遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』 公演情報 フェスティバル/トーキョー実行委員会「遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    欠落と忘却
    欠落と忘却を繰り返す人間の姿が、声高なメッセージとしてではなく、普通の人々の日常の言葉として描かれ、シリアスなテーマを扱いながらも飄々とした脱力的な笑いもあり、浮遊感のある不思議な雰囲気のある作品でした。2回の10分休憩を含めて計150分と長めの作品でしたが、各パートの長さが丁度良くて、あまり座り心地が良いとは言えない椅子での鑑賞でも疲れを感じませんでした。

    奥に手摺壁があり、両脇に高い壁がそびえ立つ間に、真っ白な空間に椅子やテーブル、日常的な小物が配置され、舞台奥上空には何も描かれていない巨大な屋上看板という、ビルの屋上をミニマルに模した空間の中で、3.11を経験した2011年と、バブルで浮足立ち、チェルノブイリ原発事故やアイドルの飛び降り自殺があった1986年が交錯する物語でした。「忘却の灯台守」と「欠落の女」いう名の謎めいた2人の同じ会話が何度も繰り返され、25年間経っても変わらない、人の忘れっぽさが描かれていました。日常的な物と言葉で構成された最後のシーンは、そのレイアウトの仕方が良くて、とても美しかったです。
    場面が変わっても変化しないシンプルなセットや、現在のシーンの次に過去を再現するシーンが続く構成などから能の作品を連想しました。

    スタンドにセットされていたり、役者が持ち歩く複数のビデオカメラによって撮られるリアルタイムの映像が真っ白な看板に映し出され、目の前の舞台で演じている姿よりむしろ映像の中の姿にリアリティが感じられて、メディアに侵食された現代について考えさせれられました。役者がカメラを持つことによって、舞台を収録した映像では見られないような、登場人物の視点でのフレーミングが可能になり、それを活かしたちょっとユーモラスなアングルの画作りがされていたのが印象に残りました。

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    2011/10/19 09:06

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