All My Sons
serial number(風琴工房改め)
シアタートラム(東京都)
2020/10/01 (木) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/10/03 (土) 19:00
演劇の魅力に溢れた舞台だった。観るべし!
通常『みんな我が子』という題名で上演される、アーサー・ミラーの1947年の戯曲で、私も2011年の新国立劇場での上演を観た。主宰の詩森は、本作を上演するにあたって新訳を試み、脚本・演出を担当するのだが、このチャレンジングな姿勢が舞台を作る原動力になっていたように思う。2011年に出演した田島亮が同じ役で出演。
物語は第2次世界大戦直後のアメリカ地方都市で飛行機の部品を作る工場を経営するケラー家を舞台に展開される。不良品を空軍に納入し21人の若者を事故死させたとの罪を問われるものの何とか無罪となった父のジョーを軸に、長男クリス、母ケイトらの家族と、3年前に行方不明となった次男の元恋人でクリスとの結婚を意識するアン・ディーバーとその兄、そして、ケラー家を取り巻く隣人たちを描く。徐々に事情が説明されていき、さらに、不良品納入の経緯や次男の死の謎が徐々に明らかにされていく戯曲の展開が見事である。2011年の上演を観たときよりも分かりやすい舞台になっていたのだが、それは「父と息子の葛藤」という文脈で語られることが多い本作に、母ケイトの視点を加えて再解釈したことによると思う。
その意味で、ケイトに神野三鈴を置いたことの意味は大きいし、叩き上げの父親をしっかりと演じた大谷亮介の存在感も重要である。この2人を含む役者陣の確実な演技と、演出の力量が感じられた。
なぜ今これを、という思いもなくはないが、そんなものを圧倒する素晴らしい舞台だった。トリプルコールもさにあらん、と思うし、私も基本的にはしないスタンディング・オベーションをしてしまった。
いきしたい
五反田団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/09/25 (金) ~ 2020/10/05 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/02 (金) 19:30
面白い作品だった。
引っ越しの準備をしている様子の男女。どうも別れるみたいだが、燃えるゴミ/燃えないゴミの分別の話になると、女が男の死体を引っ張って来て…、というあたりから様子がオカシク(?)なり、不条理な会話劇が展開される。全体で60分強の芝居は、徐々に変な方向に向かい、緊張感を持って観ていられるし、終局もそれなりに納得できる。後味は今一つ良くないけど…(^_^;)。
あなたの目
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2020/09/22 (火) ~ 2020/10/01 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/26 (土) 19:00
面白い舞台だった。
60年代のロンドンを舞台に、倦怠期に入って擦れ違いの多くなった夫婦を神のような存在の私立探偵が救う、というようなストーリーだが、探偵の存在感が強烈で面白く見せてもらった。原題が "Public Eye" というのだが、"Private Eye" には「私立探偵」という意味があり、その辺にアイデアがありそうだ。60年代の作品ということで、扱われるエピソードには時代を感じさせるものも少なくないが、普遍性のある作品にはなっている。ベテランの役者陣の貫禄と言うか、セリフを言っていないときの存在感も見事だ。
ベイジルタウンの女神
キューブ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2020/09/13 (日) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/22 (火) 12:00
とにかく面白く、ケラのダークな部分がない楽しい舞台だった。
大金持ちの娘として何不自由なく世間知らずで育ったロイド社の社長マーガレット(緒川たまき)は、婚約者で市長に立候補するハットン(山内圭哉)のためもあって、貧民街であるベイジルタウンの再開発のため土地の買収に動く。土地を持つソニック社社長のタチアナ(高田聖子)に交渉するが断わられ、タチアナからの提案で1ヵ月ベイジルタウンで暮らすことを了承する…、という一種のおとぎ話的な展開。ストーリーも面白く、登場人物の描き分けも丁寧で、役者陣も生き生きと演技してる。小野寺修二のステージングや、ケラの特徴でもあるプロジェクション・マッピングも確実に舞台を盛り上げ、3時間半という長さが苦にならない舞台だった。
ゲルニカ
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2020/09/04 (金) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/09/21 (月) 13:30
壮大で悲惨な物語だが、一種の普遍性を感じる部分もある。
