「ベルナルダ・アルバの家」 公演情報 ウンプテンプ・カンパニー「「ベルナルダ・アルバの家」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    重い・・・しかし素晴らしい作品
    正直、まだ感想が頭の中で完全にまとまっていないほど、
    インパクトの強い作品。

    実は私は5年前、北千住1010で、同じ演目を見ている
    (こちらの劇団ではないが)。
    その時も、帰りの足が重たく感じるほどのショックを受けたが、
    違う劇団・演出・役者で観ると、
    「一度観た作品」という気がしないのが不思議なほど。

    しかし、休憩込みで3時間近い公演だが、
    前半も悪くは決してないものの
    後述するように娘たちの性格付けについて、
    もう一工夫あればより不気味かつ不安感が
    強くなったのではとも思ったが、
    後半は見事に破局へ突き進み、
    全体としても充実感を感じた・・・
    観終ってみれば素晴らしい作品!

    さて、演劇本論はネタバレなので後回しにして、
    先に、まず音楽のことを書いておきたい。
    ピアノと打楽器(ヴィブラフォン?…鉄琴の一種…が主体)の
    2人の奏者のライブ演奏。
    ピアニスト(神田)が作曲も担当したそうで、
    この音楽、基本的には「現代音楽」で、不協和音が主体・・・
    しかし、高音域で柔らかく奏されるため、
    これから起こる「事件」を予知させるとも言えるが、
    決して不快な響きはしない。
    ヴィブラフォンも、普通に叩くだけでなく、
    ヴァイオリンの弓で擦るなどの奏法も取入れられ、
    独特の雰囲気を醸し出すことに成功している。

    (最も私は、2列目の向かってもっとも左の席だったので、
    演奏者に近過ぎて、最初はそれが少々気になったのだが、
    次第に演奏者の息遣いが感じられることが面白く思われた。
    ただ、舞台も広いし、できればもう少し後ろの席の方が
    一般的には良いだろう。)

    それから、パンフレットについても付言しておきたい。
    カラー写真付き8ページで、有料パンフではないし、
    決してかさばるものではないが、
    当時のスペインの社会事情・背景なども分かりやすく解説され、
    過不足無い出来の良い作りである。

    ネタバレBOX

    さて、ここから、劇そのものについてだが・・・
    あまりにワンマンで、自分に逆らうことは一切許さない
    タイトルロールの女主人。
    口答えなどすると、ステッキで殴りつける(今なら虐待とかDVだろう)。
    夫が亡くなったばかりで家族一同喪に服している。

    この謹厳な母に育てられた5人の娘は、
    いわば母の顔色を伺って育ってきた娘達。
    しかし、それだからこそ、内面に鬱積しているものがあるし、
    それは穴が開けば噴出する。
    しかも、「無菌培養」されているだけに、一旦菌に侵されると弱い・・・。

    そして、役としては登場しないペペは、金目当てで長女と婚約するが、
    夜中に逢瀬を重ねるうちに、妹たちも彼に惹かれ始める。
    そして、末娘はついに、彼に身体を許すまでに至る・・・。

    まあ、要約してしまうとそれだけなのだが、
    いわばこれを舞台上にリアルに表現されていくわけである

    また、最後に起こる悲劇の伏線として、
    この村で未婚の母となって(当時は大変なタブー)、
    発覚を恐れた母は子を亡き者にしようとする・・・
    しかし他の村人の知るところとなり、
    破戒女として村人になぶり殺しとなる。
    (キリスト教の聖書本来の教えと違う気もするが、
    しかしこれが現実のキリスト教社会だろう。)
    これは実際に演じられるのではなく、
    伝聞として扱われるのだが、この話もきわめて効果的である。

    演技としては、何よりタイトルロールの新井純の存在感が大きい。
    役柄としてそれは当然でもあるのだが、
    この重い役を見事にこなしていたと思う。

    一方、欲を言えば、5人の娘たちについては、
    1 過酷な母親に育てられ、今も一緒に生活している
    ・・・しかし母のいないところでは別の側面を見せる部分
    2 5人それぞれの個性の違い・・・年齢のみならず性格も違う
    の2点についてもう少し明確に表現されれば、と思った。

    それから、女主人に対して女中頭は同年代とはいえ結構タメ口だったり、
    それに中年の女中まで、意外とぞんざいな口の利き方を
    怖い女主人にしてみたり。

    これが、この女主人の威厳を割いているような気もした。
    もちろん、女中頭は、この家のことも思って、
    あえて女主人に強く忠告をする場面もあるのだが・・・。
    しかし、それが受け入れられず、
    「後は野となれ・・・」的な態度に変わってしまうのだが、
    その部分のコントラストも弱くなってしまうように思えた。

    これはもしかしたら全く的外れかもしれないが、
    原語では日本語のような敬語はないし、
    二人称に親称、敬称の区別があっても、
    これも日本語と一致しているものではない。
    この辺の翻訳(日本語表現)の仕方で、もう一工夫できるのでは、
    という気もした。

    ただし、以上の指摘は、すでに演劇として高水準のものに到達している
    ゆえに、あえて、それ以上のものを望んだものであることは、
    あらためて付言しておきたい。

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    2011/09/04 10:44

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