夏の夜の夢=偽罪
クリム=カルム
王子小劇場(東京都)
2022/01/04 (火) ~ 2022/01/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/01/04 (火) 19:00
本ユニットを観るのは2作品目。面白い。90分。
「かわいい」×「古典」をコンセプトにしているそうだが、上演作品は古典でも現代的な解釈を入れているのが面白い。90分に収められているので全てをやっているわけではないが、シェイクスピアの『夏の夜の夢』の構造は変えず、劇中劇を『ロミオとジュリエット』にして、同時進行的に物語を展開する。オリジナルと覚しきセリフが多いが、現代人の使うようなセリフもあり、その辺の混在は興味深い。以前「小さなエイヨルフ」を観たが、これも古典を現代に活かそうという試みだった。舞台美術をほとんど使っていないが、照明が美術となっていて美しい。役者陣は若いが、一定程度熟練を見せているのはスゴイ。ディミトリアス役の尾野綾美のヴィジュアルが気になる。
赤目
明後日の方向
王子小劇場(東京都)
2021/12/29 (水) ~ 2021/12/31 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/31 (金) 13:00
年の最後にものスゴイモノを観た。面白い。
黒澤世莉の新ユニットの旗揚げ、と言うか、行き先を探すための公演だそうだが、斎藤憐の1967年初演戯曲を黒澤が演出。白戸三平をモデルにしているが、やや遅れてリアルタイムに経験した白戸体験と重ねてみると、非常に興味深い。75分(休10分)80分強が長く感じない。1959年頃の白戸の体験と、作品である「赤目」の劇中劇が同時に進行しつつリンクする1幕に対して、2幕は冒頭45分ほどが劇中劇に費やされるという対照的な展開になっている。「赤目」は小さい頃に読んだことを、2幕が始まって思い出す。力量ある役者陣が丁寧に演じ、終盤5分の展開は一気に見せて見事(ただし白戸本人は、ああいった存在と観られることを嫌がっていたという話もある)。百花亜希の華のある役柄が印象に残る。新聞紙を使った演出も強烈な印象。
「ストロング」
坂井水産
RAFT(東京都)
2021/12/29 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/29 (水) 16:00
面白い企画で、使った脚本も面白かった。60分強。
「稽古初日」と称して、稽古せずに本番(リーディング)を迎えるという面白い企画。同じ脚本をさまざまに組合せを変えて上演する。ゴジラ好きの赤井(家田三成)はマニアの呑み会で出会った中山(豊田可奈子)と出会うが、友人の坂井(浅倉洋介)が訪ねて来ると…、の物語(他にト書きに赤澤涼太)。脚本も巧く起伏ある物語を展開し、特に、言葉の選択が面白い(「17歳です」/「病院行こうか」、とか)。役者の違いで異なる味わいになるんだろうな、と思った。楽しく過ごせた60分強だった。
絢爛とか爛漫とか
劇団俳優難民組合
王子小劇場(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/26 (日) 12:00
何だか勿体ないと言うか残念な公演だが、若さの熱は感じる舞台だった。120分。
飯島早苗が1993年に書いて自転車キンクリートで初演した後、多くのユニットで何回も上演された作品だが、実は私は初めて観る戯曲。昭和初期に文筆で名を上げようとする4人の男の苦悩や葛藤を描いた丁寧な会話劇である。本作も丁寧に会話を積み上げようとしているし、若い役者陣の熱は感じるが、何だか伝わってくるものが足りない気がした。昭和初期とは思えない言葉遣いがあるのが気になっていた。
#31.5『パブリック・リレーションズ』
JACROW
雑遊(東京都)
2021/12/21 (火) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/25 (土) 14:00
2013年に初演した作品をダブルキャストで再演だが、初演は観てない。Aチームを観劇。とても面白い。90分弱。
JACROWの2代路線である、企業モノ(もう一つは、社会事件モノ?)のきっかけになった作品だということだが、とてもよくできている。起業したPR会社の立ち上げシーンから始まり、7か月後、テレビ局に食い込もうとするPR会社の人々とTV局員の群像劇。序盤を除くとワンイシューになったことで短めの戯曲となり、非常に分かりやすい作品になったと思う。役者陣も、劇団員のみのバージョンだったこともあり、確実な演技だった。谷仲はどうしてあんなに一見嫌なヤツができるんだろう。2ヵ月で3本の芝居に出た福田の落差にビックリ。
