OKICHI 公演情報 アブラクサス 「OKICHI」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    見せ場が多く、感動的な芝居
    明治開国前後の、唐人お吉の物語。

    一応、5つの部分から構成されていると思う。
    ネタバレ部分で各部分について触れて行くが、
    ただ、これは私が勝手に分けたもので、
    上演時に「第○部」と表示されたり、
    台本に書かれたりしているものではないことは、
    あらかじめお断りしておく。

    ネタバレBOX

    第1部は、下田が舞台。
    ハリスは、以前他の者が異人を恐れて逃げる中、
    親切に案内をしてくれたお吉のことを覚えていて、
    彼女を看護役・賄いに所望するが、お吉には許嫁鶴松がおり、
    首を縦に振らない。
    それは結局、ハリスの妾になることだと彼女も考えており、
    また、下田奉行の役人達も彼女を妾にして、
    油断させて情報を得ようと考えていたのである。

    役人の1人が、許嫁の首をはねれば、お吉もあきらめるだろう、などと、
    手荒な事を言うが、殿様である伊佐は人格者であり、その意見を排斥する。
    お吉に「下田を守るため、国を守るため」と切々と訴え、
    最後はお吉に土下座までして、ハリスの妾となることを承諾させる。
    (このような素晴らしい見せ場が、劇の初めから用意されている!)

    そして、お吉はハリスの滞在する寺に出仕するのだが、
    初めは打ち解けなかった2人も、いつしか理解し合い、
    愛情が育まれて行く。

    しかし、ハリスは帰国することとなる。
    「いつか迎えに来る」という言葉を残して……。

    第1部からのつなぎの場面があって、
    第2部の「異人向け」の遊閣の場面となる。
    ここで遊女となっているお吉の元に、
    珍しく日本人男性が客として訪ねてくる……。
    帽子をかぶり、後ろ向きで、ただ話ばかりしているが、
    その男は元許嫁の鶴松であった。
    お吉は、ハリスの妾となったこと、そして、今は、
    遊女となっていることを恥じ、鶴松を避けるが、
    しかし、彼に熱く説得され、一緒に下田に戻って生活することを承諾する。

    第3部は再び下田。
    お吉は下田の人達には、「金を積まれて唐人の妾になった」「下田を売った」「下田の恥」「国の恥」と思われており、
    それは鶴松の家族からも同様であった。
    一方、子供を産めないお富を馬鹿にした元夫のこんにゃく屋と、
    お吉は喧嘩してしまう、などのトラブルも起きる。
    自分の店を持つことを夢としていたお吉を応援していた鶴松であったが、
    しかし、周囲の偏見と無理解の中、ついには彼自身、
    船大工の親方から暇を出されてしまう。

    第4部は、初めは三島が舞台。
    お吉は三島で再び遊女に。鶴松は亡くなってしまった。
    そこにお富が訪ねてくる。2人は再び下田で店を持つことを決意する。

    第5部は再び下田。
    一時は繁盛したお吉の店であり、
    また、お富を横浜に菓子職人として修業にも出させたりもしたのだが、
    周囲の偏見により悪いうわさを流され、閉店することに
    ……そしてお吉は浮浪の身となり、酒におぼれている。
    そこへ元殿様の伊佐がお吉を探しにやってくる。
    無理解な人々の前で、伊佐は、お吉にハリスの妾となり、情報収集させ、
    また、そのことは国の機密である故、決して口外しないことをも
    命じたのは自分であることを告白する。
    東京で店を持つまで成功したお富もやってくる。
    そして、お吉を探すのであるが、すでに彼女は浮浪の身で酒にも溺れ、
    精神も病んでしまっていたのであった……。

    このように、各部分部分に見せ場やほろりとする台詞が用意され、
    また、基本的にはある意味不要な部分が上手に省かれ、
    無駄なく話が進行していっていると思う。

    まあ、欲を言えば、第1部と第2部との間のつなぎ部分は、
    多少冗長であった気もする。
    大政奉還の奏上文らしき漢語調のナレーションが流れるが、
    これは耳で聞いているだけでは少々分かりにくい。
    またここで、明治維新に向けての戦いを象徴する殺陣シーンもあるが、
    ここで、髪の色の違う人(ハリス役か、後で出る回船問屋商亀吉役か、
    役の役者かははっきりしなかったが…)が登場するのも、
    一瞬ハリスが登場したように見えてしまった。
    この部分だけ再考してもらえれば、という気がした。

    なお、舞台は、奥のほうが一段高くなっていて、いわば「二段構造」で、
    奥の部分を別の場面に使ったり、回想場面としたり、
    と巧みな使い方をされており、これも良い効果を挙げていた一因と思う。

    私自身、不勉強で、この話のどこまでが史実に基づいていて、
    どこからが創作なのか、正確に知る者ではない。
    例えば、「描かれているほど、ハリスが日本やお吉のことを、
    真剣に考えていたのだろうか?」とか、
    「いじめられるのは分かっているのに、どうして下田に固執したのか?」等々……できればこの辺の説得性も、もっとあればなあ……。
    ただ、「そうあってほしいな」と思わせる部分も多く、
    そう思わせる部分は、説得性のある舞台であったのだ……そんな気がする。

    ということで、多少の欠点はあったかもしれないが、
    端数切上げで5Pとします。

    4

    2011/09/19 01:53

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  • よし様
    ご感想ありがとうございました。しっかり観ていただけてとてもうれしく思っています。そして今後に繋げたいと思います。

    私たちのお吉物語は、口伝から来ているものを参考にしています。お吉についてネットで検索しますと色々な書かれ方をしています。その辺も調べた上で、下田の人々の口伝を一番の参考にしました。
     
    またぜひよろしくお願いします。ご来場、誠にありがとうございました。

    2011/09/24 00:35

    ”殿様である伊佐”とか”元殿様の伊佐”なんて書いておるが、下田は天領で殿様なんぞおらんのだよ。高校の日本史レベルじゃよ。伊佐は奉行所の上級役人もしくは奉行であって、町人が彼を殿様と呼ぶのは武家の当主に対しての尊称としてなのじゃよ

    2011/09/19 17:10

    みかん様
    早速のコメントありがとうございます。
    一つ残念なのは、私の伺った日は、
    みかんさんが受付にいらっしゃらなかったことでした。
    また、公演予定などをご連絡頂ければ幸いです。

    2011/09/19 11:46

    よしさま
    ご観劇&レビューありがとうございます!
    とても詳細で丁寧な文で、感激いたしました!
    真剣に見てくださってる様子がうかがえ、とてもうれしくありがたく思いました。
    これからも宜しくお願い致します。

    2011/09/19 10:26

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