満足度★★★
自己の輪郭
新宿の雑居ビルの1室で6人限定で秘密裏に行われる実験のようなイベントで、いわゆる「演劇」とは全く異なるものでしたが、ではこれは何だったのかと考えてみるとまさに演劇的としか言いようのないものでした。自分自身が作品の当事者という奇妙な緊張感があり、普段使わない感覚が刺激され、50分弱が一瞬に感じられました。
会場に入る前に部屋の前で靴をスリッパに履き替え前説があるのですが、既にこの時点から作品のテーマに関わるキーワードがうっすらと提示されていて、面白い導入でした。会場に入ると前の回に参加している人たちがいて、その様子を観察するように指示され、してはいけないことをしている気分になりました。
前の組が終わると、ボードゲームのような小道具が置かれたテーブルを挟んで、6人が3人ずつ向かい合って着席し、ヘッドホンの指示に従ってちょっとしたアクションを行って、部屋の中では2人の役者がヘッドホンから流れてくる物語にリンクするようなことを演技して話が展開して行きました。途中で向かい合っている人と席を交代して、おそらく同じ内容がヘッドホンから流れて来るのですが、自分が見ていた人が見ていた人(=自分)を客観的に見るような入れ子的・鏡像的構造になっていて、さらに前説、役者の演技、ヘッドホンから流れる物語が多層的に絡み合いデジャブ感が感じられて、自分は自分の意志で自分というものを形作っているのかどうか考えさせられました。
作品の狙いや構成はとても面白かったのですが、装置や演技など全体的にもう少し精度が高くなれば、もっと緊張感のある希有な体験が出来るかと思いました。
2011/06/30 12:42
2011/06/27 17:02
色々なことを考えさせられる刺激的な作品で面白かったです。
次回も慣習にとらわれない実験的な作品を期待しています。