満足度★★★★
重厚な芝居
その土地の因習・血筋に囚われて破滅していく家族を女優10人とミュージシャン2人によって描いた、まさに「演劇」といった正当派な作品で、多少の古臭さはありましたが、2時間半以上ある上演時間を長く感じさせない熱のある演技が魅力的でした。
父が亡くなり、厳格な母親の下で喪に服す5人姉妹の前に現れる1人の男の存在によって姉妹の間に嫉妬が渦巻き、悲惨な結末を向かえるという暗い物語ですが、同時に女達の強い生命力が感じられました。
新井純さんと坪井美香さんの演技が凄味がありながらも客観的な余裕も感じさせて素晴らしかったです。2人が会話するシーンは内容的には楽しくはないのですが、演技のバトルが楽しかったです。
ウンプテンプカンパニーの若い役者達も海外戯曲独特の言い回しを違和感なくこなしていましたが、ベテラン勢と比べると大仰さに説得力が伴っていなくて只のオーバーな演技になってしまってる場面が所々ありました。
演出は派手なことをしないオーソドックスなもので、本物の飲み物や水瓶を使っていてリアリティがありました。
気の触れた祖母の表現がアングラ的スタイルで、第1幕でポーズを決めるところや、第3幕でのモノローグ的な歌が作品全体のトーンから浮いているように感じられて残念でした。
天井から紗幕が吊り下げられ、ステージの上には大テーブルと椅子のみの舞台美術に対して劇場の元々の木製の壁の存在感が強すぎてビジュアル的な統一感が失われていたので、壁は黒い布で隠した方が良いと思いました。
ビブラフォンを中心にしたパーカッションとピアノの生演奏が主張し過ぎず、だからといって登場人物の感情にべったりな分かりやすい音楽でもない、絶妙なバランスを保っていて効果的でした。
女達の置かれた状況を象徴するような鳥かごの中の小鳥達も、良いタイミングでさえずりを聞かせる名脇役でした。