タイムマチンだよ!〜かえってくるきないよ〜
0F-ゼロフレーム-
船場サザンシアター(大阪府)
2018/12/07 (金) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
題名から軽いSFファンタジーものかなと思っていたら、意外と輻輳し構成にテクが入っていて、ちゃんと見ていないとどんどん置いてけぼりになるようなまともで真面目な作品でした。お見それいたしました。
それぞれのエピソードが実は深くハートフルなので、もう1回見てみたい作品です。とはいえ、明日は予定があるしのう、、。9人の出演者、全員稽古も十分で見ごたえありました。才能のある劇団です。
808ダイエット(ハッピャクヤダイエット)
極東退屈道場
AI・HALL(兵庫県)
2018/11/09 (金) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
舞台の奥に大きく掲げられている大坂の808橋地図。ずっと思ってたんだけど、東が上にある。その架空線上には大阪城が。現代の地図とは随分感覚が違うが、当時は大阪城を東西に発展していたせいだろうか。
これに目をつけた林は西方浄土とミックスすることにより、不思議な大阪噺を見せてくれた。
林の作品は能との融合劇でも知られるように、奇想天外な宇宙的な構想に身近な話をくっつける。これがまたたまらないほど面白い。むずいようで、何だか楽しいのだ。
今回は宇宙的なものは影を潜め、大阪808橋の人間喜劇を基本づけのか、コミカルなんだけど、饒舌でもある。大衆版に徹したかのような林の変わり身である。
これにちょっと僕は驚くが、いつものリフレインもあり、まあ楽しめる。でも林の面白さはこんなものではないと思う。ランタイムもちょっと長かったから、女性3人のお話なんかも、少々饒舌に感じたところは林一流の余裕なのかもしれないですね。
アイホールの大きな舞台、そして橋を自在に動かす舞台づくりに彼のやる気を見る。次回がますます楽しみになった。
はこづめ
ハコボレ
ウイングフィールド(大阪府)
2018/11/02 (金) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
設定が遠い未来の話ではあるけれど、意味深の現代青春群像劇とも言える。一つの箱に3人が真実を隠しながら生活を送っている。しかし、その日々はいつまでも続くことはなかった、、。
ラスト近くの10分ぐらいから、怒涛のように今まで静かだった穏やかな川が激流に変貌する。もう彼らには時間も、青春も、かすかな希望も、そして未来さえなくなってゆく。その最後の時間を彼らはロックを演奏し、彼らが一体となって共有しながら、その時を迎えるのであった。
まるでこの10分間を描きたいがためにこの劇を作ったような、凝縮した密度の高い時間であった。そしてそのまま劇は終わってしまう。取り残された観客はどうしていいのか面食らっている珍しい観客席でした。
あの圧倒的なラストには僕も唖然となりました。
scene1「Heimat-ハイマート-」
StarMachineProject
HEP HALL(大阪府)
2018/10/23 (火) ~ 2018/10/24 (水)公演終了
満足度★★★★
一体故郷はどこにあるんだろう。ふるさととはいったい何なんだろう。
詩劇というか、ポエムなんだろうなあ、コミカルでいて哀しくてやはりおかしい。ずっと故郷というひとつのテーマを追求している。
想像していた以上に映像はそれほど驚かせるものではなく、むしろおとなしめだ。俳優のクローズアップなどが多い。
バランスの取れた俳優の布陣で、劇は深く流麗に進行する。途中流れる「うさぎ追いしあのころ、、」がなかなかのシャウトで泣きそうになった。
ショウ ゴウ
劇団暇だけどステキ
HEP HALL(大阪府)
2018/10/05 (金) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★★★
20周年公演ということですべて凝っている。まずHEPを使って、大がかりな大道具。迫力のある動き、20人を超える俳優陣にそれぞれ造形力の強い脚本で攻める。
子供時代と現代とをオーバーラップさせることにより人間の心の不変をノスタルジックに問う。これはうまい。20年の歳月が瞬時に色濃く示される。これほどの大人数の役柄ではあるが、ひとりひとり丁寧に描き込んでいるので、みんな主役のようでもある。
強いて言えばこの手法により、主役不在であるかのように思われてしまえるが、これも各劇団員への愛情と捉えることにより、その気持ちがじんわりと観客に伝わることとなる。優しい劇団である。
