「女がつらいよ」「パンダが降る日」
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2020/12/02 (水) ~ 2020/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/12/13 (日) 14:00
『女はつらいよ』を観劇。いつもながら刺激的で笑わせて考えさせてくれる芝居だった。
2011年に上演された作品の再演だが、初演は観てない。深夜2:30にサエを訊ねて来たのは恋人のヤスアキだが、血だらけ。どうもヤスアキは殺し屋をやっているらしいのだが、一方でサエは検診で癌で余命半年と宣告されてしまい……、という、ありえないけど、もしかしたらありうる、いや、ヤッパリありえない展開である。サエの同僚やら、弟とその恋人やら、はてはヤスアキの「上司」まで登場させる展開は笑わせてくれるのだが、その中に切ないものを感じさせてくれるのがMCR(櫻井)らしい作りになっている。間の取り方も抜群で、演出の力も光る。堀靖明のハイテンション芝居が活きる。100分弱。
2020
劇団肋骨蜜柑同好会
サンモールスタジオ(東京都)
2020/12/03 (木) ~ 2020/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/12/11 (金) 19:00
架空の都市である田瓶市を舞台にした芝居シリーズの一つ。ディストピアを描いて興味深い作品だが、少し盛り込み過ぎという印象も持つ。
雑誌の記者とカメラマンが取材のため訪ねたのは、演劇サークルから発展して何か社会的活動を行なっている「林檎の会」。そこで展開されるディストピア・ストーリー……という物語で、オーウェルの「1984年」とオウムの事件をベースにしているのは、すぐ分かる。エンディングも1984へのオマージュとなっており、組織の構造はオウムという実在の事件をベースにしている。人間の弱さを全面に出す一方、コロナ禍への対抗という側面もあり、考える部分が多いが、回収されていないエピソードもあり、35分(休憩5分)50分(10分)60分という長丁場も含めて、盛り過ぎの印象は拭えない。登場人物も多く、一人一人の役割の違いは描かれているのだが、覚えるのはかなり大変。力作であるのは確か。
23階の笑い
シス・カンパニー
世田谷パブリックシアター(東京都)
2020/12/05 (土) ~ 2020/12/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/12/06 (日) 13:30
オシャレなコメディだが、終盤が切ない。「マッカーシーの赤狩り」を知らないと、ちょっと観ていて苦しいと思う。
1950年代のテレビ業界で働いた経験を活かしたニール・サイモンの原作を、三谷幸喜が潤色した作品。マックス・プリンス(小手伸也)という人気コメディアンのためにTVショーの脚本を書く放送作家達の様子を、新人ライターのルーカス(瀬戸康史)の目を通して描く。何でも笑いのめす彼らに迫る危機…ということで、マッカーシーの赤狩りが襲う。笑わせる演技が続くが、それが危機への道というあたりは切ない。赤狩りへの対抗を軸に物語は展開されるので、その切実さがどれだけリアリティを持つかがポイントだが、現代の日本ではちょっと難しいのではないかとも思った。
一日だけの恋人
稲村梓プロデュース
サンモールスタジオ(東京都)
2020/11/26 (木) ~ 2020/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/11/28 (土) 17:00
初見のユニット、というより、稲村梓を初めて見た。面白い舞台だった。
長崎の老舗旅館の一人娘で、東京に出て来て銀行で働く女性が、母親の上京に合わせて婚約者がいることにしたくて頼んだ俳優(の卵)と打ち合わせする一夜の物語の二人芝居。設定そのものはよくあるものだし、物語のドタバタ振りを楽しむ作品だが、個々のエピソードは玉石混交という感じで、納得できるものもあるが、そうでないものもあるのだが、稲村・杉山の演技力でしっかり芝居として成立してる。稲村は『売春捜査官』を何度もやっており、そんな雰囲気の部分もあって、いろいろ考えると楽しい。
月曜日の朝、わたしは静かに叫び声をあげた
甲斐ファクトリー
王子小劇場(東京都)
2020/11/25 (水) ~ 2020/11/29 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/26 (木) 19:30
