リコリス ~夏水仙~ 公演情報 東京ストーリーテラー「リコリス ~夏水仙~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★


    舞台はコーヒーショップ。店を経営するマスターを慕って集っていた近隣の人たちがひき逃げ事件の被害者を助ける場面から。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    しかし被害者は助からず事故現場には、目撃者を探す看板が立てられた。そして、その日から、看板のそばに一人の男・神尾昇が「目撃者を探しています」のプレートを首から提げてその場所から離れようとしなかった。男は、来る日も来る日も看板の傍らに座り続けた。まるでその場所にしがみついて自分を傷つけるように・・。

    神尾はひき逃げされた女・まさこの元夫だった。かつて神尾は妻を裏切り借金を作って家族を捨てたのだ。その罪を償うかのように、座り続ける神尾。亡くなった人の為に何かしたいという一心だったが、これを快く思わない近隣住民と実の息子の稔。

    しかしマスターだけは亡くなった自分の妻への想いも重なって昇をサポートするのであった。雨が落ちてきた場面で、マスターが昇に傘をさしてあげる行為が美しい。ワタクシの目に涙が盛り上がって、頬を伝い落ちた。傘はこういうシーンではなくてはならない小道具だ。

    やがて、昇のあまりの熱心さと過去の償いに対する思いに心打たれた近隣住民は、マスターのサポートする姿勢に加わって輪が広がっていく。そして・・、毎日毎日座り続ける昇を横目に、通行していた犯人は己の罪の意識に耐えられなくなって自首したのだった。

    母の遺書を父親に告げる稔の妹・愛海が強い意志を持って静かに語る場面は一番の盛り上がるシーンだ。そして対する父親・昇の表情が素敵だ。小川康弘は実年齢よりかなり加齢した役を見事にこなし、また情けない、うらぶれた父親役の後悔の念を秀逸に演じていたと思う。

    この物語は妻が生きてるうちにもっと優しく接してやれば良かった、というような後悔にも似た想いへの賛美歌なのだ。その賛美歌はリコリスにも届いたはずだ。

    素敵な物語だった。終盤では号泣するほど泣かされた。そして主婦2人の他愛ない会話も楽しい。大切な人が生きてるうちに優しくしたい。決して後悔はしたくない。心からそう思う。

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    2011/08/19 18:33

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