ボム木偶の観たい!クチコミ一覧

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あゆみ TOUR

あゆみ TOUR

ままごと

横浜赤レンガ倉庫1号館(神奈川県)

2011/12/07 (水) ~ 2011/12/09 (金)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

あゆみ、反復。かつ連続
 柴幸男の演劇をみたのは、こまばアゴラの「あゆみ(長編版)」が最初。ひとりの人を、ひとりがずっと演じるというような、演劇の暗黙のルールを軽やかに乗り越えてしまう手法に、目の前がぱっと晴れたような気がした。ちょっと長くてくどい、とも感じたけれど、その明るさと軽やかさ、若さ、そして物語にこめられた、ほんの幽かな重さ、それらの要素の比重は、いま(といっても三年前だけど)を生きる僕らが物語に求める理想のバランスなのかもしれない、とも思った。

 よくできている、と思った。でも、当時の僕は同時に、この演劇を、こわい、と思った。

 いちど見たら忘れない、「あゆみ」の鮮やかな演劇形式は、目に映る通りの自然空間を描かない。かわりに、いま僕らの感じている体感世界を、視覚的にデザインされた仮想空間として一から構築しつづける。抽象的な手法で上演される演劇なのである。

 またこの演劇は、ごく当たり前の、ひとりの人間の人生、といったものを扱う。ちょっとしたことで苦しんだり、喜んだり。きっと自分もこういう人生を過ごすんだろうな。そう思わせるのは、描かれるのが、一般化された、具体的というより、記号っぽさを残す抽象的な人間像、人生像だからだ。

 つまり「あゆみ」は、抽象的な演劇形式によって、これも抽象的な、おおきく一般化された、漠然とした人生のひな形を、洗練されたデザインとして見せる演劇、と言える。

 デザイン化された抽象的な枠組みは、それが現実をそのまま映さないがために、そこに描かれるものを普遍化する。はじめから記号っぽさを持たされた、抽象的にデザインされた人生のひな形が、演劇の抽象的な枠組みによって、よりいっそう強く、普遍化させられることになる。普遍化が強まれば強まるほどに、描かれた以外の人生が、存在しないかのように映るようになる。実際には、そんなことはないにもかかわらず。

 だから僕は、この演劇を、よくできているからこそ、こわい、と感じた。描かれなかった、演劇の外側を、この劇は見えにくくする、そう思った。「あゆみ」の外にも人はいるのだ。でもこの劇は、彼らの居場所を奪いかねない、そう思った。

 そんな「あゆみ」が、新作として上演される。色々なことがあった。三年前とは違う世界の風景を通過して、「あゆみ」がどう生まれ変わったのか。僕は期待している。だって、「あゆみ」を、レパートリーとして繰り返し上演して深めていくと決めた柴幸男は、もう一時期のように、新奇の演劇形式を探すことに血道をあげるのをやめて、物語を深めていくと決めたということなのだろうから。そしてそれは、小さな小さな世界のなかに、みんなの居場所をみつけようとする、僕が大好きな柴作品「反復かつ連続」と同じ作り方なのだから。

 みんなの居場所や、居場所をみつけようとする想いの、新しいかたち。もしかしたら今度の「あゆみ」には、そういうなにかが見つけられるかもしれない。そんなことを思いながら、新しい気持ちで見にいきます。

寝台特急”君のいるところ”号

寝台特急”君のいるところ”号

中野成樹+フランケンズ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪♪

苦しみのなか、「今ここ」にある "僕" として
 20世紀アメリカの劇作家、ソーントン・ワイルダーの一幕劇(なんだか近頃こればっかで嬉しいな)” Pullman Car Hiawatha” の「誤意訳」なのでしょう。例によって、アメリカ本国でも『わが町』以外はほとんど上演されないので、とってもとっても楽しみ。どうでもいいけど、大学で、散々読まされて、レポートいくつも書かされた、思い出深い作品です。

 中野成樹の「代表作」とあるけれど、僕は観るのははじめてで、気になるところがちょっとある。ワイルダーは、本人も「自分は宗教的な作家」と言うだけあって、宗教の匂いがぷんぷん。本作にも、唐突に、天使が登場したりする。これをどうするのか。

 ワイルダーの作品は、物語がなくても、その背景に宗教(特定の宗教じゃあなくて、どちらかというと、哲学的な「愛」みたいな大きなもの)という、どうしようもなく大きな物語にがっちり結びついていて、大きな「外」へとつながっているかんじが魅力。中野が「日本のワイルダー」と呼ぶ柴幸男は、ワイルダーの宗教部分を全部切り捨てちゃって、代わりに「科学」みたいな、日本人にもなじみのある物語(というか、システム)と入れ替えちゃったけど、「科学」は宗教とは逆に、世界を切り分ける思想。ルールを断言する思想。だから、断片のよせあつめみたいになって、外へとつながらない。どこか排他的に、僕には映って不満なのです。

