【ご来場ありがとうございました】ファミリーコンフューザー/無縁バター 公演情報 Aga-risk Entertainment「【ご来場ありがとうございました】ファミリーコンフューザー/無縁バター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    Aga-riskスタイルとも言える演出で大笑いのコメディ
    中編の2本立て。
    どちらも重いテーマながら、見事なコメディに仕立て上げられていた。
    Aga-riskのスタイルが十二分に発揮されていた、後味もいい作品。

    ネタバレBOX

    『ファミリーコンフューザー』
    痴呆症がテーマとなっている。冒頭から「ん?」「なぜ?」という展開なのだが(なんでそんな面倒なことをするのだろうか、ということ)、それはすぐに脇に置いていい感じになってくる。
    すなわち展開が早く、どんどん面白くなってくるからだ。

    変な策を考えることで、深みにはまっていく男(清)が、周囲を振り回しながらも突き進む様が面白い。
    しかし、それは実のところ、他人を騙すというよりは、実は自分の母が「ボケてない」と思いたい心の現れてでもあった、というあたりが、切ない。

    「家族」の話であり、家族との関係や、そういう事態に対して、それをどう受け止め、そしてどう受け入れていくかという物語でもある。
    そして、いろいろと考えさせられたりもする。

    扱うテーマだけではなく、その根底に流れるテーマ(家族のあり方、そして覚悟など)も、やはり重いのだが、ラストには希望が見えてくる。策を弄せず、そのことを受け入れることが、実は最善の策であった、ということがシンプルながら美しく描かれる。
    だから、痴呆が始まったと思われる母親に対しての、家族たちの接し方が、笑顔があり、とてもいい。かくありたいと思うばかりである。

    他人や自分を騙すことなく、ありのままに接する(ありのままを受け入れる)ことで、自分の家族も、また、痴呆になったであろう当人も含めて、それが自然であり、ハッピーなのだ、ということだ。

    笑いの中に、そういう美しい光景を見たような気がする。

    もちろん、この状況がさらに進むとなると、この家族にも、また別の展開が待ち受けるのだろうが…。


    『無縁バター』
    再演。ちょっとしたチューニングがされており、ストーリー&結末を楽しんだ、という初演から、「人とのつながり」のようなテーマに、より光を当てた内容になっていたと思う。
    初演の感想では、私は「We are not aloneからの、MIB的なラスト」と書いたが、つまり、その「We are not alone」が強調されていたと思うのだ。

    初演では、『みんなのへや』という出会ってはいけない人たちのドタバタ・コメディとの2本立てで、「人とのかかわり」ついての考察でもあった。
    今回は、家族モノの『ファミリーコンフューザー』との2本立てなので、「人とつながり」(家族を含めて)が、よりクローズアップされたように思える。
    物語の結末が意外で、オモシロなのだが、投げかけるモノは、こちらも結構ずっしりとしているのだ。
    そういう意味において、単なる2本立て以上の効果を見せていた。組み合わせの妙だ。そして、今回も、上演の順番がとても大切だったと思う。

    …最後の最後のオチの伏線は、ファミマのチャイムだった。

    『ファミリーコンフューザー』は痴呆、『無縁バター』は孤独死という、重いテーマ(シビアな設定)を扱いながら、毒のあるものではない、笑えるコメディにして、さらに後味が悪くなく、と言うより、気持ちの中に、ちょっと明かりがさすような、そんないい感じにしてくれるAga-risk Entertainmentの作品は、とてもいい。

    しかも、これが爆笑を含む、笑いの連続で、泥臭くもあり、ドタバタでもある中で、きちんと描かれているのだ。
    また、極限までにセット等をシンプルにしたことで、物語にスピード感を増し、気持ち良く畳み掛けてくれる。さらに、シンプルな舞台なので、役者への注目度が高まり、役者の力の発揮なくしては成り立たない舞台にもなっている。
    役者たちはそれに見事に応えていると思う。

    こうした一環したコメディに対するスタンスや、演出のスタイルは、Aga-riskスタイルと言っていいだろう。
    このスタイルだからこそ生まれる笑いもあるのだ。

    今回のAga-risk Entertainmentもそうだったのだが、先日観たホチキスも期せずして「家族の話」。それも対立するのではなく、「結び付き」を意識した作品だった。そういう時期が、今、みんなの心に来ているのかもしれない。

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    2011/10/07 08:39

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