ゲルニカは、ピカソの絵でも有名となったスペインのバスク地方の都市で、スペイン内戦の際に無差別爆撃を受けた町である。そのゲルニカの領主の娘としてなに不自由なく育ったサラ(上白石萌歌)の婚礼の日、スペインの内戦が起こり、婚礼は延期され、婚約者は戦いに参加してしまう。一方で、戦場ジャーナリストのクリフ(勝地涼)とレイチェル(早霧せいな)は、スペイン内戦を報道するために、バスクに赴く。そうした軸になる人々や、ゲルニカに住む人々の様々な行動を、群像劇として長田育恵が壮大な物語を綴った。歴史的事実として空爆されたことを知ってる我々は、結末がそうなるのか、を気にして観るしかない2時間50分(休憩20分込み)。緊張感は維持され、歌を交えることで起伏もあるのだが、何となく一本調子に見えてしまうことも事実だ。現代の日本と重ねて見ることはできないが、長田が現代と一定程度繋げようとしていることは理解できる。その意味では秀作と言える。
少しだけ気になったのは、バスク語を話すであろう人々がビルバオと呼んでいること。バスク語ではビルボと発音されるのだが、劇作上の都合で分かりやすい発音を選んだということだろうか。
なお、初めて観たのが小劇場という俳優たち、石村(ザ・スズナリ)・玉置(王子小劇場)・後藤(サンモールスタジオ)がPARCOの舞台に立つのを観るというのは、ある種の感慨がある。
秘密基地
劇団アレン座
王子小劇場(東京都)
2020/09/16 (水) ~ 2020/09/22 (火)公演終了
満足度★★
鑑賞日2020/09/19 (土) 18:00
もっとシリアスなものを予想して行ったが、ファン・イベントのような雰囲気の、王子小劇場では珍しいタイプの作品だと思う。
「秘密基地」というVRゲームに招待された3人が、数々のゲームを乗り越える中で自分の生い立ちを思い出す、というようなイメージか。幼い頃に作った秘密基地を思わせる、という意味のタイトルなのだろう。おそらく脚本がなく、大体の流れを示してエチュードで作られた作品のようで、アドリブも多用され進め方のテンポは良くない。本編135分に加え、カーテンコールでの4人の挨拶で10分というのは、流石に長すぎる。
リピータも含めたファンが多いらしく、どんなことでも笑ってくれる客というのは劇団として嬉しいのだろうか。
なお、本サイトでは出演とされている大河内奏至は宮元英光に代わった。
作品とは関係ないが、開演前の劇場がこれほど騒がしいのは今時珍しいと思った。客席で半数近くの人が普通に喋っているというも見たことがないし、受付スタッフが物販に並ぶ客と普通に話しているというのも、いかがなものか。
星をかすめる風
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/09/12 (土) ~ 2020/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/18 (金) 19:00
予想を超える壮大なミステリーだった。
温泉ドラゴンの座付き作家シライケイタと青年劇場の初コラボは、韓国の詩人・尹東柱の物語だが、その死の謎を解く形でのミステリーになっていて、社会性ある作品が多い青年劇場の作品の中でも独特のテイストを感じさせてくれる。尹が治安維持法違反の罪で投獄された福岡刑務所で獄死した後、「死神」と呼ばれた看守が死ぬ。その犯人の捜索を命じられた若い看守の目を通して、韓国人刑務所の苛酷な生活や、尹の優しさ・詩の力などが綴られる。背景を描きつつ物語を進めていく手法は見事だが、終盤に朝鮮語で語られる詩のシーンが感動的だ。
詩の持つ意味や、囚人に合唱させるというあたりでは、芝居を含めたアートの持つ力を示そうとしているように思えた。
わたしの耳
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2020/09/09 (水) ~ 2020/09/18 (金)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/09/11 (金) 19:00
『わたしの耳』を観た。興味深いけど、ちょっと難しい芝居だった。翻訳劇ならではの問題点もあったかと思う。
ピーター・シェーファー1962年の作品。ロンドンに住む内気な青年ボブ(ウェンツ)はコンサートで隣に座ったドーリーン(趣里)が気に入り家の誘ったものの、どんな対応をしてよいか分からず職場の先輩テッド(岩崎う大)に手伝ってもらうが…という展開。英国留学帰り初舞台のウェンツが内気だが実はプライドの高い青年を好演。テッドやドーリーンとのズレが、イライラさせられるくらいのレベルである。
だが、本作は実は英国の階級制度をテーマにしたものではないかと思える。ボブは落ちぶれているが中産階級の出で、ドーリーンとテッドが労働者階級だと考えると、ズレや擦れ違いが理解されやすいように感じ。翻訳劇での「背景への理解」が必要な戯曲に思えた。加えてエンディングは、現代でレコードが衰退した現状を思うと、「耳」の力を前提とできないのではないかとも感じた。
客入れの曲は60年代のイギリスで聞かれていただろう曲を集めて雰囲気を作るのに役立っていたし、細かいところまで気を使った好演だったとは思う。