THE BEE
NODA・MAP
ナレッジシアター(大阪府)
2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/23 (木) 18:30
役者が慣れたせいなのか、スゴイことになっていた。75分。
東京公演の初日を観たが、非常に緻密に演じられる必要がある脚本で、冒頭にアクシデントがあったこともあって、役者にある種のカタサがあったように思えた。それが、初日から50ステージほどを経て、役者が戯曲を自家薬籠中のものとしたのか、余裕がでてきたように思えた。反復・繰り返しを丁寧にこなしながらも遊びがあって(おそらくアドリブではなくて演出)、笑いの場面が多かった。筋が分かりやすく、笑いもありつつ、メタファーも入って、最後は緊張、という、芝居の初心者にも勧められる舞台になっていた。大阪の客は貪欲だということをよく聞くが、よく笑い、しかし、終盤の緊張は味わい、カーテンコール6回という豪華さだった。
初日に観て、どうしてももう1回観たいと思ったのだが東京でチケットを取れず、大阪まで来たが、それだけの甲斐があったと言うもの(^_^)v。
母 My Mother
SORIFA そりふぁ
シアター711(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/22 (水)
いいものを観せてもらった。みょんふぁと鄭義信のタッグで舞踊家・崔承喜の人生を描く。90分。
老境を迎えた崔承喜の娘の所に、日本から崔承喜の物語を聞きに来た人がいて、その人に語る形で一人芝居が展開される。崔承喜という人は知らなかったが、母娘の深刻な物語を笑いを交えた物語にして本当に充実した舞台となっていた。みょんふぁのほか、チャング(太鼓)の演奏で李昌燮が登場し、見事な演奏を聞かせてくれる。力の入る演技を全力で演じる姿は感動的だが、千秋楽までもつか心配になる(きっと大丈夫だと思います…)。
続・五稜郭残党伝〜北辰群盗録
温泉ドラゴン
すみだパークシアター倉(東京都)
2021/12/17 (金) ~ 2021/12/27 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/21 (火) 19:00
骨太の芝居ながらエンタメ要素もあり、面白い舞台だった。120分強。
佐々木譲の小説を原作としたシリーズ第2弾だそうだが、第1弾は観ていなくて小説も読んでいない。五稜郭降伏のシーンから始まり、5年後に残党が共和国建設を謳って活動を始め、政府軍が討伐に向かう軍勢に同じ五稜郭残党を加え、かつての同志が戦う物語。原作の小説があるので筋は決まっているのだろうが、セリフやら演出やらでシライ節が満載で、興味を持って一気に観ることができる。紅一点の土井ケイトは頑張っていると感じさせる。久々の舞台となる浅倉洋介の元気なところが嬉しい。
東京の一日
青年団若手自主企画 宮﨑企画
アトリエ春風舎(東京都)
2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/19 (日) 14:00
独特の感触で「東京の一日」を紡ぐ。不思議な印象のユニット。観て損はない。80分。
同じ空間をいくつかの場所に見立てて、緩やかに繋がった9人の男女が、それぞれの東京の一日を描く会話劇。別の場所にいる人間の動作が関係あるように見える、という演出を得意とするらしく、そう見える瞬間が確かにある。以前観た時は台詞っぽく会話するユニットだなぁと思っていたが、今回はそんなに強調されていない、普通の会話劇だった。
アフタートークでは路上園芸鑑賞家が登壇。芝居と関係ない話も交え、それはそれで面白い。
泥人魚
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2021/12/06 (月) ~ 2021/12/29 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/18 (土) 18:30
唐十郎の2003年作品を金守珍の演出で上演する。アングラ風味いっぱいで面白い。50分(休10分)70分。
諌早湾の干拓のギロチン堤防を題材に、都会の片隅のブリキ店という2003年時点では古臭い場所を舞台に展開される戯曲だが、水槽を出して飛び込んだり、さまざまな人物群が醸し出すアングラテイストが強烈で興味深く観た。役者陣も熱演だが、特に、宮澤りえが少女に見えるのもスゴイし、風間杜夫の貫禄も強烈。
