荒人神 -Arabitokami-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/12/21 (水) ~ 2022/12/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
五彩の神楽最終弾!!初日、竹村さん演じる荒が剣を握って動いた瞬間、思わず大泣きをしてしまったぐらい、観ているこちら側もここに辿り着いたのだなという気持ちがありました。奇しくも憫笑姫が開けて五彩の神楽が始まった時と同じ気持ちになったのが自分の中では感慨深かったです。
荒人神は、五彩の神楽の中で一際人の愚かで醜い部分が顕著に示された作品であり、それに絶望するところ、そしてその絶望とどう向き合うのかを真摯に問いかけられているなと感じます。さらに人を信じ誰かを命懸けで助けてきた人がどうしようもなく困っていたら、誰かひとりは助けてくれる人がいるという人の善性・光の部分も鮮やかに、それこそ力強く彩られるので、本当に人の悪いところも良いところも全てを混ぜ合わせて「これは人々の物語である」と言える力強さがあります。このお話を観たことにより、これから生きていく上で大切な心の指針のようなものを頂けた気持ちに勝手になっているので、この思いはこれからずっと心に残っていくのだなと思います。
また初演の内容を知っていても、それを凌駕してくる圧巻の演出構成が好きで好きで堪らない気持ちになります。時勢を踏まえた上での新演出、それをやろうとした決意も含めて本当に素晴らしかった。五彩の神楽の総括になってしまいますが、5ヶ月連続、55ステージ、ひとつも落とすことなく駆け抜けられたのはひとえにキャストの皆様、スタッフの皆様、関係各所の皆様の壮絶な努力の賜物であり、本当に本当に盛大な拍手をお送りしたいです。5ヶ月を一緒に駆け抜けられたこと、観ることができてよかったなと心の底から思いました。もしも再再演があるならば、その時にはもっとバージョンアップして、きっと観たことのない衝撃を与えてくれるだろうなという確信があるので、その時を楽しみにしております。
戰御史 -Ikusaonshi-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/11/23 (水) ~ 2022/11/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
五彩の神楽第四段。初日に雨、千秋楽に雨という天気の神様も見ていたのかなと思ってしまうほど、ある意味天候まで味方をしていたなあという印象があります。そして劇場から外に出て雨が降っているとまるで物語の地続きのようでわくわくする!という気分になる舞台も然う然うないかと。「雨の日に舞台ってちょっと行くのも億劫だなあ」と思う気持ちも全く沸くことなく、むしろスッキリした上でテンション爆上げ気分になるバチバチのアクション舞台。公式さん曰く9.2割殺陣で構成されたお話ですが、残りの0.8の部分で繰り広げられる人間の奥底、根幹が見える瞬間が秀逸。物語の終盤、ろうそく男が表助に向ける視線がふっと変わる瞬間が好きで、幾重にも意味を考えられるところが見どころのひとつかもしれません。配信だけでは難解だった部分が多かった作品なので、舞台に存在する情報量の多さを直接浴びることができてよかったです。
主演お二人の殺陣の素晴らしさは言わずもがな、ゲストすべての方々が素晴らしく武器の概念をこれでもかと体言していました。その中でも後助役の野口さんの軽薄な表情が忘れられない。また通称オールスター戦と呼ばれる部分はアクションモブの皆様のかっこいい瞬間がこれでもかと詰め込まれており、今回導入の照明も相まってライブ会場にいるような、立ち上がって応援したい気持ちになるそんな舞台でした。
心踏音 -Shintouon-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/10/19 (水) ~ 2022/10/25 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
五彩の神楽第三弾、心踏音。五彩の神楽初演を配信でみた中で一番好きだと思ったお話です。お話自体は「とてもとてもしんどい辛い苦しいどうしてそんなことに息ができない」をマシンガンで雨霰のようにこれでもかと打ち込んでくるような感覚に個人的にはなりますが、なんといってもこのお話が好きな理由は、舞台のもつ総合力の強さを感じた作品だから。できないことが少し多い主役ふたりを繋ぐ音の力、主人公とリンクした照明、そこから浮かび上がる見えない世界、そして台詞がない舞台で叙述トリックをするという圧倒的な構成力の強さに加えて、殺陣がよりいっそう物語の中に落とし込まれているという部分があまりにも好き。
配信という画面越しでも伝わる力があるのが心踏音だと思っていましたが、それを凌駕してくる生の舞台の強さ、圧巻でした。あんなに楽しそうに心を通わせる、あんなに怒りに満ちて息を殺し剣を構える、あんなに辛くて苦しそうに決意をして鈴を鳴らす、あんなに悔しそうに足音を踏み締める、そしてあんなになっても笑って肩を叩く。その全てを観ているこちらに全力でぶつけてくれる舞台上の空気を全身で浴びれたこと、貴重な体験をさせてもらったとしか言いようがないです。
今回はさらに人間CGとして「とあるシーン」が出現!初演の主役お二人がもう一度同じ舞台にいるという安心感もあったからこそ、新しいチャレンジがここでできたということもあるのだとは思うのですが、初演の内容を知っている人間としてはどこで人間CGが出てくるのだろうか?とずっと考えていて、そうしたらまさかの展開。しかも時間で言うと相当長い時間で発動するので、本当にど肝を抜かれてしまい、初日そのシーンが終わった瞬間ひとりで拍手をしてしまいました。もしかして壱劇屋さんにできないCGはないのでは?巻き戻る際のひとつひとつの動きがカッコよく洗練されていてアクションモブの皆様に拍手しかありません。
公演が終わった今でも、晴れた日にはふたりの洗濯物をする幸せな姿を思い出すことができる本当に本当に素敵な舞台です。大好き。
賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
五彩の神楽第二弾!主演の方々がかわり雰囲気はそのまま、各所のバージョンアップが物凄い。豪速球で情報が飛び交う公演だなと感じました。ダンスシーンも一連の揃ってみんなで動くシーンもまるでミュージカルを見ているようで歌が聞こえてくる。さらには武器の刃の部分を握って刃がついていないことを示すのに加え、不殺に対して殺しを表現する血飛沫をあらわした紙吹雪がとても良い演出で、これもまた本当に人間CGでした。初演版よりわかりやすいとあるシーンかつあの時感じた同じ胸の熱さに拍手喝采し、最後の三つ巴戦で頑張れと全力で応援し、全て終わったと笑った最後の展開までが賊義賊のお話だと思うので、ただのポップでキャッチーでコミカルだけで終わらせない作品の力を感じました。また賊義賊とは違った壱劇屋版ミュージカル風舞台も見てみたい気持ちでいっぱいです!!
憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/08/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
昨年の無料配信で出会った五彩の神楽。まさか再演するとは思っておらず決まった時は小躍りしてしまう程でした。
憫笑姫はその第一弾。初演を配信で観ていたため、冒頭の幼少期の姉の咆哮で涙してしまいました。これはストーリーを知っているからだけでなく、眼前で繰り広げられるキャストひとりひとりがこの物語を生きている力強さ、その世界へ観客を連れて行くためにスタッフを含めた全員が力をあわせてつくる空気の流れ方みたいなものが圧倒的で、これが「舞台でみせる」という意味なのかと、とても感じたからだと思います。
配信では見ることができない空気感をお伝えする方法の一助として、壱劇屋さんは作品アーカイブを作成してくださいました。舞台写真とほんのすこしの言の葉で語られるこちらは、舞台を観た時に感じた空気がそこにあります。これから五彩の神楽を追いかける人にもとてもお勧めです。
壱劇屋さんのオールワンな舞台制作力が大好きなわけですが、妹役の三田さんの健気かつ圧倒的理不尽の前に立ち向かう勇姿、王様役の牧田さんの爽やかさがありつつも滲み出る悪のオーラ、側近役の熊倉さんの視線や、指先・爪先ひとつまでまるで蛇を体現しているような存在感、女官役の桜町さんのキュートとセクシーを兼ね合わせた佇まいの魅力等々、様々な色を持つゲストさん・アクションモブの皆様方、そして新たな准劇団員さんたちによって作られる新しい彩りに加えて、壱劇屋の皆さまによる世界を支える安定した動きの数々は今作も見応え抜群です。中でもやはり主演の西分さんがとてもよかったです。初演時も凄かったですが、今回演技力だけでなく、苦手だとおっしゃる殺陣の成長力凄まじく、物語への説得力を深め、お見事としかいいようがありません。
今回の憫笑姫、残念ながら配信・円盤化もないとうかがっておりますが、是非作品アーカイブをたくさんの方に見ていただきたいですし、次の賊義賊へ足を運んでいただき空気を感じて欲しいです。五彩の神楽はまだまだ始まったばかりなので!
二ツ巴 -FUTATSUDOMOE-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
別の舞台にて劇団壱劇屋東京支部さんに出会い、観に行ってみたいなあと思った最初の舞台です。
こちらを観劇するまで他の作品も拝見させていただきましたが、本作品はキーワードである「水」があまりにも美しかったです。雨のきらめき、雫ひとつ、大河のうねり、流水の音、生活の傍らにあって、災害にもなってしまう水、その満ち引きひとつひとつを、映像を使うわけではなくこれほどまでにローテクで表現できることに感服いたしました。アクションモブの皆様、本当に凄いです。
殺陣について、主役のお二人は回数を重ねるたびに剣筋に磨きがかかり、ゲスト出演の水神様・宰相の方の圧巻の高速殺陣は、もはやこんな贅沢を超至近距離で味わっていいのかというほどで、大胆かつ繊細な運びの数々に息を止めて見入ってしまいました。また刺客お二人のそれぞれの特性のある武器での殺陣がとても格好よく、ご自身の身長ほどある長物を振り回す勢い、空間すべてを使い切った矢の殺陣など、観ているこちらが切られたり避けたりしてしまうほどの大迫力でした。
本作は、二組の父と娘の優しく美しく悲しい物語ですが、父娘のシーンはどのシーンもワードレスなはずなのに、たくさんの台詞が聞こえ胸に迫ります。
とても素敵な舞台をありがとうございました。刺さる方がたくさんいるはずだと思うので、大勢の方に見ていただきたい傑作です。