 それから、ワイルダーの作品には、生きていることに、どうしようもなく苦しむ人が、必ず登場する。それこそ、自殺したくてしょうがない、でもできない人、とか、狂気の中に苦しむ人、とか。それを、どうするのか。これをどう描くのか。目をつぶるのか。それは僕ら観る側の課題でもある。

 ワイルダーの別作品のなかには、こんな言葉が出てくる。天使が、苦しむ人にかける言葉。

 「お前の苦しみが取り除かれてしまったら、お前の力は一体どこへ行ってしまうというのですか? 他でもない、お前の自責の念こそが、お前の低く震える声を、人々の心に届くものにしているのです。天使などというものには、卑しく失敗ばかりしている地上の子供らを導くことなどできません。人生の車輪の上で、壊れてしまった一人の人間にならばできることが、天使にはできないのです。ただ傷ついた闘士のみが、愛の奉仕に参加できるのです」

 苦しむ人には、苦しむからこそ、失敗だらけの人類のなかに役割がある。僕は、この言葉が大好き。こういう愛を、僕は、観たい。でも、新しい、日本の今を見せてくれるなら、それも嬉しい。ワイルダーには、それだけの可能性があるし、きっと中野成樹の誤意訳にも、それだけの可能性があると、そう思って、今からじっくり待ってます。

ちょっとした夢のはなし〈演劇と映画〉

ちょっとした夢のはなし〈演劇と映画〉

中野成樹+フランケンズ

STスポット(神奈川県)

2008/09/18 (木) ~ 2008/09/21 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪

横浜へは、自分を想い出しにいこう
ソーントン・ワイルダーは、ピューリッツァ賞を獲ったこともある、アメリカの劇作家。20世紀前半に、地味に活躍した。『わが町』という劇作が代表作だけれど、彼の初期の一幕劇の数々は、本当に面白い! 地味すぎて、本国アメリカでも、ほとんど上演されないので、舞台でみることができるのが嬉しい!

ワイルダーのキャッチコピーは、「第四の壁を壊せ!」。つまり、舞台と客席の間にある壁を打ち壊して、観客に、自分の記憶を「想起」(プラトン大好きの彼は、このプラトン用語をよく使う)させることを目指すもの。だから、観客は、舞台上で演じられる、日常の些細な出来事を観ながら、そこに自分の姿をみせられる。そのために、ワイルダーは、結構いろんな、実験的な仕掛けを使う。当時は、実験的すぎて、劇場やスタッフと、相当もめたほど。

それにしても "The Happy Journey to Trenton and Camden"は、ワイルダーの一幕劇の中でも、地味さにかけては抜群。地味すぎて、細かい話は覚えてないけど、誤意訳の余地のたっぷりある作品。これをどう料理するのか。どうやら、既に何度かやったこともあるようなので、何か掴むところもあるのだろう。横浜は遠いけど、楽しみ。

私生活

私生活

東宝

シアタークリエ(東京都)

2008/10/03 (金) ~ 2008/10/31 (金)公演終了

期待度♪♪♪♪

笑うのか。はっとさせられるのか。
ノエル・カワードは、イギリスを代表する劇作家。オスカー・ワイルドの系譜につらなる、ウェルメイド・プレイを多く書いた。自作は、ほぼ自身で主演し、共演者たちも、幼なじみの俳優たちを選んだ。

「私生活」は、1930年に発表された、風習喜劇。ウェルメイドな、あり得ない状況が、洗練され尽くした言葉によって、ごくごく自然に構築されて、気づけば、それが当たり前の世界と錯覚している自分に気づく。

僕は、大学の授業で、これを散々読んだのだけど、読んでいるだけで、ホントに楽しかった。今回は、既成の解釈の殻を破る、シェイクスピアの新訳に勢力的に取り組んでいる、松岡和子さんの訳というわけで、それだけで、どんな日本語になるのか、とても楽しみ。

カワード自身、70年代までの2度の再演に際して、時代に合った改訂をほどこしているので、松岡さんは、どういじるのか。それとも、原型のままでいくのか。

役者も、意外! 橋本じゅんさんの演じる、古典的な男性観にとらわれた医者ビクターは、初演時は、なんとローレンス・オリビエ! 全然イメージと違う! 軽薄そのものといった感じの主役・エリオットが、変幻自在の内野聖陽というのも、とても楽しみ。人生の酸いも甘いも知り尽くした感のあるアマンダが、寺島しのぶだというのは納得。一方、まだ二十歳そこそこで、世の中を全然わかっていない小娘として描かれるシビルは、中嶋朋子でいいの?

