kikiの観てきた!クチコミ一覧

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マクベス

マクベス

Theatre Company カクシンハン/株式会社トゥービー

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/01/26 (木) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★

とにかく人々が動き回る。それに連れて舞台は躍動し、脈打つように進んでいく。動的で、遊びや見立てたっぷりの演出で、笑いも多めだったが、同時にヒリヒリするような緊張感に満ちていた。

後半、舞台上の人々のやり取りが聞こえないかのように、舞台の下を行き来するマクベス夫人が痛ましい。そして追い詰められていく中でのマクベスの独白に圧倒された。

虚仮威

虚仮威

柿喰う客

本多劇場(東京都)

2016/12/28 (水) ~ 2017/01/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/01/07 (土)

観始めてすぐ、舞台の上を縦横無尽に走り回る俳優の身体と声に圧倒される。そうだった、そういう人たちだった、と改めて思い知る。

平成と大正の12月25日に起きた出来事を軸に、人の求めるものと信じるものについて描く。

土着性とスタイリッシュさが同居する中で、奇妙な痛みと切実さを感じさせた約100分。

夜組

夜組

The end of company ジエン社

シアターKASSAI(東京都)

2017/01/13 (金) ~ 2017/01/23 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/01/20 (金)

ラジオの深夜放送。
電波を求めて夜出歩く人々。
奇妙な関係の男女。

重なりすれ違う会話はしだいにほぐれて、人々の関係を示していく。

5年前から続く計画停電と巨大な墓地は、あの震災と丁重に地続きで、大きな川の向こうの明かりとは微妙にズレた世界のようだ。

好きとか嫌いとか面白いとか面白くないとかそういう次元とは別に、じんわりと染み込むような言葉と想いがあった。

ネタバレBOX

去年の夏に観た15分の短編とつながっているのだと、始まってから気づく。

「死んでる」人が歩き回って生者と言葉を交わしたりするが、それで誰かが救われたりもして、それはすべて生者の奇妙な優しさだったのかもしれない、それでもいいのだと思ったりした。
カミサマの恋

カミサマの恋

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2017/01/18 (水) ~ 2017/01/23 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/01/20 (金)

カミサマと呼ばれ長年人々の「苦」を受け止めてきた道子を軸に、当たり前の人々の当たり前の悩みや苦しみを丁重に描く。

土地の方言や風習が物語の確かさを支え、登場人物一人ひとりに親しみを感じさせた。

ネタバレBOX

道子自身の抱えてきた想いが浄化されるラストが愛おしかった。
音楽劇 メカニズム作戦

音楽劇 メカニズム作戦

公益社団法人日本劇団協議会

Space早稲田(東京都)

2017/01/13 (金) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/01/14 (土)

半世紀以上前の岸田國士戯曲賞受賞作を、パワフルな音楽劇として魅力的によみがえらせていた。

初演当時には今より身近だったはずの労働運動に、たまたま関わることとなった音楽好きの4人の若者。
彼らの奮闘を中心に、社会や組織における希望の在り処を探す人々の姿を、ある種の寓話として描く様子が面白った。

「江戸系 諏訪御寮」「ゲイシャパラソル」

「江戸系 諏訪御寮」「ゲイシャパラソル」

あやめ十八番

サンモールスタジオ(東京都)

2016/05/27 (金) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/05/29 (日)

『江戸系 諏訪御寮』
このユニット初の再演。ある地方の伝説と風習を背景に描く、奇妙で切実な恋物語。そして同時に家族の物語でもあった。

多重構造の物語が浮かび上がらせる人の想いが愛おしい。

『ゲイシャパラソル』
印象的な設定と和のテイストを生かした物語の面白さはもちろん、人物の描き方にも厚みがあって、役者が映える舞台となっていた。

盛りだくさんな印象ながら、さまざまなモチーフや手法や音楽がスタイリッシュにまとまって、あっという間の125分となった。

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

時代のうねりや歴史の必然にもまれ、翻弄されながら生きていく個人の想い。いや、個人と言ってしまうには重過ぎる定めを背負って生まれ、生きて、そして亡くなったその人の想い。

自由で優しい気性のその人が、一国の器とも言うべき役割をどう受け止め、どう果たそうとしたか。2時間半休憩なしの会話劇が静かな緊張感に満ちたまま、観る側の集中も途切れずに、気が付けばカーテンコールとなっていた。

初演の評判に違わぬ、見応えのある作品だった。

悪巧みの夜

悪巧みの夜

同級生演劇部

梅ヶ丘BOX(東京都)

2016/11/01 (火) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

劇中の3人の個性や背景が物語が進むに従ってしだいに鮮やかになり、第一印象から変わっていく様子が印象的だった。それぞれの心の揺らぎがささいな仕草や表情から伝わってきた。

脚本や演出の細やかさ、こだわりを感じさせる美術、音や光の確かさなど、観客にとって繊細で濃密な時間となっていた。

燦々

燦々

てがみ座

座・高円寺1(東京都)

