川口くんの演技の素晴らしさ。しっかりした台詞回しの中に感情表現の確かさを感じて、その声にも仕草にも一瞬たりとも隙を感じません。観ていてゾクゾクしっぱなしです。
    4時間もの長い公演時間の間、父である先王が亡くなり、父の弟が母と結婚して王位を継いだ頃のハムレットの虚無感から始まり、父の霊の恨みを知ってからの葛藤、苦悩、狂気。それらを徐々に増幅させ、ハムレットとして役者として進化してく様をまざまざと見せられて。
    時の流れのリアルさに観ているこちらの心臓も切なく高鳴り続けて感情移入が頂点に達するその時、ハムレットが可憐なオフィーリアを「尼寺へ行け!」と罵倒して罵倒して観客の涙腺も爆発させられる辺りでの、まさかのこまどり姉妹の登場(笑)
    着物でマイクを持って演歌を歌う姉妹の圧倒的な存在感に打ちひしがれてヒクヒクとのたうち回るハムレットとオフィーリアからは「見せ場なのに・・・見せ場なのにーーー!!」という心の叫びが聞こえました(笑)

    9割方、正統派の古典の舞台なのですけれど、蜷川さんの演出意図・・・あくまでも、若い無名の役者達による上演というコンセプトが、若者達の熱演の最中に悪戯心を以ってひょこっと顔を出す、厳粛さ溢れる古典の醍醐味の中にも遊び心満載の楽しい演劇でした。
  • 満足度★★★★

    素晴らしき蜷川演出
    この難しい戯曲をたっぷりと堪能させてもらいました。ハムレット役の川口覚さんは一人ずば抜けていた。台詞、佇まいといい素晴らしかった。

  • 劇場係員
    この劇場の係員には演劇への愛がまったく感じられない。
    蜷川演出を堪能。
    コマドリ姉妹はいらないと思った。

  • 満足度★★★★★

    「企み」がすごい!舞台美術必見!
    上演時間3時間40分。密度の濃い時間を堪能しました!

    まず全体の企み、完璧に蜷川氏にお手上げです。
    とりわけ舞台美術は驚きです!(ネタバレに当たるので・・・)
    さい芸大ホールインサイドシアター以外ではなかなかできない試みでは?

    「蒼白の少年少女」の「蒼白」は彼らの世代の戦略であるということを、蜷川氏はご存知なのであろうな、と思いました。
    このお芝居「ハムレット」は、世代間格差の問題を問い、旧世代の新世代への恐れを描きながら、世代間理解が可能かを問い、あるいは革命的世代交代が起きるとしたら、という仮想を試みているとも読める、そういう企みをまた感じてしまうのです。

    彼らより上の世代はそれを心せねばなりませんと、言いたいのであろうかな、と。そのリトマス試験紙がこまどり姉妹だったと思うのです。

    こまどり姉妹ですが、一番ぶっ飛んだのは、ハムレットがオフィーリアに「尼寺へ行け!」と叫ぶ、そのときに登場!したことでした。

    では、こまどり姉妹の登場で、川口覚さんのハムレットと、深川美歩さんのオフィーリアは喰われてしまったか、というと、そんなことはありません。(深川さんは昨年の「美しきもの~」の伊藤野枝役が印象深いですが、今回は真反対のオフィーリアでありました。
    お二人だけではなく、ホレーショーもガートルードも名前のある役だけでなく、旅芝居の「黙劇」部分の役者たちもよかったです。

    ネタバレBOX

    さい芸大ホールインサイドシアターということで、普段舞台となるところに座席を持ち込んで、三方囲み舞台で客席から見下ろす感じなのですが、舞台床がガラス張りでその下(奈落)が見通せる仕掛けになっています。この「奈落」は開演前は楽屋として、役者たちが着替えたり化粧してたりが見えます。天井からシャンデリアが降りてきて「開演」。その後は、床の下(ガラスの下)が第2の舞台として、役者たちは2段構造の舞台を走り回ります。で、逆にこのガラスの床とシャンデリア以外の美術はありません。

    このガラスの床と奈落の底、の2重構造の舞台の効果は圧倒的で、
    ・楽屋を見せることで高まる「お芝居ですよ」雰囲気、
    ・ガラスの箱の中で演技しているように見え「標本箱」のような印象もある、
    ・地下、に当たるので、地下=墓場、もう死んでしまったものの物語
    ・・・そういう何重もの「虚構性」仕掛け作りに成功している

    ・王、王妃が現れると、それ以外のものは下に下がり、上下関係を見せ付ける。
    ・あるいは簡単に踏みにじることもできる
    ・ガラスの箱であることで、王が王国を掌握している
    ・・・そういう何重もの抑圧感を表現できる

    ・亡霊は、舞台の下からせりふを言う場面がある、それに対してハムレットが「天晴れモグラ殿」と答える。
    ・また、オフィーリア埋葬の場面では、文字通り
    ・・・戯曲に何回も「地下」が描かれている、それをそのまま表現できる

    ・だいたい、ガラス箱のような王国「デンマーク」だからこそ、「箍(たが)が外れてしまった」のせりふは意味を持つかも

    なんて、いろいろ刺激され、とにかく、ガラス張りの舞台と奈落の底、この二重構造の舞台の「企み」に痺れてしまいました。

    ネクストシアターの演技に、こまどり姉妹の企みも加え、これは4000円の価値以上のハムレットと思います。

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