初見の劇団。なんだかなぁ、の芝居だった。
ある日突然、自分の存在を代わりの女に奪われてしまった女性を巡るファンタジー。なぜ、周りの人が代わりの女を自分だと思うのか、というミステリーかと思ったのだが、そこは説明されず、いや全体に説明されないことが多く、ファンタジーなんだなというのがようやく分かる。サブストーリーとして性的マイノリティのさまざまな形態が出てくるのだが、それも理由がよく分からず、関係の団体の人が見たらクレームがくるギリギリの所かと思う話題が結構ある。演技のタイプはやや古い。
エントツ女王と煙たい町
電動夏子安置システム
駅前劇場(東京都)
2020/11/18 (水) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/11/20 (金) 19:30
社会派になったのか #電夏、という印象の芝居だった。
織美町は以前、工業団地を誘致して町を栄えさせ「エントツ女王」と呼ばれる堀江町長が長い間町政を担っていたが、今度は町のシンボルでもある天篝山を世界遺産にと考え、そのためのプロジェクトチームを作る。だが、そのためには工業団地の煙を抑制する条例を通さなければいけない……。そんな状況の中での、町議会議員たちと役場の職員たちの物語を、オンライン会議がフリーズする中での行き違い/勘違いというドタバタ展開で笑わせてくれる。昨年の『ベンジャミンの教室』とよく似た設定の作品だが、議員も職員も自分の興味や利害でしか動かない、というあたりが「社会派」風味に溢れてる。唯一、地元出身でない苗場(小林知未)だけが真当、というあたりが興味深い。
当パンによれば、主宰の竹田の実体験をベースにしたという点でも「社会派」の味がする。劇団員と準劇団員とも呼べる常連を中心にした客演陣で、戯曲を確実に上演する力は20周年に相応しい作品だった。120分。
役者陣が顔に横に線を入れるメークをしていた理由が分からない。それと、役場の職員だけが吊りバンドでパンツを吊っていたのも理由は不明。
完全な密室
やみ・あがりシアター
王子小劇場(東京都)
2020/11/19 (木) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/11/19 (木) 19:30
なんて芝居をやってるんだ(誉めています)!!!!!
6月に素速くコロナに対応する芝居をやった、やみ・あがりシアターだが、本作もコロナを意識した優れた作品だ。主宰の笠浦が密室の自宅で発見される。自殺なのか殺人なのか、刑事2人(東象太朗・てっぺい右利き)や近所の住人(目崎剛)などを含め捜査が進む中、劇団員の加藤は笠浦になりきって捜査に協力するのだが…、という物語。ふんだんに演劇的な要素を入れ、メタ演劇や、空想の登場人物(主に、さんなぎ)が現われる上に、劇団の立ち上げからの笠浦と加藤の関係とか、本当の話なのかどうかが明らかではない部分も現われ、とにかく面白い。謎解きとしてはどうなのか、という疑問もないではないが、こういう時期にこういう芝居をやったところは、笠浦ファンとしてはかなり嬉しい。
夜盲症
柿喰う客
ザ・スズナリ(東京都)
2020/11/13 (金) ~ 2020/11/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/11/16 (月) 15:00
久々に観た柿だが、柿らしい楽しい舞台だった。
本来は5月に予定された女優のみ9人の公演だが、コロナの影響で半年延びたものである。オープニングから、女優本人として出ているのと、役を演じているのとの混在で、演劇的トリックが満載。この時期らしくコロナ対策を考慮しているようでもあり、また脚本を削ったとのことで、どの部分が残り、どの部分が加わったのかを楽しむ興味もある。主に若手の永田と福井を軸に物語は展開されるものの、9人それぞれに見せ場を作るあたりも巧い。役者陣も役割をしっかり演じ分け、見応えある62分だった。
劇団晴天の「曇天短編集」vol.2
2223project
王子小劇場(東京都)
2020/11/06 (金) ~ 2020/11/15 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/14 (土) 19:30
確か初見の劇団。かなりいい芝居をしているのに何かが足りない、そんな物足りなさがある舞台だった。3話の短編と、オープニング,エンディングと場面転換の間の4パートに分かれた1人芝居からなる。