2時間、だれることなくこの劇はいよよ進みゆく。それぞれ人々は悩めるも、前に進んでゆくのだ。それはこのヒマステの今、を歩み出す道のりに違いない、、。
女と男のしゃば・ダバ・だぁ ~みんな夢の中~
あみゅーず・とらいあんぐる
ウイングフィールド(大阪府)
2018/10/05 (金) ~ 2018/10/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
いつも秋が来るとアミューズを見て、ふと人生を感ずるのが習わしとなっている。今年は一月ほどそれが早い。けれど、まさしくいつものアミューズの黄昏人生劇だ。
いつも通り3話のオムニバス。第一話はなかなか大胆でしかも味わいも深く堪能する。亡くなった男と会話する家族たち、、。素敵な話である。
第2話は、意外と軽やかなセンスのある楽しげなるお話。結論も出すわけでなく通過劇であろう。
そしてそれは第3話へとつながれる。これだけの主題を30分で刻むのは大変だと思う。夢まぼろし、そして現実。重く、軽やかなエスプリの利いた人生劇である。アミューズ健在。来年もよろしく。もう待ち遠しい、、。
キラメキ~私はトビウオ、あなたは太陽~
project真夏の太陽ガールズ
HEP HALL(大阪府)
2018/08/29 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了
満足度★★★★
シンクロナイズで明日を目指す女性たちの物語です。話はクラブ活動なんかでよくあることかなと思ったが、次に丁寧に描いています。合間にはシンクロの実演もあり見て飽きさせない演出である。
笑う茶化師と事情女子
匿名劇壇
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2018/08/24 (金) ~ 2018/08/27 (月)公演終了
満足度★★★★★
原点に戻ったのであろうか、小さなin→dependent1ST劇場での上演だ。Hepなんかでも十分通用する劇団になってしまった、福谷率いるこの美女イケメン揃いの関西を代表する待望の新作である。
客演がないからいつもトーンが整っている。だから完成度も高い。ホンはシニカル十分で、うまい面白い哀しい恐い。言うことがない。
冒頭、福谷の斜め前に東がストーンと立っている。彫像のように。まるで人間ではないがごとく、、。これが最後に効いてくるんだよなあ。うまい!
松原の役柄を見てあっと思ったんだが、この役っていつもなら東の役っぽい。今回は東と松原をとっ変えた感もする。うまい配役構成。
8人の俳優、全員魅せるんだあよなあ。練習が十分だけでなく、理解力が早いのかな。これが客演なしの演劇の強みかも。
最後には茶化師という結びつきで8人が揃うことになる。演劇冥利。けれど思ったより、茶化師が生きて来てないなあとも思った。思い付きはいいけどね。
あっという間の85分。時間もテンポも演技も演出もすべてよしの匿名。さてこれからどこへ向かうのか、、。
マナナン・マクリルの羅針盤 2018
劇団ショウダウン
船場サザンシアター(大阪府)
2018/07/28 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
林遊眠さんの2時間を超える一人舞台。ト書きまで自分でやってのけるので、ストーリーが分かり易い。
それにしても一人で10人以上、それもほとんど男の荒くれ男を演じ切るのだから熱演というより、猛演です。その彼女、まだうら若き美しい女性なんです。
話は大航海時代、カリブの海、海賊の話です。怖いし楽しいし、夢やロマンがいっぱい。けれどしっかり確かな人生を見せてくれる。そこが素敵です。ラストなんかちょっとした映画を見てるようで、ジーンとくる。
一人芝居あまり好きでははなかったんだけど、そんなものどこかへ行ってしまったよ~~ん。充実した演劇日和。台風一過だったけど、心はルンルン。
ほたえる人ら
ばぶれるりぐる
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2018/07/13 (金) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
旗揚げ公演だという。しかし、なんのなんの脚本がしっかりしてるし、うまい。そして何気ないとある田舎の出来事が、現代社会の光と闇を明確に浮き彫りにしている。雇われ区長が一人籠もる辺りから俄然面白くなる。ユニークである。
いやあ、観客をわしづかみにするテクはかなりの才能があると見た。モモコさん、見た目普通の可愛い女性としか見えない人だが、人は見かけに寄らないものですね。