美談殺人
タカハ劇団
駅前劇場(東京都)
2021/12/16 (木) ~ 2021/12/20 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/18 (土) 14:00
タカハ2年ぶりの新作はスケールの大きい話。面白い。130分。
日本人の寿命が50歳を切った近未来。経済の停滞で貧富の差が大きくなるところで、余命宣告も正確になり、死を恐れる富者は死に際して美談を求めるようになる…、というワンアイデアの物語かと思ったが、終盤の展開はスケールの大きなハナシになっていた。しっかりとした伏線もあるのだが、そうなるとは思わなかった、やられた、という感じ。ちょっと大きくなりすぎたとも思うが、観ていて楽しく、しかも、考えさせられる舞台だった。
本作では手話通訳が役を持って芝居に登場するという一寸変わった作品だが、私が観た回は視覚障がい者向けの試みもあって、こういうのが増えるといいなと思う。
サワ氏の仕業・特別編
劇団ジャブジャブサーキット
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/12/16 (木) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/17 (金) 19:00
初見の劇団。余白の多い不思議な作品だった。100分。
古くから活動する岐阜の劇団だが、初めて観る。普通の会話劇に見えるが、いくつかのエピソードの辻褄を合わせるのはかなり大変だと思う。一緒に観た友人によれば、初見で楽しめるのは難しいだろうとのこと。
海王星
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2021/12/06 (月) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/17 (金) 12:00
寺山修司が天井桟敷結成以前に書いた未上演の戯曲が初公演、だそうだが、筋の分かる寺山は初めて、な気がする。70分(休20分)80分強。
猛夫(山田裕貴)は父を難破で亡くすが、父と結婚する予定だった魔子(松雪泰子)と出会い恋に落ちる。ところが父・彌平(ユースケ・サンタマリア)は実は生きていて…、な物語。時間軸も空間軸も飛ぶことがなく、素直に展開されるあたりは寺山っぽくないが、「祝祭」感は寺山らしくもある。音楽劇として構成されているので長くなるのはしょうがないが、物語にヒネリは少ない。
オープニングで、声だけで分かる中尾ミエの歌唱で始まるところに貫禄を感じる。ただし、ここと2幕のオープニングだけというのは勿体ない。そばかす役の清水くるみと那美役の伊原六花に新鮮味を感じるが、役を逆にしてもいいのではないかと思った。
あの部屋が燃えろ
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/16 (木) 19:30
2014年に上演された作品の再演だが、初演は見てない。MCR節満載で、面白悲しい。観るべし。100分。
とある安アパートの1室。隣の住人やらヤクザやらが出入りする部屋で起こるさまざまな出来事。かつて作・演出の櫻井が住んでた部屋がモデルらしいが、それを振り返って描かれる世界は、貧しいながらも元気、だけではなく、貧しいが故の悲しさ、も描いてて、笑わせてもらって寂しい気分にもしてくれる。それでも終演後のカーテンコールで見せた櫻井の笑いにホッとする。
徒花に水やり
千葉雅子×土田英生 舞台製作事業
ザ・スズナリ(東京都)
2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/15 (水) 19:00
手練の業、という言葉を思い出した。面白い。観るべし!。90分。
千葉雅子と土田英生のユニット第2弾。土田が書いて演出する作品だが、ベテランを集めて、とても面白く、いい芝居になっていた。元ヤクザ3次団体組長の子ども3人(千葉・土田・桑原)に腹違いの妹(田中)がいることが分かって、今日は東京から来ることになっている。その妹が恋人も連れて来るが…、な物語。しっかりと伏線を張り、しっかりと回収する展開や、登場人物の造型の妙、そして、それを確実に演じる役者陣、と、充実した舞台だった。5人中4人が作・演出をするというのも面白い。
Dreamtime
melomys
アトリエ春風舎(東京都)
2021/12/09 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/12 (日) 14:00
