夜の女たち【9月3日~8日公演中止】
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2022/09/03 (土) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/09/09 (金) 14:00
予備知識皆無で観に行ったが、実に興味深い舞台だった。62分(20分休み)78分。
溝口健二監督の1948年の映画をミュージカル化して舞台に載せる。何故ミュージカル?と思ったが、観てみて納得の舞台だった。原作の映画はドキュメンタリーかと思うリアリティだそうで、そのまま舞台化すると深刻に鳴り過ぎるのだと思う。ミュージカルにしたことで、やや冗長感は出るが、歌の力で見せる、みたいなことが成功していると思う。軸になるのは、江口のりこ・前田敦子・伊原六花の3人だが、伊原が最も生き生きしているように見えたことが、伊原が目当てで観に行った者として嬉しい。アンサンブルの女性6人と北村岳子が良い仕事をしている。
『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2022/07/29 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/09/08 (木) 18:00
2度目の観劇。やはりいい。そして深い内容の反戦劇だと改めて気づく。(3分押し)90分(15分休み)60分。
初演も観ていて、再演も2度目なので内容は分かっているのだが、今回は2人が出会うのが「いくさが終わったとき」ということが強く入って来た。ウクライナのことを考えると、銃撃音とか、すごく気になる。
野田の戯曲は言葉が美しいのだが、特に本作ではそれが目立つ。
夜鳴く鳥は朝に泣く
吉祥寺GORILLA
王子小劇場(東京都)
2022/09/07 (水) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/09/08 (木) 14:00
2度目の劇団だが若さを感じる舞台なりの面白さを感じた。102分。
デリヘル嬢の愛奈と、同棲していた売れかけている芸人の達也の両方が、事故で死ぬ。愛奈の友人の葉月と達也の兄で警官の達彦は、それぞれに事件ではないかと疑い調査に入るが…、の物語。多くの関係者それぞれの状況と回想シーンとが入り交じり、分かりやすくはないが、興味深い物語が展開される。作・演出の平井が学生だったときの戯曲に手を加えたそうで、やや無理な展開にも、それをもブッ飛ばして上演する力技にも、「若さ」を感じる。好感が持てる舞台だった。デリヘル店の店長を演じた村松ママンスキーの佇まいが何とも言えない味を出す。
老獣のおたけび
くちびるの会
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/09/03 (土) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/09/07 (水) 19:00
名前は以前から知っていたが実は初めて観る。面白い視点だが、中途半端な感じが惜しい。(4分押し)93分。
売れない脚本家の男が女性と同棲しているが、兄から父の様子がおかしいので見に行け、と言われて行くと父は象になっていた、というところから起こる、父の持つ土地を借りて農業を営む父・息子を巻き込んでのあれこれ。象、というのは、老境に達した父の、図体が大きくて言うことを聞かない存在、ということのメタファーのようだ。兄の、父が象になったことは認めているのに、周囲の人にそれを知られたくない、という行動の論理がどうにも分かりにくくて、加えて、農家の父と息子の関係とか、多過ぎるエピソードが整理できないまま終わった。
加担者
オフィスコットーネ
駅前劇場(東京都)
2022/08/26 (金) ~ 2022/09/05 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/09/04 (日) 14:00
近年流行りのデュレンマットの作品。千秋楽に滑り込んだが面白かった。133分。
6月に『貴婦人の来訪』を興味深く観て、同作家の戯曲を観てみた。オープニング、登場人物全員が1列に並ぶというのは驚いたが、後は1場毎に、主たる登場人物が客席に向かって語りかけ、そこから芝居に入る型式が面白い。物語はリアルなようでいて極めて寓話的で、徐々に嫌な世界観に進む。嫌な世界観、というのがデュレンマットの特徴のようで、それでも嫌な感じにならない作りが怖い。ドクを演じた小須田康人は久々に観たがしっかりと健在、紅一点の月船さららの美しさは眼福。
Show me Shoot me
やみ・あがりシアター
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2022/09/02 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/09/03 (土) 14:00
よく観てる劇団だが、いつもとちょっと違う作風が面白い。122分。
某企業の社宅のベランダで漫才(の練習?)をする夫婦。実はコミュニケーション不器用な2人で、面白いこと言わなきゃ、な気分になってるのだが、隣に大阪から夫婦が引っ越してきて、ナチュラルに面白いこと言える、ところでパニックになる…、という物語。冒頭に漫才・コント風の場面が続き、それを収束させて物語にするという展開が面白い。シュール不条理系リアルコメディだと考える同劇団だが、シュールの方向がいつもとは違う気がして、評価は別れるところか。2組の夫婦を演じた4人がとにかくスゴイんだけど、特に大阪の妻で立て板に水な漫才風トークのさんなぎは見事。久保瑠衣香のキャラクターも捨て難い。
SHINE SHOW!