IN HER TWENTIES 2020
TOKYO PLAYERS COLLECTION
シアター風姿花伝(東京都)
2020/09/02 (水) ~ 2020/09/07 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/06 (日)
いい芝居を観せてもらったという思いと同時に、懐かしさもある作品だった。
2011年に初演され、2013年に再演された戯曲を、再々演する。20歳の誕生日の翌日から30歳の誕生日の前日(つまり29歳最後の日)までの10年を、1歳毎に一人の(しかもほぼその年齢の)女優が演じるという興味深い戯曲。初演も再演も観たが、その都度違ったテイストを感じさせてくれる。物語は、出会いと分かれ、成功と挫折という、ごくありきたりものだが、10人への割り振りと、セリフの巧妙さが活きる。戯曲も書き換えているのだろうけれど、演じる女優でテイストが変わるということを、つくづく思い知らされる。上野の女優選球眼(^_^;)は私のテイストにピッタリ合っていると以前から思っていたが、今回も見事にヒットし、こんな話だったなぁ、という懐かしさも加わって、幸せな85分を過ごした(^_^)v。
初演で20歳の役を演じた榊奈津美が29歳になったら再演したい、という希望から実った企画だというが、そういう思い入れを女優に持たせるというのも、戯曲の力・演劇の力だと思う。
なお、2011年の初演の配役は
20歳(榊奈津美)・21歳(八幡みゆき)・22歳(井上千裕)・23歳(中村梨那)・24歳(梅舟惟永)・25歳(南波早)・26歳(吉川莉早)・27歳(甘粕阿紗子)・28歳(小鶴璃奈)・29歳(冬月ちき)
だった(記録がデジタルに保管されていた)。演劇を続けている人もいるが、演劇を離れた人もいて……、時の流れを誰か知る。
ひとよ
KAKUTA
本多劇場(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/04 (金) 19:00
いい芝居を観せてもらった。余裕のある人は観るべし!
2011年にトラムで初演、2015年にザ・スズナリで再演した戯曲を、昨年、映画化されたことをきっかけにしたのか、再々演した。初演も再演も観ているけど、映画は観てない。
田舎のタクシー会社を舞台に、超DVな夫を、長男・長女・次男という子どもたちを救うためにも、殺す決断をした母親が、15年ぶりに帰って来る。自分が夫を殺したことで全てうまくいくと信じた母親と、殺人者の母親を持ったことで全てがくるった子どもたちとの落差や、周囲の人々の善意と世間の悪意やらの擦れ違いをも巧妙に描く。KAKUTAにしてはややダークな作品だが、人間を信じる終盤への展開は緊張感を持って観ていられる。
母親役が岡まゆみから渡辺えりに変わったが、それでテイストは変化するものの、良い舞台としてしっかり成立してる。初演からまいど豊が演じる、過去を持ってるらしい新人ドライバーがいい。複雑ながら気持ちよく帰路に付ける作品だった。
星の数ほど星に願いを
プラグマックス&エンタテインメント/S・D・P/サンライズプロモーション東京
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/08/27 (木) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/01 (火) 19:00
バカさ加減がたまらん芝居だった(誉めています!)。
演劇弁当・猫ニャーの時代から観てるブルー&スカイの作・演出で、業績の悪化した町工場を救おうとする銀行員の話、と書けば物語があるように思えるが、登場人物にマトモな人がいなくて、みんな何か壊れてる。町工場で作っているのが「願いが叶う神秘の石」というのもマトモじゃないし、どんどんズッコケていく展開には、爆笑でなく苦笑の連続である。役者陣も、その世界観をしっかりと演じてて、特に、おそらく舞台では初めて観る内田理央がメインの銀行員なのだけれど、フツーにしっかり演じてて楽しめた。終盤になって、これはTVドラマ「半沢直樹」のパロディという要素もあるんじゃないかと思ったりして、楽しめる110分だった。
BLACK OUT
東京夜光
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2020/08/21 (金) ~ 2020/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/08/30 (日) 14:00
面白かった。コロナ禍で公演に苦労する演劇人の様子を、演出助手の立場から描く。作・演出の川名は、自身も職業的演出助手をやっているそうで、本公演に向けての実話ではないかと思わせる作りが本当に面白い。
とあるプロデュース公演で演出助手を勤める真野は、学生時代から自身の劇団で作・演出をやっているが目が出ない。担当する公演は、コロナが蔓延し始めた2月末から稽古を始め4月の公演を目指す。だが、作・演出の鬼木と座長で人気者の日向との意見が合わず、ヒロイン役は初舞台の若いアイドルということで、不穏な雰囲気。さまざまな葛藤の中で、何とか舞台を作ろうとする役者・スタッフだが…、という物語。多少は小劇場系劇団の内実も理解できる人間にとっては、いかにもありそうなエピソードが続き、興味深く最後まで観ることができる緊張感があるのは見事である。役者陣も、現実と間違えそうな話題を、いかにも、に演じるあたり確実に役を自分のものにしている。
