kikiが投票した舞台芸術アワード!

2019年度 1-10位と総評
新浄瑠璃 百鬼丸~手塚治虫『どろろ』より~

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新浄瑠璃 百鬼丸~手塚治虫『どろろ』より~

劇団扉座

じっとしていられなくてつい劇場に駆けつけてしまうやうな感じを久しぶり味わった。
再々演ながらキャストも大きく変わり、より力強く心を揺さぶる作品となっていた。

月がとっても睨むから

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月がとっても睨むから

Mrs.fictions

少年に対する性的犯罪というデリケートな題材を、この団体らしい軽やかさと誠実さで描き出し、罪を償うこと、赦すことあるいは赦さないことについての物語に昇華させて魅力的だった。

しだれ咲き サマーストーム

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しだれ咲き サマーストーム

あやめ十八番

江戸風俗が現代まで続く架空の日本で、落語家の跡目争いから始まる色と欲との物語。
趣向が盛りだくさんで、舞台の面白さの大盤振る舞い、という印象だった。

喫茶ティファニー

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喫茶ティファニー

ホエイ

懐かしい雰囲気の喫茶店の店内で繰り広げられるささやかな物語は、いくつもの重い課題を我々に突きつける。
同時に、それじゃあ普通って何?日本人って何?そんなことを当たり前に考えさせる作劇が見事だった。
しかも、劇中の人々の佇まいや感情の動きの自然さ会話の切実さを丁重に描くことで、中心に据えた題材に留まらず、多くの人が共感しうる普遍性を持つ作品となった。

アリはフリスクを食べない

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アリはフリスクを食べない

やしゃご

この人の創る舞台は、なぜこんなにも切実なのだろう。「リアル」などという言葉はいまさら使いたくないけれど、でもその言葉がこれほどピッタリくる芝居を私は他に知らない。

知的障害のある兄と、その兄の世話をするために司法試験を諦めた弟の暮らすアパート。

弟の婚約者、兄弟がアルバイトしている工場の社長や同僚。兄弟の幼馴染やその他彼らの周囲の人々。登場人物それぞれの言葉や行動にウソがない。いや、そんな簡単な言葉では伝えきれない不思議な真実味がある。

ままならないこの世界で生きる人々の息づかいが聞こえる。そういう時間だった。

貧乏が顔に出る。

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貧乏が顔に出る。

MCR

MCRの作品はどうしてこんなに刺さるんだろう。
ロクでもない奴らばかり出てくるのに他人事とは思えなくて、自分の弱いところにヤスリでもかけられたようにヒリヒリする。そのくせそいつらが馬鹿みたいに愛おしい。

特にあの役を書いて自分で演じる櫻井さんなんて、ズルいにもほどがある。

オペラ『遠野物語』

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オペラ『遠野物語』

オペラシアターこんにゃく座

『遠野物語』を記した柳田國男と語り部としての佐々木、そして2人を引き合わせた水野の関係を軸に、佐々木や祖母の眼に映るこの世とあの世が当たり前に重なる景色と、ままならない現実に流される佐々木らの姿を抒情豊かに描く。

遠野を再び訪れた水野と佐々木の会話に滲むそれぞれの孤独が胸に残った。

『獅子の見た夢~戦禍に生きた演劇人たち』

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『獅子の見た夢~戦禍に生きた演劇人たち』

劇団東演

昭和19年から20年にかけて三好十郎の『獅子』を上演しようとする苦楽座=桜隊の苦闘と悲劇を描く。重い題材を誠実に取り上げ現代への警鐘を鳴らす。個性豊かな登場人物と劇中劇の生かし方が見事。

夜曲

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夜曲

アカズノマ

横内謙介さんが約30年前にお書きになった戯曲を七味まゆ味さんが演出。主人公のツトムを石塚朱莉さんが演じる。

放火魔の少年と奇妙な少女が焼け跡で出逢ったいにしえの物語。ドラマチックな中に痛みもあれば毒もある。観ているうちにツトムも観客も傍観者ではいられなくなる。

少女都市からの呼び声

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少女都市からの呼び声

流山児★事務所

アングラ感満載の、奇妙で猥雑で詩的で切ない物語。

手術中の男の腹から見つかったのは、生まれなかった少女の黒髪。眠りの中で男は少女の生きる街へと旅立つ……。

田口を演じた井村さんの透明感のある雰囲気が虚構と現実を行き来する役柄によく似合った。雪子役の山丸さんはあどけなさの中に奔放さと脆さを感じさせる。フランケ役の伊藤さんの存在感、有沢役の山下さんの誠実な印象、他のキャストもそれぞれに個性的で魅力的だった。

総評

ここで10本選ぶにあたっては、いろいろと迷った末に評価というより自分の好みを優先させた。

2019年は138本の芝居を観た。時間的な制約や体力・懐具合もろもろを鑑み、ここ数年少しずつ観劇数を減らしてはいるものの、観たい芝居がたくさんあってそう一気には減らせそうもない。

2020年はどれくらい芝居を観に行けるだろう。よい出会いがたくさんありますように。

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