Aga-risk Entertainment
シアター・アルファ東京(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/31 (水) 19:00
久々に観るアガリスク。面白いのは確か。(10分押し)60分(6分休憩)80分。
高層ビルに入った会社の対抗のど自慢大会の決勝日を迎えて、さまざまな事情を持つ出場者と、その事情を乗り越えさせようとする運営側のあれこれを描くコメディ。前半でそれぞれの役柄を説明し、それらを絡めながら解決する後半は見事で、歌のシーンもあるので客席も盛り上がる。役者の使い方も見せ方も良く知っているあたりは巧いと思う。惜しいと思うのは、展開が読めてしまうこと。ほぼ想像の範囲内で物語が展開されるが、まぁ、でも、コメディだから、ということは言える。もっと惜しいと思うのは、自分達で作った原則を最後に破るところで、この種の不徹底さはアガリスクを観て常に感じてしまう(例えば電夏がやったら(やらんだろうが)、もっと原則を活かしただろうと思う)。軸になる熊谷は見事なコメディエンヌを演じるが、何と言っても中田顕史郎がスゴイ。手の平を(物理的に)返すだけで客席を引き込んでしまう演技は見事としか言いようがない。推しのハマカワはちょっとばかり物足りない。
カレーと村民
ニットキャップシアター
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/08/26 (金) ~ 2022/08/29 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/08/28 (日) 17:00
京都を中心に活動するベテラン劇団だが初見。思ったのとは違ったが面白い。102分。
明治期の大阪吹田村を舞台に展開される物語…、だが、実は現在にも通じる話が繰り広げられる。この手法は面白いが、巧くいっているかと言えば…うーん…。後半の潮の一人芝居的場面は悲しくなってくる。
伯爵のおるすばん
Mrs.fictions
吉祥寺シアター(東京都)
2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/08/26 (金) 19:00
2013年に初演、2019年に再演された作品の再々演だが初見。とても面白い。観るべし。133分。
何故か不老不死になった「伯爵」の18世紀から始まって5つの時代を描く。本劇団独特の言葉遣いで笑わされるのだが、途中からとても悲しい物語だと分かり、どうなるんだろうか、という気持ちで観た。前作『花柄八景』とも通じるテーマで、同劇団らしい題材だと思う。エンディングは少しホッとするのだが、そこで流れた小泉今日子の「丘を越えて」でちょっと泣いてしまった(^_^;)。伯爵を演じた前田悠雅はほぼ出突っ張りで頑張っているが、全時代で登場する岡田帆乃佳がいい仕事をしている。
ニュー・イリュージョン
チェルフィッチュ
王子小劇場(東京都)
2022/08/21 (日) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2022/08/25 (木) 18:00
有名な劇団だが私とは相性が悪く、本作もフィットしなかった。62分。
「映像演劇」というものにチャレンジているそうで、縦約3.5m×横約2mの2枚のスクリーンを2mほど間を空けて置いてあるところに、演劇の映像を写す形での上演。主に男優と女優が1人ずつ出てきて(ほかにギター/ベース演奏者が1人)、物語を語り出す。セットを片付けた劇場で、昨日までそこで上演されていた芝居の話…、という展開。演劇は観客の想像で補うもの、という主張には同意するが、展開されるゆっくりなテンポの動きとセリフ回しがちょっと…。
映像を演劇と思えるかというのは重要な問題で、私は「生身」が演劇だと思っている(したがって、配信という形の演劇は観ない)ので、かなり違和感がある。
グレートジャーニー
かるがも団地
スタジオ空洞(東京都)
2022/08/20 (土) ~ 2022/08/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/21 (日) 16:00
直近2作を初めて観たが、どちらも大ホームランだった劇団のコント集。やはり面白い。(6分押し)61分。