初見のユニット。不思議な感触の、ある意味で緻密な作品。75分。
地球温暖化で沈みゆく島を旅する女性が、見たもののことや回想を含めて語る物語、…、と言った感触なのだけれど、4人の役者が登場するものの、基本的にモノローグで構成され、時間軸も空間軸もブッ飛ぶので分かりやすくはない。また、舞台下手手前のプロジェクタから上手奥のスクリーンに投影される画像や、音響担当者が出す効果音(と言うか、ノイズ)も、それぞれ一定の役割を持っているわけで、タイミングや強弱の緻密さが目立った。
終演後のアフタートークでは、ブッシュマン研究の文化人類学者が登壇したが、トーク内容は文化人類学の話が中心で、それはそれで面白かった。
Transcendent Express
Cuebicle
上野ストアハウス(東京都)
2021/12/10 (金) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/10 (金) 19:00
旗揚げ公演だそうで、すごくオシャレだが、刺激的で興味深い不思議な感触を持った作品だった。観るべし!90分。
2016年に初演された作品の再演ということだが、初演は観てない。激しい頭痛に悩まされ元カノの幻影を見る男が、婚活夜行寝台(?)に乗って北に向かう。相手が見つかったら降りてよいけど、なルールの中のあれこれに加えて、秋田から乗り込む女が元カノそっくりで…、という、ミステリー風味と心理的興味の混じった作品。終わり30分に展開される種明かし的どんでん返しの連続が面白い。見知った佐野功・ハマカワフミエに加え、他の役者陣も巧み。開演前に役者が舞台上に現われ、鮮やかなムービングで始まる等、お洒落な感触もある。空席があるのが勿体ない。
VILLAINZ
OMEGA CRUE ARTISTS
王子小劇場(東京都)
2021/12/08 (水) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
初見のユニット。SFエンターテインメントで、若さを感じる舞台だった。120分強。
300年後の「日本らしき所」で、原発を再稼働して爆発するが、それに巻き込まれてもなお生き続ける男の謎を追うのが物語のベース。展開に起伏もあり、役者陣は基本的に巧いんだけど、物語の焦点が次々にズレていくので、集中が切れてしまうのが惜しい。300年後でも刀やピストルで戦うのか、というのもツッコミ所だけど、アクション作にするのにしょうがないかな。ところどころに光るテキストがあるのだけれど、大声を出す台詞回しと活舌がちょっとな役者がいるのがワタシ的にはツライ。
莫逆の犬
Nana Produce
新宿シアタートップス(東京都)
2021/12/08 (水) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/08 (水) 19:00
ONEOR8の田村孝裕の脚本を寺十吾が演出する。重いけど面白い。120分弱。
2008年にONEOR8で上演され、2019年に神保町花月で上演するためにリライトされた脚本で今回の上演。初演は観ていないが、神保町花月での再演は観ている(そのときの感想はhttps://stage.corich.jp/watch/365387/stage_comments)。犯罪を犯したらしい(後に事情は分かる)男を匿うため父親がマンションを与え、恋人が一緒に住みたいと言い一緒に暮し始めるが…、という、その後10年に渉る物語。男は捕まらないために一歩も家を出ることができず、そのために恋人がいろいろと苦労するのだが、冷静に考えれば、そんなことをしても、と誰もが思う展開で、イライラさせられる。そのイライラこそが田村が狙ったものだと思える舞台になっていた。軸は、男(荒井敦史)・恋人(傳谷英里香)・父親(入江雅人)で、この3人が巧い。特に、TVで観て気になっていた傳谷英里香がしっかりヒロインを演じていた。荒井も、愛する人に捨てられ続ける男を演じて確かなものを感じた。
小劇場系の芝居を観始めた頃は、怒れる若者、みたいなのを演じていた入江が父親かと思うと…(遠い目)。
あーぶくたった、にいたった
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/12/07 (火) ~ 2021/12/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/07 (火) 19:00
別役実の戯曲で、例によって、わからないけど面白い(笑)。100分強。
10分前後の10場で構成され、とある夫婦の話が展開される。