バックギャモン・プレイヤード 公演情報 カムヰヤッセン「バックギャモン・プレイヤード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    寓意の先に浮かび上がる感覚
    シンプルにおかれた設定の中に、世界を俯瞰する寓意が宿る・・・。

    切れを持った役者達がくみ上げていく物語には
    世界を纏う間口があって・・・。

    そのたどり着く先までを描ききっているからこそやってくる
    ラストのシーンからの
    俯瞰に深く心を奪われました。

    ネタバレBOX

    物語自体はそれほど複雑なものではありません。

    人物相関図が配られていましたが、
    そのヘタウマなイラストがきちんと機能するようなフィールド。
    でも、そこに描かれる小さな村の物語が
    国の発展や、その中での人々のありようを
    見事に具象していきます。

    風見鶏をまわしての物事の決め方から
    とある国の物事を決める感覚がやってくる。
    総意でないものが
    そうなるしかなかったと決まっていく感触・・・。
    ものしりを受け入れること、
    金融がうまれ、
    効率や生産性が重視され
    となり村との関係が築かれ社会は豊かになる一方で、
    職業に貴賎の感覚が生まれ
    社会に歪みが生まれていく必然。

    役者たちは、切れを持った緻密な演技で
    シーンごとのなりゆきにとどまらない
    個々の心情や感覚のありようを浮かび上がらせていきます。
    それは社会の変化の骨組みにとどまらず
    ともに歩み、とまどい、あるいは抗う人々の感覚や思惑すらも
    観る側にしなやかに伝えていく。

    たとえばグローバリゼーションに巻き込まれていく姿、
    貧富や優劣が生まれていく構造、
    さらに社会の揺らぎや破綻の構図、
    偶然から生まれたものとその先にさだまったもの、
    立ち位置での思惑と崩れていくことの必然、
    そして散らばっていく感覚までも・・・。

    それは
    たとえば戦後のこの国の歴史や
    先進国と途上国の関係などが内包するものへの
    したたかで間口の広い具象にも思えて。
    しかも、舞台自体に顛末を物語るしなやかな力が宿っていて
    しっかりと惹きこまれ見入る。

    そして、その終焉までを見届けたからこそ、
    再びそこに集うことや生きようとすること、
    さらには風見鶏が回る感覚、
    知ることや定まることまでが
    人が生きることそのもののありようとして感じられて。

    タイトルのごとく
    バックギャモンのロジックとサイコロの目の定まりのなかで
    それでもフィールドを歩みつづける人の営みの感覚に
    愕然とし、
    でも閉塞や絶望とは少し異なる
    醒めていても温度を失うことのない肌触りに
    深くとらわれたことでした。

    初日ですこし硬さもある舞台でしたが、
    回をかさねるごとに
    シーンのニュアンスがさらにひろがっていく予感もあって。

    受け取った肌触りがずっと残る帰り道でした。




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    2012/02/10 12:23

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