敢えて言えば、本演出助手の中途半端な立場を描きたいのか、コロナ禍での演劇のあり方を描きたいのか、が今一つ明確でないことか。照明と音響とか役割が被る出演者の描き分けも若干の不満は残る。
だが、本当に面白く見せてもらった2時間20分(休憩10分込み)だった。
Crime-2nd-
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2020/08/26 (水) ~ 2020/08/31 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/08/27 (木) 19:30
興味深い舞台だった。
サンモールスタジオがプロデュースする、3つのユニットが現実の犯罪を題材にした作品を上演するオムニバス公演の第2弾。第1弾も観たが、企画そのものが面白い。
第1弾にも参加した singing dog が扱うのは、2007年の闇サイト殺人事件。ある意味で救いのない事件の犯人3人にルポライター女性(石井舞)が話を聞くという形で物語が再現される。互いに、主犯はアイツだ、と主張し合う「薮の中」状態を描くと同時に、ダイナミックな演出でインパクトある作品に仕上がった。役者陣がベテランが多く、芝居のクオリティが高い。
こちらも第1弾に参加した The Stone Age ブライアント が扱うのは中野富士見中のいわゆる「葬式ごっこ」自殺事件。これは当時、個人的に興味を持って情報を集めていたので、世の中からはこういう風に見えるのか、という印象の作品。
ISAWO BOOK STORE は名古屋保険金殺人事件を扱うが、殺人犯に面会に来る被害者遺族の物語。同席する刑務官をストーリーテラーにしたことによって、2人の会話が通常と異なることを際立たせる演出になっている。
いずれも、犯罪を犯す人間の怖さを描いて優れた作品になっていた。
女々しき力プロジェクト〜序章『消えなさいローラ』
オフィス3〇〇
本多劇場(東京都)
2020/08/21 (金) ~ 2020/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/08/22 (土) 18:00
渡辺えりが別役に挑む、恐らく初めて観た試みだが、渡辺らしさ満載の作品になっていた。
期待していた「女々しき力プロジェクト」だが、コロナの影響で形を変えるということで、別役作品の挑んだわけだが、渡辺らしい潤色や、歌を入れるなどして渡辺カラーがいっぱいだった。
赤鬼
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2020/07/24 (金) ~ 2020/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/08/14 (金) 19:00
書き忘れていたが、14日に2度目の観劇。Dグループだったが、いい出来だった。
先日観たAグループとは演出も随分と違っていたのだが、構造がしっかりした緻密な脚本なので、あるレベル以上の演者が演じれば一定以上の出来になる、優れた戯曲だと改めて思った。
消え残る
深夜ガタンゴトン
王子スタジオ1(東京都)
2020/08/13 (木) ~ 2020/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★
確か初見の劇団。60分ほどの2人芝居だが、とても面白く、深みもあった作品だった。
高校の演劇部の先輩で、東京に出てきて5年の男(ムトコウヨウ)の部屋に、後輩の女優志望ナナミ(星秀美)がころがりこむ。男はナナミを後輩として扱うが、ナナミがAV女優になるということで…、という展開は、演劇が演劇そのモノを扱う面白さがある。これは往々にして自己弁護型になりがちなのだが、等身大の会話劇を紡ぎ、自己弁護になっていない脚本が巧い。ナナミの名前が売れていくに連れての男のアンビバレンツが描かれていて、マメットの『ライフ・イン・ザ・シアター』の男女版とも言えそう。情けない男を演じたムトコウヨウも頑張り、ナナミを演じた星もサービスショット満載で頑張った。
予定した客が全て揃ったらしく、開演予定の3分前に始まるというのも面白かった。
NO.4 『バクステ!3rd stage.~舞台裏にも「スタッフ」という演劇人がいる。~』
エヌオーフォー No.4
赤坂RED/THEATER(東京都)
2020/07/29 (水) ~ 2020/08/10 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/08/02 (日) 13:00
小野寺ずる出演というので観に行った。いやーーー面白かった。昨年、2作品観たNo.4(エヌオーフォー)というユニットだが、2時間がアッと言う間に過ぎる演劇愛に溢れた舞台だった。観るべし!