旅行にまつわる5分ほどのコント7本を、タイトルをプロジェクタで表示して演じる形で上演する。面白い発想のコントで、爆笑というより苦笑という感じだが、終始クスクス笑わせてもらった。会場内に「かるがも観光」というポスターを掲示したり、環境作りから工夫して、全体で1時間ちょっとの時間だが、楽しく過ごすことができた。
『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2022/07/29 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/08/20 (土) 18:00
2019年11・12月のにした戯曲の再演で、初演も観ている。ただただ面白い!(3分押し)87分(休み15分)65分。
クイーンの楽曲を使って、ロミオとジュリエットの物語を源平の戦いになぞらえ、さらに2幕の衝撃的内容につなげる、スゴイ芝居。メインキャストが初演と同じというような奇跡も重なって、充実した舞台だった。初演では、初舞台だった広瀬すずの可愛さにひたすら惹かれてしまったのだが、再演を観てテンポの良さとか総合芸術的な見事さを改めて発見する。言葉の美しさも野田の戯曲の特徴として最認識。それにしても広瀬すず、大人になりました。
へそで、嗅ぐ
トリコ・A
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/08/20 (土) ~ 2022/08/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/08/20 (土) 13:00
初見のユニット。不思議な面白さ。(2分押し)107分。
京都で活動する山口茜のユニットの公演。寺で暮らす障がいを持つ長女と、父が倒れたことで戻ってきた次女夫婦を軸に、彼らを取り巻く人々の物語。私の苦手な感じの人が次々出てくるのがちょっといただけないと思っていたが、若干不条理でもありつつのファンタジーとして観るべきかと思った。障がい者の役で障がいを持つ女優が出てくるのだが、シリアスになりすぎることなく普通に演技してた。
明けちまったな、夜。
ゴセキカク
王子小劇場(東京都)
2022/08/13 (土) ~ 2022/08/16 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/08/16 (火) 17:00
初見のユニット。面白いが、既視感は否めない。(8分押し)91分。
高校の演劇部の卒業生が、同級生の結婚式に出た2次会でカラオケに行って徹夜する…、の物語。30を前にした世代の苦悩や葛藤を丁寧に描いているとは思う。ただ、演劇や近似する分野を題材にした演劇は、しばしば自己弁護的になるのだが、本作もその傾向は否めず、特に終盤の奥川と松村の長セリフには、どこかで観た(聞いた)ことがある展開になり、やや残念に感じた。それでも最後まで緊張感を持って観ていられたのは、個々の役者の力量が素晴らしいことか。特に、事情が分からないゆえに空気を読まない発言をするカラオケ店員の杉山が見事だった。
月虹の宿 (げっこうのやど)2022 東京公演
日穏-bion-
シアター・アルファ東京(東京都)
2022/08/05 (金) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/14 (日) 14:00
お気に入り劇団の一つだが、本作でも、とてもいい芝居を見せてもらった。(5分押し)117分。
ロビーからの月が美しく見える、過疎化で寂れた温泉宿の「月の屋」。末っ子の長男と、助産師である長女が何とかやっているところに、アメリカに行った次女が娘を連れて帰ってくるが…、の物語。話に無駄がなく、伏線をしっかり回収した上でいい話にするというところが気に入っているのだが、本作もその展開。家族の話を扱うことが多い岩瀬が本作でも家族の話を扱っているが、そこに「生」の問題を関わらせたあたりはやや新しい。終盤の柴田理恵の演技はさすがと言うしかない。
鎌塚氏、羽を伸ばす
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2022/07/17 (日) ~ 2022/08/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/08/02 (火) 18:00
鎌塚氏シリーズの第6弾。やはりとても面白い。115分。