2016/11/03 (木) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/11/05 (土)

江戸の絵師の話である……というか、葛飾北斎の娘 お栄を軸に描く、父と娘、師匠と弟子、妻と夫、女と男、そして人間の話であった。シンプルな舞台の上で、竹竿と白く透ける不織布を使って江戸の人々の暮らしを生き生きと描き出していく。町に生きる人間の息遣いが聞こえる。

長田育恵さんの脚本の確かさはもちろん、それを立体的に立ち上げていく扇田拓也さんの演出がまたとても好みだった。いま私が観たかったのは、こういう芝居かもしれない……観終わると同時にそんなことを思った。

嫌われ松子の一生

嫌われ松子の一生

ネルケプランニング

クラブeX(東京都)

2016/09/29 (木) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

舞台化するに当たって、原作に登場するさまざまなエピソードや登場人物を思いきって省略したに違いない。たとえば、松子と家族との確執はほとんど描かれていない。ただ台詞の端々などから察することができるだけだ。それは残念な気もするが、その分、いくつかの人物と場面をじっくりと描いていく。

あのとき別の道を選んでいれば幸せになれたかもしれないのに。そんな歯痒さを感じながら、嵐のような松子の生涯を追体験する時間となった。

ムーア

ムーア

日本のラジオ

RAFT(東京都)

2016/10/06 (木) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/10/09 (日)

観ている間だけでなく観終わってからもじんわりいろいろ思ったりしてしまう感じがものすごく面白かった。

表現に抑制と諧謔が効いて、こんな題材(児童連続殺害犯を描いた絵本)なのに後味もけっして悪くない。

緻密さとしんと張り詰めた濃密な緊張感が印象的だった。

〻のメルヘン

〻のメルヘン

フロアトポロジー

APOCシアター(東京都)

2016/10/05 (水) ~ 2016/10/10 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/10/08 (土)

『〻のメルヘン』は『おどりじのメルヘン』と読むのだそうだ。踊り字というのは、日本語の文章でつかわれる記述記号の一群で、々、ヽ、ゝなど、繰り返しや重ねることを示すもの、らしい。繰り返すこと、重ねること。確かにそれが物語の重要なモチーフとなっている。

白一色の舞台美術に囲まれた、昔読んだミステリーのような物語は、予想を裏切るラストシーンへ向かう。様々な仕掛けと奇妙な味を堪能する約90分。

流砂ゑ堕つ

流砂ゑ堕つ

野生児童

「劇」小劇場(東京都)

2016/09/29 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/01 (土)

近松門左衛門の『女殺油地獄』を元に、ユニット主宰で劇団鹿殺し所属の有田杏子さんが脚本をお書きになり、劇団居酒屋ベースボールの新里哲太郎さんが演出された作品。

観ている間、ヒリヒリするような緊張感で息が詰まりそうだった。主人公のやることなすことすべてが裏目に出る。馬鹿だよ、そっちに行っちゃダメだ、と見ていてハラハラしてしまう。悲劇へ向かっているのはわかっているのに、どうにもならない、悪い予感に似た緊張感。

流れ落ちる砂のように、掴もうとしても掴めないまま、落ちてゆく。彼がほんの少しだけ賢く生きられたら、すべて違ってきたはずなのに。それでも皆が彼を愛していたのだろう、そう思うといっそうやるせない。

もっけの幸いの「もっけ」ってモノノケの事なんだって。知ってる?

もっけの幸いの「もっけ」ってモノノケの事なんだって。知ってる?

劇団ヘロヘロQカムパニー

シアターサンモール(東京都)

2016/09/26 (月) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/10/01 (土)

めっちゃ笑ってめっちゃ泣いた。

王道エンタメの展開とツボを押さえた喜怒哀楽の中で、それぞれの想いをきちんと掘り下げて、人が(いや人ともののけが)誰かを想う気持ちを描く。

笑いもドキドキも涙もたっぷりで長めの上演時間もあっという間に感じられ、もののけも人間も、敵も味方もチャーミングで愛しく思えた。

覇道ナクシテ、泰平ヲミル【偽蝕劉曹編】

覇道ナクシテ、泰平ヲミル【偽蝕劉曹編】

劇団ZTON

王子小劇場(東京都)

2016/09/22 (木) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★

疾風怒濤の時代を、その背景に龍神たちによる権力闘争を置いて、ある種のゲームにも似た面白さで描いていく。前評判通りスピード感のある殺陣がふんだんに登場し、物語にリズムを生み出す。加えて、キャラクターが明確で思い入れしやすい。

劉備玄徳と曹操の性格が、自分のイメージとは真逆で、それがなおのこと面白かった。ずる賢く立ち回り、非道に人を殺める劉備。そのくせ魅力的で、非道なことをしても憎めない。

三国志で言えば、まだ序盤の部分だけだったが、続編もあるらしいと伺ったので、そちらも機会があれば観てみたいと思った。

『OKINAWA1972』

『OKINAWA1972』

流山児★事務所

Space早稲田(東京都)