1話『風船割り放題』は三角関係の話。リコの誕生日を祝うため、リコの部屋で瞬が風船を膨らませるなどの準備をしていると、もう一人のカレシの一郎太がやってくる…、という展開。丁寧な会話劇だが、多くの風船を割るという演出は今一つ活きなかった印象である。35分。2話『あなたが窓際にいると私には背中がみえる』は、高校のバスケ部の先輩・上条と後輩・沖が、たまたま同じ会社に就職するが、上条が病気で会社を辞める…。2人の関係を丁寧に描いて、少し希望が見えるエンディングはいい。25分。3話『晴れたよって言われても』は、バンドをやってた5人の内、木村が亡くなり5年目の命日に、同棲していた吉田の部屋へ、他のメンバー花井・仁科・根木が訪れる。木村を忘れられないらしい吉田のため、思い出の品を捨てて踏ん切りを付けようというのだが…。これも丁寧な会話を積み上げ切ないエンディングに向かう。40分。4パートに分かれた一人芝居『換気扇の音量なのかよ』は、中華料理店の2階に住む池之山はテレワークの準備をしているが、中華店の換気扇の音がうるさいので、何とかしようと色々な所に電話をかけるが…。4パートに分かれたことを逆手に取った巧さが見られる。
役者陣の力量もあり、切れ味のいいセリフがかなりあるのに会場が今一つ湧かないのは、何かが足りないのだと思うが、それが何かは良く分からなかった。単に、演出、ということでもないように思う。
シャンドレ
小松台東
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/11/04 (水) ~ 2020/11/15 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/13 (金) 19:30
アゴラ初登場(だと思う)の小松台東だが、何だか後味の良くない芝居だった。
ある朝男が目覚めると、作業服のまま寝ていて、その作業服は血だらけだった。その顛末が時間を遡って描かれ、オープニングと同じ場面が終盤に展開される。田舎町(と思える)にあるスナック「シャンドレ」に集まる男たちの、スナックでの情景と、昼間の姿も含めて描き、しょうもない男たちの止むに止まれぬ行動の数々を丁寧に積み上げる。こういった日常を描くのが得意な小松台東だが、今回は主に3人の役者で演じるということで、1人で何役もやるなど、工夫が見られる。
だが、劇中で演じられる「酔っ払い」の姿が、私が嫌いな酔い方(こういう酔っ払いがいる店には行かない)なので、見ていて嫌になってしまった。加えて、酔っ払いの会話でテンポが悪く、冗長感が否めない。それだけリアルということだとは思う。
初恋2020
日穏-bion-
シアター風姿花伝(東京都)
2020/11/05 (木) ~ 2020/11/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/11/06 (金) 19:30
いつもながらの「いい芝居」を見せてもらった。
2008年に劇団の旗揚げ公演で上演し、2014年に再演した作品で、4話の短篇集の三演。もともとは11人いた役者を4人に絞り、主宰の岩瀬と客演の伊原は全話に登場することになった。
1話「観覧車」は2008年の物語。観覧車の同じゴンドラに、高所恐怖症の女(岩瀬)とヘビースモーカーの男(伊原)が乗り合わせるが…、という展開。笑わせつつも切なく終わる。20分。2話「手紙」は1950年が舞台で、戦争から帰ってきた男(伊原)が水商売の女(中島)のヒモになって一緒に暮らしているところに戦争前に婚約していた女(岩瀬)が訪ねて来るが…。戦争で別れることになった男女の切ない物語だ。20分。3話の「幼なじみ」は2008年を舞台に、兄(服部)と妹2人(岩瀬・中島)とやっている田舎の文具店に、東京に出た幼なじみ(伊原)が久々に訪ねて来る…。幼い頃の恋心が切なく終わる。20分。ここで換気のため休憩が入り、4話「故郷の雪」は1964年という前の東京オリンピックの年に、娼婦宿の女(岩瀬)のところに客の男(伊原)が来たが、別れた恋人との思い出を女に演じさせるという変わった客…。これも別れた恋人との切ない思い出の物語だ。30分。どの話も切ない別れを描いているし、戦争の悲惨さという通奏低音もありそうだで、緩やかに繋がれている辺りは、岩瀬の脚本の巧さを感じた。
大久保貴寛のバイオリン演奏が各話を繋ぐ。
コロス県自殺市呪い村四丁目
U-33project
王子小劇場(東京都)
2020/10/30 (金) ~ 2020/11/03 (火)公演終了
満足度★★
鑑賞日2020/11/01 (日) 19:00
書き忘れていたので、今更だけど書く。なんだか勿体ない芝居だった。