「3rd」とあるように、2018年に初演、2019年に再演したものの再々演だが、過去の作品は観てない。とある舞台の劇場入りからの3日間、仕込みの初日を30分、場当たりの2日目で30分、ゲネプロと初日開けの3日目を1時間で、その間のスタッフルームでのさまざまな出来事やあれやこれやを、笑わせながらも時折泣かせ、感動させてくれる作りが巧い。主人公は一応、制作助手役の上坂(納谷健)だが、群像劇としてよくできた脚本である。登場人物それぞれに物語がしっかりあり、終演後も各々のキャラクターを思い出すことができるほどに巧い。役者陣もしっかり演じ、芝居を楽しく面白く感動的なものにしている。
最も感動的だったのは、部外者的な立場の特典映像撮影者の阿久津の発する「観客がいてこその演劇」というセリフ。これはコロナ禍で苦しむ演劇人の言葉でもあるし、先日PARCOで観た「大地」のテーマと同じとも言えそうである。
期待の小野寺ずるは、クールでプロフェッショナルな照明助手を演じ、力量ある所を見せてくれた。
座席は市松模様だが、この半分の座席すら埋まっていないのは残念でならない。
『とおくはちかい (reprise) 』『ここは出口ではない』【京都公演公演中止】
屋根裏ハイツ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/07/23 (木) ~ 2020/08/02 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/07/29 (水) 19:30
書き忘れていたが、『とおくはちかい (reprise) 』を観た。静かな演劇だった。被災したらしい若者を、その友人らしい人が訪ねて、とりとめもない会話を紡ぐ。特に何も起こらないけど、余韻を楽しむ、というのかな。
赤鬼
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2020/07/24 (金) ~ 2020/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/07/25 (土) 14:00
野田秀樹1996年の作品で、何回か本人も他の人も上演されている戯曲だが、本人の演出で16年ぶりの上演である。見事だった。
初演からロンドン版、タイ版も含めて観ているのだが、本公演はタイ版に基き、野田が主催する「道場」に参加した演劇人によるもの。4グループに分けての公演で、今回はAグループによるものだが、戯曲がよくできていると改めて感じさせ、演出もタイ版を彷彿とさせるものだった。役者陣それぞれが巧くアンサンブルを演じ、「あの女」を演じた夏子もステキだったが、その頭の足りない弟の「とんび」を演じた木山廉彬が巧みで、この戯曲はこの役を演じる役者の存在感にかなりの部分を依存しているのではないかと思った。
野獣降臨
ドナルカ・パッカーン
萬劇場(東京都)
2020/07/22 (水) ~ 2020/07/26 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/07/24 (金) 18:00
野田秀樹1982年の岸田戯曲賞受賞作を、3人芝居で上演する試み。懐かしい芝居だった。90分。82年の初演、84年の再演、87年の再々演と上演されて以来、33年ぶりに観たのだが、あぁこうだった、というセリフがいっぱいあった。
初演は、遊眠社にとっては最後の駒場小劇場での公演で、思い出深いものだったのだが、それを潤色して3人で80分の公演というのはチャレンジングだと思って観に行った。セリフは活かしつつも大きく削り、物語の主軸だけは残した潤色は見事なものだが、遊眠社特有のスピード感は残念ながら無かった。もっとも、それは演じる側も予想していなかったのだろうが、場面転換で時間がかかったのが、やや勿体なく感じた。