2016/09/15 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/09/24 (土)

流山児★事務所も風琴工房も好きでよく拝見しているけれど、それぞれの持ち味が活かされて、絶妙のバランスとなっていた。

フィリピン人との混血の青年の半生を軸に、義賊めいて親しみやすい沖縄の裏社会の人々が、沖縄の日本返還で本土のヤクザに牛耳られることを恐れ、結託しようとする経緯と、時の総理大臣 佐藤栄作と首相の肝入りで返還の交渉に携わった政治学者の苦渋の選択。

重いテーマやさまざまなバックボーンを踏まえた物語なのだけれど、転換や解説もショーアップされて楽しく、至近距離で観るアクションの迫力に眼を奪われた。

沖縄の置かれた立場の矛盾も苦悩も伝えつつ、ストーリーの面白さに引き込まれ、さまざまな場面で笑い、手に汗握る。骨太でアングラで、でも緻密さやスマートさも感じさせる、絶妙のバランス。加えて、登場人物がそれぞれとても魅力的で、ああ、もう一度観たかったなぁ、と思った。

グッバイマイバッグ

グッバイマイバッグ

シアターパントマイム企画maimuima

シアターバビロンの流れのほとりにて(東京都)

2016/09/17 (土) ~ 2016/09/19 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/09/19 (月)

テイストの異なるいくつかの作品によるオムニバス……かと思ったら、ひとつのかばんを軸に1本の物語につながっていく。黒服の男たちに追われている人物と、ふとしたことで鞄を取り違えられた男。追われていた男の鞄には、一見ガラクタにも見える奇妙なモノたちが入っていた。

それらのモノを題材にしたいくつかの断片。笑いを誘う話、シニカルなパントマイム。古い映画を思わせるリリカルなもの、シュールなコントめいたものやアニメのパロディを意外な形で見せるもの。

多彩な発想と身体表現、洒脱なユーモア、そしてある種の驚きと発見の感覚は、そうか、センス オブ ワンダーってこういうことじゃない?と思わせた。

嘘より、甘い

嘘より、甘い

タカハ劇団

小劇場B1(東京都)

2016/09/07 (水) ~ 2016/09/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/09/10 (土)

舞台は歌舞伎町の喫茶店。その店には、なぜかカモを求めるいかがわしい連中ばかり集まって。と、窓の外を見ると、隣のビルから人が落ちていく……という幕開け。

マルチ商法、風俗のスカウトマン、宗教団体の引き留め、左翼グループの先輩と後輩、何かに怯える少女、足の不自由なお店のママ、先生と呼ばれる2階の住人。信仰・主義・金銭・セックス、何を信じて何にすがるか。

彼らの会話の中で、しだいに明らかになっていくいくつかのこと。その中でも特に、「先生」の過去が、物語を動かしていく。ほとんど会話劇なのに、目を離せない緊張感。ラストで、それまで観ていた人物像と関係性が逆転し、あっ!と思わされた。

脚本の面白さに加え、手練れなキャストが揃って見応えたっぷりの90分だった。

この町に手紙は来ない

この町に手紙は来ない

monophonic orchestra

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2016/09/02 (金) ~ 2016/09/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

一つひとつの物語は饒舌ではない。どちらかといえば素っ気ないほどシンプルに感じられるのに、それらが重なるうちに、それまでの会話や人物像に込められた多くの情報や想いがじわじわと見えてくる。

創り手が、観客を信頼しているのだ、と思った。

気づいてみると、冒頭の物語が最後の物語につながっていく。少人数のキャストで描く200年以上の年月。ラストまで観て思う。これは、ある種の贖罪の物語なのだ、と。

人々がそれぞれの罪を背負いながら生き続けていく姿を柔らかく描く。罪の象徴とも言えるある種の欠落さえ、責めるのではなく、罪も含めて生きることを肯定しているように感じられた。

ずっと昔読んだ懐かしい小説のような、セピア色に染まる遠い思い出のような、そういう舞台だった。

無情

無情

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2016/08/24 (水) ~ 2016/08/30 (火)公演終了

満足度★★★★★

絶望的な立場の女性2人のストーリーが交差しつつ物語は進む。2人を取り巻く登場人物の言動が強烈だ。身勝手だったり非常識だったり厚かましかったりし過ぎて、その理不尽さについ笑ってしまう。

ふたつの物語はゆるくつながりつつ進んでいく。場面を重ねるうちに、状況はどんどん絶望に向かっていく。しかしその一方で、破天荒に見えた人々の柔らかな心のひだが感じられてきて、序盤の笑いとは違う、何か切実な想いが観る者の胸を満たし始める。

絶望的な状況の中で人々がポツリと見せる、心の芯のところにあるピュアな何か。そしてそれが確かに愛する相手に伝わっているのだと思える静かな救い。思い返すと、今もまだ言葉にならない想いが胸を満たす。くそう、なんだよこれ、なんなんだよ。ズルいじゃない、こんなの。

この脚本で、このキャストで、これを観ることができてよかった。

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