貴族社会が残り執事という職業がある、という世界観が面白いんだが、完璧な執事とは何かということの設定がすごくて、三宅のキャラクター作りが本作も成功してる。ある意味「お約束」の面白さだが、爆笑というより苦笑という感じになっていた。本作では玉置孝匡の役割が重要な気がした。それと二階堂ふみも見事だし、初登場の西田尚美が○○○というのがハマった。シリーズ全作を観ているのだが、本作は過去の作品の余韻を活かしているので、観てない人がどれだけ理解できるのか、ちょっと気になってしまった。
ザ・ウェルキン【7月21日~24日公演中止】
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2022/07/07 (木) ~ 2022/07/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/07/30 (土) 18:30
2度目の観劇。内容が分かって観ても、しんどいエンディング。65分(15分)70分。
12人の「女性陪審員」の役割やキャスティングの妙も分かる。理不尽に晒されるのは常に女性、という構造が見える。
世の中と演劇する The three plays
オフィスプロジェクトM
アトリエ第Q藝術(東京都)
2022/07/28 (木) ~ 2022/07/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/29 (金) 14:00
短編2本と中編1本の上演だが、3作品が有効にからみあって余韻を残す。非常に面白い試み。104分。
冒頭、鈴木一功が犬の気ぐるみで登場しイントロを語る。その後も、各話の繋ぎとエンディングで語り、3話を繋げるという型式が面白い。(それぞれ4分,2分,2分,3分)
まず『茶色の朝』(フランク パヴロフ作)。丸尾聡のほぼ一人芝居(21分)。茶色の猫以外は殺さなければならなくなった世界でシャルリーと「俺」が話す物語。こうなるだろうな、と予測はできるが、恐ろしい展開。
続いて『23分間の奇跡』(ジェームス・クラベル)。松坂わかこのほぼ一人芝居。「新しい先生」(松坂)が語る学校の授業。これも予想できる恐ろしい結末に。
最後が、これがやりたかった、と言う『明日のハナコ』。江花実里と斉藤沙紀によるアクション付きリーディングだが、ト書き等を大島寛史と丸尾聡も一緒に語る(45分)。いわずと知れた、福井県高校演劇で「なかったことにされかけた」戯曲で、結局いろいろな所で上演されていて、梅ヶ丘BOXでの公演も観てるが、緊急公演的だったものが、本作では丁寧に稽古したと見えて膨らみを感じた。
3話とも、「恐ろしい」状況を描いて、全体でザワザワした感情を引き起こす。観てヨカッタ。
ドキドキしていた
情熱のフラミンゴ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/07/23 (土) ~ 2022/07/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/07/25 (月) 14:00
名前は知っていたが初見のユニット。不思議系不条理劇とでも言おうか。105分。
会話が成立しているようで実は不条理。唐突に照明が落ちて暗転するという特徴的な演出。ザワザワする。
『The Pride』【7月23日(土)公演中止】
PLAY/GROUND Creation
赤坂RED/THEATER(東京都)
2022/07/23 (土) ~ 2022/07/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/24 (日) 18:00
side-Bチームを観た。ゲイカップルの過去と現在(?)を巡る壮絶な会話劇。(5分押し)81分(休み11分)57分。
1958年、シルヴィア(福田麻由子)は同僚のオリヴァー(岩男海史)を夫のフィリップ(池岡亮介)に紹介する。2人はゲイカップルになる。2008年、オリヴァーは同棲していたフィリップと別れ、シルヴィアの救いを求める…。同じ名前を持つ2組のゲイカップルを時代を越えて登場させ、それぞれの時代の「標準」の違いを見せる。時代の違いは当パンやチラシを読んでいないと分からないが、演出上はシルヴィアのキャラクターで区別される。セリフ量も膨大で、やや長い芝居だが(当初は休憩込み2時間20分と言われていたが、初日あるあるで休憩込み2時間30分)、役者陣も好演し長さを感じない。舞台美術と、特に照明が秀逸。
若手中心のside-Bを観たが、10歳程度年長のside-Aも観たくなってしまった。