俳優陣もみんな的確に演技をこなしている。特に得田晃子さん、籠もっているときのセリフの掛け合いがタイミング的に難しいと思うが、見事こなしている。
みんな演劇が好きなんだろうなあ、そんな意気込みがすごく感じられた。これからも伸びてゆく劇団だと思う。こういう劇を見た日はルンルン気分になります。真夏で37度の日でしたが、そんなの忘れてしまいました。
最後の晩餐
ThE 2VS2
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2018/06/29 (金) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
12年の長きにわたり活躍していた劇団の解散公演である。20歳過ぎで始めた彼らもももう30歳半ば。色々考えたんだなろうなあ。このまま演劇を続けるにも一大決心がいる年齢である。青春の時は過ぎ、今からは何をするにも責任が重くのしかかる年齢である。
劇は6編のコメディ劇。というより寸劇。下ネタもありめちゃ面白い。千秋楽なのに子供がやけに多い。大人と同じように笑ってる。内容がそれほど分からなくても、年齢にかかわらず本能的に面白いものは面白いのだろう。彼らと観客との一体感が素敵だ。
そしていよいよ出し物が過ぎて行き、最後のアドリブ劇。一瞬が劇を決めてしまう難しい技術と力量が要求される。しかし、何とか彼らは切り抜ける。
最後なので、一人一人挨拶がある。実力はあるけれど、興行的には駄目だった、と。小劇場で、興行的に常に安定している劇団なんか、一握りしかないような気もする。ましてや、演劇だけで食べていける劇団があるのだろうか、、。
劇そのものは面白かったけれど、なんだか演劇をただ追っている僕のような一観客は、ひょっとしたら彼らにたいして何かの責めをかけていたのだろうか。
僕らは彼らの演劇から明日への活力を得る。彼らも発表する喜びなどを得、さらに明日へと向かっていると信じてた。
でも現実は、僕らが彼らをただ縛っていたのかもしれなかった。そうだとしたら彼らに申し訳ないなあ、、。考えさせられる解散公演だった。
となりのところ
空晴
HEP HALL(大阪府)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/12 (火)公演終了
満足度★★★★★
上演時間いつもきっちりと90分。これ、映画もそうですが、人間の見られる時間の基本タイムです。そしていつも人間の、人と人の機微を忘れ去られた時を遡るかのようにじっくり見せてくれる空晴ワールド。いつもいつも感心して見てしまいます。
今回はいつもの勘違いからくる挿話が淡く、いつもほど強調していない。さらりと描いて、爆笑には持っていかない工夫がされていると思った。前作を経て、山を越えたのか、ちょっと方向を変えた感がする。
それが真実だったら、それは正解だと思う。いつまでもいつもの空晴でいる必要はなく、空晴一同も観客もそれぞれ時間とともに変わっていくのだから、、。
3軒の隣近所の話だが、この小さな町に20数年ぶりに帰って来るもの(上瀧昇一郎)、夜逃げ同然出ていくもの(孫高宏・駒野侃),娘はいるもののなかなか会えない元教師(山本ふじこ)、そして訳あり中年新婚者2人(絶妙岡部尚子・小池裕之)の家族を通して、自分と隣という他人との関係を庭という親近感のあるものを通して考えてゆく、、。
ひょっとしてそこに仕切りは要るのか要らないのか。
岡部の脚本は最近特にじっくり描いた女流小説風である。きめ細かく、劇を見ている時より、終わってからその余韻を辿っていくと、空白の間というものを考えさせてくれる稀有な作家である。そう、文学的なのである。
相変わらず今回も素晴らしいと思う。彼女はどこまで進歩してゆくのか、、。
ひなんくんれん
うんなま
AI・HALL(兵庫県)
2018/06/09 (土) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
今回は避難訓練の話。マジ、30年以内に遭遇するという南海トラフの話から始まり、両親は外国へ旅行するがテロにも遭遇する。地震対策として、水、電気、ガスなどどれが一番重要か、など問われる。
今回はテーマがありそうで、そうでもなく、マジ、避難訓練を観客に考えてほしいわけでもなく、繁澤氏の意図するところははっきりとは分からないが、現代を、現代が直面する危機管理について何か言いたいのかは、何となくわかる。
登場人物から発せられる言葉から、いたく人生って、容易く、しかしあっけないものなんだという印象は受けたが、人間って、常に死と向き合っているんだね。
とか、こんなことを考えながら見ていた劇でしたが、繁澤氏の思う壺にハマってしまったのでしょうか、、。
妄想恋愛小説家 6月10日(日)当日券あります!
