満足度★
正直いって、期待はずれ。
この劇団の評価で低い評価をつけることはなかったが、可能性があるだけにあえて正直に感じたことで評価させていただきます。
役者さんはとてもよかったです。特に草野氏はまた一回り大きくなった気がします。
本当は観劇後に直接言ったほうがいいとは思うのですが、公演直後の満足しきったスタッフや役者さんをまえにしてはさすがにいいにくかったのでここに書きます。
「百年時計」以来、欠かさず観劇してきた理由は「意外性」につきる。
演出のうまさや、ストーリーの完成度、役者のレベルなどもそこそこのレベルを持っている劇団ではあるが、注目すべきは山本タカのいつも驚かされる発想力と展開力であるが、今回はシェークスピアと70年代のアメリカと、昨年の震災を絡めるという荒業に出たが、よくかけているものの残念ながら「感動」の薄い作品となってしまっている。
面白さという点では、シェークスピアの原作どおりやったほうがよっぽど面白かったと思う。この物語の面白さはなんといっても、媚薬によって本来ありえない関係が起こっていくことにあるが、現代の男女関係に適用しても日常的で「ありえる」だけに面白みにかけ、喜劇要素が失われている。
ところで、笑わせたいのか考えさせたいのかといった方向性もまったく中途半端に感じられる。性描写も説明文からどんな演出をしてくるのかと期待していたが、これがなんとも中途半端。らしく見せるだけなのか、本当らしさを見せてドキドキさせるのか、リアルにやるのかコミカルにやるのかまったくもって歯がゆかった。
震災を後半に絡めてくるが、演出としての震災の臨場感が描ききれていない。リアリティがもうひとつ感じられない。振り付けだけはセックスの体位も取り入れてとても意欲的でかっこよかった。
で、「事件は会議室でも起きている」はどこで表現されていたか不明。
ストーリー展開もなかなか筋がわからず、中だるみもあって疲れる。見終わって、あれなんだったんだろうという感じ。
媚薬効果をどのように使ってくるかという点についてはもっとも期待していた部分だったが、媚薬効果はまったく意外性のないものだった。
震災を絡めるなら、媚薬効果で菅首相と保安員の奥さんがなかよくなっちゃって情報が隠蔽されちゃうとかいくらでも考えられたんじゃないだろうか。
今まで劇団としては一番高い入場料でしたが、いままでの人気で今回は入っていそうでしたが、劇団本来の魅力がどこにあるのかを常に考え、貫いていくことが必要ではないでしょうか。枠にとらわれない今までどおりの自由で超越的な演劇を期待したい。
1年かけても2年かけてもいいです。「こえきも」の本領を見せてくれる公演を待ってます。