「鈴木さん」が亡くなり、通夜に、恋人・上司・同僚・親友・趣味仲間・友達・ライバルが来るが、個人の遺志でゲームをすることになり…、という奇妙な設定。それぞれの設定の意味が今一つ分からず、演じられている内容も今一つよく分からない。当パンで作者は「過剰を過剰に表現した」と書いていて、確かに過剰と思うものが表現されているが、登場人物達がゲームを続ける動因が分からず、「???」で終わってしまった。
役者陣の力量があることは分かるので、なんだか勿体ないと思ってしまう。
ののじにさすってごらん
やしゃご
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/10/22 (木) ~ 2020/11/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/01 (日) 13:00
面白いけれど、やや冗長にも感じる115分だった。
「説明」に書かれているようなシェアハウスに住む人達と周辺の人々の群像劇。個々の人の持つ問題は丁寧にときほぐされて提示され分かりやすい。だが、ベトナム人の失踪は起きない。失踪までの出来事という設定なのだろうか。やしゃごに名前を変えてからの3作すべて観ているが、焦点が絞られていた1・2作に比べると、本作は絞り込みが不十分に思えて、個々のエピソードが冗長に思える時間帯があるのは確か。外国人技能実習生の問題なのか、コロナ禍の生活の物語なのか、今一つハッキリしていない。それでも一定程度緊張感を持って観ていられるのは、語り口の丁寧さだろうか。セリフのキレもあるだけに、もう少し作り込んでくれれば、という思いを持った。
JACROW#29「闇の将軍」シリーズ第3弾
JACROW
サンモールスタジオ(東京都)
2020/10/22 (木) ~ 2020/11/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/30 (金) 19:30
第3話『常闇…』を観た。2時間15分が長く感じられない舞台だった。
実際の出来事を舞台化する「社会派」と呼ばれるJACROWが、田中角栄を扱った3部作の終幕となる第3部。ロッキード事件による失脚から後の後半生を描く。第1部から4年を掛けただけあって、濃密で丁寧な芝居となっている。立ち上がりは細かい場面転換が続き、暗転がやや冗長に思えるところもあるのだが、それがテンポ良く物語を進め、中盤から興味深く観ていることができた。登場する人物が実在の人ばかりで、私でも知ってるので、何が起こるかは分かっているのだが、それをフィクションとして構成する脚本も見事なら、演じる役者陣も見事だ。第3部で新たな登場人物として加わる、金丸信役の岡本篤と田中真紀子役の川田希がスンナリ役を演じていたのが巧い。
あたらしい朝
うさぎストライプ
アトリエ春風舎(東京都)
2020/10/27 (火) ~ 2020/10/31 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/30 (金) 15:00
気持ちよく観ていられるが、切ない作品である。
ドライブをしている若い夫婦が、ヒッチハイクをしている女を拾って載せてあげるのだが、意気投合する妻と女が会話をする内に、さまざまな旅の記憶が入り交じって…、というような展開。本来は切ない物語なのだろうが、一定程度気持ちよく観られるのは、うさぎストライプの作風とでもいうものが影響しているように思う。所属の小瀧と金澤をサイドに回して、客演を軸に芝居をさせるというのも面白い。エンディングが全てを物語っているような50分弱。
真夏の夜の夢
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2020/10/15 (木) ~ 2020/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/10/24 (土) 19:00
野田らしい言葉遊びに溢れたシェイクスピアの脚本を、ブルガリアのブルカルーテが演出。楽しい舞台だった。
92年に野田がシェイクスピアの戯曲を潤色して演出したものが初演だが、80年以降の野田作品は全て観ている私が唯一見逃していたのが本作である。その意味で、演出は違えど期待して観に行ったのだが、それに違わぬ見事な舞台だった。野田の潤色は、物語の骨格は活かしつつも、舞台を日本の料亭と富士の森に移し、パックだけでなくメフィストも登場させ、劇中劇で不思議の国のアリスをも登場させて、3つの物語を巧く溶き混ぜた、祝祭的な楽しい脚本だった。それをブルカルーテは、映像も巧く使い、役者の肉体を通して見事な舞台にしていた。
