満足度★★★★
試行錯誤
シチュエーション・コメディ作家の中でも、冨坂優は題材より表現方法で試行錯誤しているように思う。
「みんなのへや」でのセットなしのスケルトン、「大空襲イヴ」での衣裳なしで役柄をタスキに書くなどの手法。
今回の「ファミリーコンフューザー」は、いままでの試行錯誤を生かした作品と言えよう。
「装置に凝り、写実的なセットを組んだ中で観せる」という多くのシチュコメ劇団の常識や先入観を打ち破ったかたちでの上演である。
また、「無縁バター」は再演物でミステリー調の一風変わったコメディー。
以前はル・デコのようなギャラリー空間での番外公演だからこその2本立てかと思っていたら、アフタートークで冨坂は、今後もこのセットなしの2本立て上演を実施したいと語っていた。
これは長編のシチュコメよりも、演劇になじみのない人でも入りやすい手法ともいえる。
ただ、この簡素化上演は諸刃の剣の側面もあり、セットに頼れないぶん、俳優陣がよほど演技の質を向上させないと、演技のアラが見え、単なる手抜き上演のように見えてしまう危険性もはらんでいると思う。
俳優までスケルトンになってしまっては困るのである。
今回は、客演陣の演技がとてもよかった。
アフタートークが最近ありがちな雑談ではなく、簡潔な作品解説になっていたのが評価できる。