満足度★★★★
欠落の軌跡と失速感
1986年、日本ではアイドルの岡田有希子が飛び降り自殺し、海外ではチェルノブイリの原発事故が起きた。
15年前から現在に至るまで、「欠落」の軌跡を追う不条理劇。
上演時間が長時間ということで、二の足を踏みかけたが、まったく時間を感じさせず、あっというまの2時間30分だった。
観てよかったと思う。
劇を観ながらも、自分の人生を振り返り、特にあの狂おしいまでのバブルという時代の違和感に想いを馳せた。
3.11以降、繁栄を尊び、走り続けてきた日本を振り返るなかで、バブルの時代を再検証しようという動きが評論や文学、演劇の分野でなされている。
この作品もそのひとつだろうか。
世代によって受け止め方や評価が分かれるような気がした。
ある若い演劇人は「まったく無意味な作品」と切り捨てていたが、1986年の時点で幼年期だった人には共感しにくいかもしれない。