THE EDGE
ライブハウス地下一階(大阪府)
2018/06/08 (金) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
まあ、よくあるパターンの恋愛論劇ではあるが、狭い劇場に大勢の俳優たち。しっかりお作った観客席。手作り感が漂い、親近感がある。盛井氏ワールドをどれだけ堪能できるか、それがこの演劇の決め手である。彼の一人パワーでは行き届かないところを他の俳優陣が見事手助けしてる。このチームワークがシンプルな恋愛群をしっかり締めている。
セレンディピティ
SHOW-COMPANY
クレオ大阪中央(大阪府)
2018/06/02 (土) ~ 2018/06/02 (土)公演終了
満足度★★★★
ハートフルな物語とオオサカを結び付けたユニークな脚本が地元ファンに人気のある原因なんだろうなあ、なかなかしっとりして読後感も素晴らしい。稽古も十分しているようで、セリフのトチリは見られない。みんなマジメなのだ。
2時間を超す長丁場だけど、途中休憩もあり、観客に対するサービスもハートフルだ。
(Let's) Take it easy at home??
猟奇的ピンク
ウイングフィールド(大阪府)
2018/05/26 (土) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
この劇団の醸し出す雰囲気が好きだ。どんな劇でもバックに流れているのは人間の孤独、喜び、哀しみ、諦観すなわち人生そのものすなわちポエムである。
みず色の空、そら色の水
the nextage
ウイングフィールド(大阪府)
2018/05/10 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
期待以上の作品でした。チェホフの世界と、演劇をすることにより現実の苦悩に立ち向かう若人たち。そのリンクが世代を超えて青春というものを鮮やかに映し出す秀作でした。
幾望
真紅組
近鉄アート館(大阪府)
2018/05/11 (金) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
Bar月光~それぞれのペーパームーン
魚クラブ
アートギャラリーフジハラB1(フジハラビルB1ギャラリー)(大阪府)
2018/05/04 (金) ~ 2018/05/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
女性版、男性版(女装版)の2編を見る。3時間。満席むんむん、久々に窮屈な環境で鑑賞。やはり女装版が迫力があり、見ていて演劇的にも惹きつけられる。同じようなホンなんだけどね、やはり役者の個性が花火のように打ち上がってる。
偽夜間金庫事件、大丸、グリコ、森永と怪しき事件が続いた当時の時代が垣間見える。
懐かしいなあ、、。そんな年齢になったんだなあ、とほくそ笑む。
俳優陣も楽しんでる。観客と空気感が一致するその醍醐味。そのために演劇を見に来ているファンも多いだろう。そんな素晴らしいひと時。
中村ゆりと出本雅弘が圧巻。特に出本は女装が続き、癖になってしまわないか、と心配する。秀作。
フェアリーテイル
オリゴ党
天満天六・音太小屋(大阪府)
2018/04/14 (土) ~ 2018/04/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
3つのオムニバスと一つのインターミッション。Bバージョンです。二人芝居です。じっくり劇を見られます。今までの岩橋の毒が意外と抜けていて、いかにもフェアリーといった感じ。こんな演劇空間を創造できるんだね。素敵でした。
最初の「とんがり帽子」も力作でしたが、2番目の「食前酒」がなかなかいい味わい。引きこまれる展開に唸ります。一番、分かり易いのは「シヌノラ」でしょうな。笑えるし、ノスタルジーまで感じます。観客に大サービスです。
そして最後に、このオムニバスを収束するラストが待ちかかえていて、ほんのりといい雰囲気で観客は演劇鑑賞を終える。フェアリー、すなわち妖精たち。萩尾望都の「ポーの一族」を思い起こさせるイメージだ。岩橋は萩尾とは違い、永遠に死ぬことのない一族の哀しみを描くことはなかったけど、、。
岩橋さんのしっとりとした筆さばき、素敵でした。早く次作が見たいと思います。