【ご来場・自宅での鑑賞 ありがとうございました】大空襲イヴ 公演情報 Aga-risk Entertainment「【ご来場・自宅での鑑賞 ありがとうございました】大空襲イヴ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    スケルトンのみで見せるシチュコメ
    震災後8日目、一部の物不足が報道され、買い出しの大荷物を持った人でごった返すなか、新宿の会場に向かった。
    震災前に観ると決めていた公演だったけれど、日に日に心が重くなり、予約できなかった。
    思い切って当日売りを買ったけれど、まだ心が震えているようで、客席に座っていても正直芝居に集中できる状態ではなかった。
    冨坂友さんは、この作品が太平洋戦争末期、東京大空襲前日の非常時に「~どころじゃない」と笑い飛ばす喜劇であり、
    ここで上演をやめたら嘘になってしまう、という思いをパンフの挨拶文に書いている。
    4面あるパンフの1面を全部使って緊急時の避難注意が細かく書かれてあり、前説は簡単な避難注意以外震災に関する言葉はなく、なるべく平常心で観劇してほしいと思ったのだろう。
    安全を考慮し、セットなし、衣裳なし、機材も最小限というコンパクトな舞台で、稽古場見学と錯覚する雰囲気だった。

    昨年、ル・デコでやった番外公演の「みんなのへや」の手法を生かし、スケルトンのシチュエーション・コメディ。
    シチュコメはお金をかけなくても上演できるという冨坂さんの挑戦でもある。

    ※震災直後、長期のログインエラーで投稿できなかった感想がたまってしまい、遅くなりました。いま、少しずつUPしています。

    ネタバレBOX

    スケルトンのみのシンプルな上演形式がはからずも今回のような非常時に生きる結果となった。
    衣裳やセットがなく、ある意味、俳優たちは演技力だけで観客に伝えなければならず、きつさがあったと思う。

    戦時中、医者の家に下宿してい医学生の目の前に、この家の裏手にあるはずの埋蔵金を掘り出すからと脱走兵がころがりこんでくる。

    医者は国防婦人会の班長をしている気の強い妻の目を盗んで、独身と偽り、不倫している。
    愛人が医者の家を訪ねてきて、脱走兵を探す特高刑事が、医者の嘘からさまざまな勘違いをし、混乱していく。

    脱走兵とは逆に、もう一度戦地へ行くために医者に偽の診断書をもらおうと訪ねてくる傷痍軍人は、医者の不実に絶望した
    愛人と思いを通わせ合うことに。

    埋蔵金の代わりに掘り出したのはなぜか金属供出を逃れるために隠したメダル。
    だが、人々は「埋蔵金だ!」と狂喜乱舞。訂正しようとする医学生の声は最後まで耳に入らない。

    医者の矢吹ジャンプは本拠地ファルスシアターの看板俳優でシチュコメを手のうちにしているだけに出色の出来。
    医者は色事においてはとんでもないくずるい男だが、矢吹が演じると、ひたむきな可愛さがある。

    医者の妻、木村ゆう子(帝京大学ヴィクセンズシアター)は口達者で気の強い妻を好演。この妻がいるから医者のキャラも生きてくる。

    医者の友人で、特高刑事との板挟みになりながら右往左往する巡査を斉藤コータ(コメディユニット磯川家)が演じ、コントのように流さない
    きっちりとした芝居で好感が持てた。

    狂言回し的役割の医学生の淺越岳人は、ラストの混乱の中で「そうじゃないから」と言い続け、周囲に聞き入れてもらえない「ウケ」の芝居が
    よかった。彼を見ているとSETの小倉久寛の若いころを思い出す。彼もこういう「ウケ」の芝居が巧い人だ。

    この作品で一番不満が残ったのは、タイトルにある「東京大空襲前日」という状況の必然性が感じられなかったこと。

    毎日、空襲警報に怯えて暮らす人々の戦時中の緊迫感もなく、きわめて呑気な日常に見える。

    たとえ大本営発表でもいいから新聞記事や世相について人々が語り合う場面とか、配給による食糧難などの生活感を出してほしかった。



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    2011/04/25 16:00

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