実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かった。ボス村松作品のなかでは、ストーリーの起承転結がはっきりしていて分かりやすい。
役者さんもそれぞれ魅力的。踊る井草佑一さん、明らかに付け焼刃ではなくフィギュアかバレエの本職!?と思ったらコンテンポラリーダンスのご出身でしたか。表現力!
前作プリズンブレイクから宝保里実さんの魅力にやられっぱなしです。
7/4夜 ネタバレに追記
ネタバレBOX
死人スペースには退場したら自動的に振り分けられると思って見ていたけれど、後から考えるとそれなら絶対にいないはず/いるはずの人があり、つまり彼の主観的”死んだ人”がそこへ行くのだ。
タバコの燃える間、亡霊が現れて推理を助けるようだったが、彼の脳内推理である。だから亡霊は彼がなかなか気付かない推理の要部分を、言わない。言えない。
公演時間の9割をここで過ごすあの人のことを「そういう役割とはいえ大変だな」と思っていたが、いやいや、彼の心の特等席には常にあの人が座って、全てを見ているのだ。彼に、つまり"物語に"忘れられないあの人。嘘と本当、主観と客観が入れ替わり続けるような本編のなか、「最高の相棒だった」というセリフは確かに本当だったのだろう。それとも、それも肩代わりの罪悪感ゆえなのか。
今回は後半に説明が親切丁寧で、分かるか分からないかでいうと分かりやすく、これまでのボス脚本に感じていた「奥ゆかしさ」はあんまりないかなと思った(入れ替わりについては、再登場火事救出のときに分かった。陰謀の詳細は解説ありがとうございました。)。どれくらい説明するか、難しいところでしょうねえ。
ただ、特に言及されなかった上手スペースについてハッと気付いて「エモいのでは!?」
追記
亡霊がタバコを吸い、彼女がそちらを見て目を丸くするのがずっと気になっていて(ありましたよね?)、やっぱりあの人は本物の亡霊?なのだろうか。ツッコミも入れるし。でもたとえ本物だとしてもタバコ吸えないよなあって……。
千秋楽に配信で見直すべきでしょうね。
満足度★★★★
ボス村松作品は時として、詩心と回想シーンが入り組んで話が分かりにくいことがありますが、今回は比較的すっきりして初心者にも勧めやすかったです。
世界史っぽい中世ヨーロッパが舞台。当たり前のように竜が出てきますが、ファンタジー世界ではないんですね。
これは確かに、兎亭でセット無しで観客の心にゆだねるか、帝国劇場でフライングするかのどちらかです。
同じストーリーを別の切り口で「バブルムラマツの竜退治」でもいけるんじゃないかと思いました。
ネタバレBOX
騎士は姫に忠誠を誓い闘うもの。
姫は騎士に祝福を与え、信じて待つもの。国に身をささげるもの。
・・・という「物語」の役割をそれぞれがなぞって演じるからこそ、
元プロ野球選手は「騎士」、偽物の姫は「姫」でいられる。
一生懸命に自分の役割を演じると、相手の属性がより純粋に昇華される。
竜はそのための舞台装置にすぎないから、強ければ強いほどよい。実害など無くてよい。純粋に概念となった騎士は時空をも超える。
ということでしょうか。演劇内のメタ演劇を見るようで構造が面白かったです。
ラスト、父親が初めて「姫」ではなく「娘よ」と呼びかけるシーンは感動的ですが、
そこで娘が騎士と共に行くということは、最後まで姫としての役割に殉じるということで、皮肉なものです。