非常に台詞が多く、対話の中で、心情がころころ入れ変わるこの作品は、役者にとってはとっても大変。演出次第で、雰囲気もがらっとかわる。果たしてどんな演出になるのか、今からとても楽しみ。シアター・クリエって、行ったこと無いんだけど、それだけ、ちょっと、不安だけれど。

やねまでとんだ

やねまでとんだ

海辺のマンション三階建て

早稲田大学学生会館(東京都)

2008/08/01 (金) ~ 2008/08/03 (日)公演終了

期待度♪♪♪

サバイバルな早稲田にあって
早稲田に掃いて捨てるほど溢れる劇団の多くは、良くも悪くもプロ根性に溢れていて、とにかく、なりふり構わず、他人を押しのけても、自分たちを売り込もうと、必死だ。それは、今の厳しい世の中を、必死で生き抜こうとする意志でもあるのだろうけれど、そういう、世の中との距離が離れていない態度は、世界を切り取る演劇の立場として、危ういものを含んでいると思う。

そんな中、このチラシは、とっても謙虚に、そして綺麗に、構内の掲示板に貼ってあった。チラシ自体は一種類なんだけれど、その、掲示の仕方に、工夫があるのだった。

僕が剥がしてきたのは、A4サイズの、トレーシングペーパーみたいな半透明の紙に、テープでとめてあるものだったけれど、学内を歩いていると、他にも、掲示の仕方に色々なバージョンがあって、なんだか、楽しかった。どれをもらおうか、少し、悩むほどだった。

あらすじを読む限り、チラシの掲示方法と同じく、なんだか距離感のあいまいな、純然たるファンタジーのようだ。現代にあって、ファンタジーを描くことは、少しリスキーだと思う。自己責任のサバイバル空間は、ファンタジーだけでは、生き残れない。かわいいチラシたちも、ガムテープで無粋にベタベタ貼られた、大量の、他劇団のチラシに覆われてしまっていた。

でも、ファンタジーを、というか、現実と距離を取る想像力を、完全に放棄した感のある、早稲田の多くの劇団よりも、僕は、ゆとりを感じる、こちらを、観てみたいな、と、思った。それが、モラトリアムなのか、サバイバルへの処方箋なのか。楽しみにしています。

三月の5日間

三月の5日間

岡崎藝術座

お江戸上野広小路亭(東京都)

2008/08/03 (日) ~ 2008/08/05 (火)公演終了

期待度♪♪

怖いけど、研究発表? みてみたい
三月の5日間、チェルフィッチュの演出と、切り離して考えたことがなくて、だから、チラシを見て、まず、他の劇団がやるんだ、と、びっくりした。しかも、なんだか、描いてあるのが、ガチガチに力が入った人の絵で、全然イメージと違うので、びっくりした。

素人考えだけど、ものすごく難しい戯曲だと思うので、失敗の可能性も大なんじゃないか、と思う。でも、HPの稽古場ブログをみたら、みなさんすごく、やっぱり戯曲に悩んでいるみたいで、なんだか、その結果を観てみたくなった。

新百合の郊外と、上野の寄席でやるという、場所の選択は、面白いと思うけど、それだけで、なんか、油断しちゃったりしてないか、とか、やっぱり、どうしても、オリジナルが衝撃的なだけに、観る僕の側に、保守的なものが生まれてしまって、怖いけど、やっぱり、ブログ、見てしまったし、とりあえず、上野のほう、チケットを買いました。新百合も気になるので、予定がつけば行ってみたいけど……。

幸せ最高ありがとうマジで!

幸せ最高ありがとうマジで!

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2008/10/21 (火) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

期待度♪♪♪♪

踊らされたい
誰でも作れるような、審査の甘いパルコのカードすら作れなかったとき、世の中に見抜かれたような気がして、パルコ死ねって思った……なんて書いてた本谷有希子が、とうとうパルコプロデュース。

相変わらず、人生が劇場化している本谷さん。観るっていうより、本谷劇場に参加したい、という気がする。ああ、すっかり踊らされてるけど。

夏の夜の夢

夏の夜の夢

ケンブリッジ大学ペンブルックプレイヤーズ

大東文化会館(東京都)

2008/10/01 (水) ~ 2008/10/01 (水)公演終了

期待度♪♪♪♪

怖いけど
ああ、観たいなぁ。ケンブリッジの演劇って、本場中の本場だもの。2007年の『ロミオとジュリエット』の映像も、とてもいい感じだし。「字幕なしの英語上演」が、怖いな。

でも、何年か前にスタンフォード大学の学生演劇を観て、ものすごく難しい話なのに、英語も半分くらいしかわかんなかったのに、それでも、ものすごく面白くて、途中から日本語で観てるような気になったということがあった。

演劇の面白さは、言葉を超えることがあると信じて、いいのかな、と、それ以来、思う。

『夏の夜の夢』は、本当に面白いと思うし、演劇の本場の学生のパワーを感じてみたいと思うし、怖いけど、一歩、踏み出してみようかな。

人形の家

人形の家

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2008/09/05 (金) ~ 2008/09/30 (火)公演終了

期待度♪♪♪♪

イプセンさん
すごく有名だし、演劇史にかならず出てくるイプセンさんの代表作。ここまで名前が重みを持ってると、なんだか怖くて、観たことも、読んだこともないけれど、これを機会に観てみたいかも。キャストも豪華だし。

「斬新なアプローチ」というのが気になるので、やっぱり本を読んで、予習をしておきたいな。なにはともあれ、チケットが、取れたらだけど……。

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