軸になる女優2人、鈴木杏は貫禄とも呼べる存在感で、北乃きいの舞台は初めて観たが、鈴木とは違った色をしっかり出していた。今井朋彦と手塚とおるという名優2人のシーンにはゾクゾクした。
痴人の愛 ~IDIOTS~
metro
ザ・スズナリ(東京都)
2020/10/22 (木) ~ 2020/10/27 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/10/23 (金) 19:30
初演も観たが、再演はグレードアップして、見事な舞台だった。
谷崎潤一郎の小説を舞台化したものだが、原作のテキストを活かしつつ巧妙な劇作である。オープニング、痩せた男(影山翔一)が人形劇の舞台を持って登場し、語り手(サヘル・ローズ)の語りで物語は始まる。譲治(若松力)とナオミ(月船さらら)の物語は、最終盤から始まり、人形劇は時間軸に沿って、現実の演技は時間軸を逆上るように構成されている辺りが巧い。ナオミの立場から見た物語、というのも理解できる。初演ではおっかなびっくりに見える演技をしていた月船が、今回は確信を持って演じているように見えたのだが考えすぎだろうか。
世界も三角、土俵も三角/特殊になれなかった者たちへ
マチルダアパルトマン
王子小劇場(東京都)
2020/10/07 (水) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/11 (日) 15:00
短編2話で70分。巧妙に繋がれている面もあり、面白く観せてもらった。
『世界も三角、土俵も三角』は、施設で一緒に育った3人の男女の物語。金に不自由しないらしい亜依(松本みゆき)のアパートに、節子(早船聖)と春太(葛生太雅)が転がり込んで来る。節子は真面目にパン工場でバイトをするが、春太は働く気がないモラトリアム人間。2人は亜依の仕事を訊くが、亜依は「爆弾作り」と答える…。テンポよく暗転して物語を進め、ちょっとありえない話にそれなりのリアリティを持たせ、終盤もありえない展開だけど、説得力を持たせるところが巧い。45分。
『特殊になれなかった者たちへ』は、『世界も…』の脚本を書いた作家が孤独死した部屋の清掃をする特殊清掃員たちの物語。前半が脚本だったというあたりは巧妙に繋がれている。ベテランのクヌギ(久間健裕)とシングルマザーのソカベ(宍泥美)と新人のアヤセ(大垣友)の会話だが、さまざまな展開を経て終盤の事件と解決と少し切ない終わり方に繋がる。25分。
線路沿い獣道
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2020/10/08 (木) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/10 (土) 18:00
セリフには笑わされ、物語には切なく感じさせられる、面白い舞台だった。
ヤクザの父(北ZIMA☆ヒロたか)とホステスの母(真嶋一歌)を持つ小学生のトモ(櫻井智也)は、両親が日常的にシャブをやるような家庭環境。同級生の佐賀(佐賀モトキ)や熊谷(熊谷嶺)にはヤクザの子どもと嫌われるが、三澤(三澤さき)はトモが好きで、そのことを露にする。大人になったらの夢、と訊かれて、親を殺すこと、と答えるトモだが、…、というような展開。セリフのキレで笑わせるが、展開は切ない。愛しているから憎む、というのは、ありそうなテーマで、終わって切なくさせられるのは、櫻井らしい作劇だと思った。
たむらさん
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2020/10/09 (金) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/09 (金) 19:00
不思議だけど面白い舞台だった。初見の作・演出の加藤拓也の才能を見せつけた作品と言える。
オープニング、客電が点いた状態で豊田エリーが現われ舞台上のキッチンで料理を始める。ほどなくして、橋本淳も現われ、「たむらさんです」と言って、自分の生い立ちのようなものを語り始めるが…、という展開。生い立ちの部分は特に何かがあるわけではなく、淡々と語られるが、ある程度の演出で興味深く見せる。30分ほど語ったところで、物語は思いもかけぬ展開を見せ、さらに豊田が加わって、さらなる展開。エンディングは不条理とも言える不思議な終幕だった。よく分からないけど面白い、緊張感を持って観ていられる52分だった。