「ベルナルダ・アルバの家」 公演情報 ウンプテンプ・カンパニー「「ベルナルダ・アルバの家」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    丁寧に作られた芝居
    このお芝居を観たいと思ったきっかけはフライヤーの写真がとてもお洒落な感じだったからですが、ロルカの作品と知り、フライヤーのイメージとは違うかもしれないとか観劇前は思ったりもしました。

    観劇後の感想は非常に満ち足りた気持ちで、宣伝美術から、音楽、照明、美術、俳優の演技すべてに主宰であり演出家の長谷トオルさんの神経が細部にまで行き届いていて、「お見事」と言うしかありません。

    久々素晴らしい公演に巡り合え、幸せです。次の公演もぜひ拝見したいと思っています。

    ネタバレBOX

    開演前、小鳥のさえずりが聞こえてきて、効果音かと思ったら、上手側のせり出した空間に鳥籠が吊られ、本物の小鳥がいるのだった。

    開演し、家の出入り口に照明で外光がサーッと差し込んだ時、その美しさに息をのみ、期待感が膨らんだ。

    俳優の演技は全員素晴らしく、文字通り役を生きている。伊達に稽古に時間をかけてはいないと思った。

    台詞が難解でなく、一つ一つしっかりと伝わってくる。翻訳ものの場合、作品と観る側の自分との間に少しでも距離感があると、たちまち置いて行かれてしまうのだが、そんなことがまったくなかった。

    特に威厳ある女家長を演じる新井純の存在感はものすごく、この難役は俳優が負けてしまうと台無しだと思うが、新井は堂々とした演技でしっかりと舞台全体の統率もとっていた。

    女中頭ポンシア(坪井美香)との丁々発止の会話にも魅せられた。

    こいけけいこ、薬師寺尚子といった小劇場でもおなじみの若手女優2人が出演しているのも好ましい。

    末娘アデーラ(薬師寺)と4女マルティリオ(森勢ちひろ)が2人とも小柄な女優ながら、火花を散らせる場面に惹きつけられた。

    スペイン大使館が後援ということで、作者や作品、国情と時代背景などを解説したオールカラーの無料パンフレットが付いているのも親切である。

    以前、アンダルシア地方の写真展を観たことがあるが、舞台はその風景を思い起こさせるほど想像力をかきたてられるものだった。

    オリジナルに作曲された音楽も旋律が美しく、元からついていた歌曲のように思えるほどマッチしている。

    音楽は生演奏(神田晋一郎・則包桜)で、最近、生演奏の公演が流行のようだが、この公演はアクセサリー的な生演奏などではなく、奏者も演じ手の一員として溶け込んでいる。

    この閉鎖的な家の外界の状況を音楽がすべて表現しており、特に外を通る男たちの労働歌に女たちが聞き惚れる場面がよかった。

    8年間も服喪による禁欲生活が続くことで、女たちの性への欲望が鬱積し、爆発し、近所の未婚の妊婦に激しい憎悪と暴力が向けられ、そして思わぬ悲劇的終幕を迎える。

    衣裳が黒であることから、フライヤーは全員白い服で撮影している意味が生きてくる。

    劇中の台詞にもあるように、白いリネンやレースは「女たちの未来への希望」の象徴でもあり、鳥籠の小鳥たちは女たちの身の上を暗示してる。

    また、劇中の台詞にも「オリーブの畑」が登場するが、ロルカもまたオリーブ畑のそばで銃殺されたとパンフに書いてあり、感慨深かった。

    誠実な舞台は心の奥に強く訴えかけてくるものがあると痛感した。



    0

    2011/09/05 10:26

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大