1
死んだら流石に愛しく思え
MCR
115分。休憩なし。
殺人鬼の話なのに、いつしか自分の事として重ねて捉えて観てしまう。とにかく重くて、苦しくて、観ていて、どんよりと、やり場のない切ない気持ちにさせられた。笑のシーンも、腹から笑うというよりは、若干乾いた笑いになってしまっていたように思う。終演して現実に戻った時、どこか安堵してしまった自分がいた。
2
ヨコハマ・ヤタロウ
theater 045 syndicate
観劇のきっかけは「この日マチネ時間が取れそうなので、検索でヒットしたから」という消極的な理由から。観てみて驚き。チラシにもある通り「掘り出し物」的な完成度。
西部劇や時代劇チックな話だけど、B1を所狭しと繰り広げられる痛快活劇。正に観ていて痛快な芝居。爆発する感情が舞台に溢れるヤタロウと、世界観を創る周りの俳優たち。アクション、照明、空気感どれも凄まじい!
3
ビッグ・フィッシュ
東宝
170分。20分の休憩含む。
父親が、自分仕事をどこか大げさに語りたい、という願望。子供に対して真実をそのまま伝えても、多分理解してもらえないだろうからこその、誇張であったり。その誇張が、関係を悪くする原因にもなったり。そんな父と子の心の構図を、「大人のための童話」というキャッチフレーズの通りに見事にストーリー化した作品。後半涙が止まらなかった。物語全体が、アーサー・ミラーの「セールスマンの死」の、アンチテーゼになっているような気がした。
日本初演は、アンサンブルかいたが、今回はなし。“12 chairs version”。舞台の広さのわりにちょっと迫力は書いたものの、ストーリーの良さと、12人の演技が絶妙。特に川平慈英が絶妙にはまり役だった。
4
ピンポンしょうじょ→→
劇団ダブルデック
95分。休憩なし。
全編、軽快なリズムに乗せて、時代背景をトレースするようなギャグとキレキレな動きと、目まぐるしく変化する照明と役者さんのテンションで、終始運んでいく物語。パワーというか、表現としての熱量と、ラスト、非常に単純だけれど涙しそうなテーマに持っていく表現。観ていて、鳥肌が立つ感覚だった。舞台の熱量そのままを、観客が受け止めきれていない量だったように感じた。すごいもの観ちゃった、という感覚だった。
5
こっちみてるの、しょうこ
やみ・あがりシアター
95分休憩なし。
ストーリーは分かり易い舞台なのだけれど、どこか、今自分が観ているもの・・・芝居として観させられたものは、物語としての表層でしかなくて。実際に感じている事は、どこか観ているものとは違っているような気がする、という、とても不思議な、ハイコンテキストなものを観させられているように感じる舞台だった。
特に、しょうこ、マフィンの魅せ方が、非常に洗練されていた。
6
YELL!
TEAM 6g
戯曲の中に、過去の名作な話の影を、いくつも感じつつ。・・・涙腺が決壊しました。マチネに観たものだから、池袋の街を歩くのが、ちょっとはばかられ。後半の展開の妙、役者さんの演技、そしてお話。最高の作品でした。
前半は、ダムに沈む村、田舎に生きる人の人間関係を描く話で。このお話だけでもかなり引き込まれましたが、これで終わってしまうのかと思ったら。
後半の畳みかけるような展開が、鮮やか過ぎて。父子の別れのシーンで終わりかな、と思ったので、ラストの蛍のくだりは、もう少しコンパクトでもよかったかな、と思いましたが、
生涯印象に残るような舞台でした。
7
AFTER塩原JUNCTION
塩原俊之自主企画興行
3話オムニバス。濃密な会話劇の空間を、思う存分楽しめました。
『笑の太字』
「笑の大学」への愛と、コメディへの決意と、絶妙なオマージュ。笑が止まらず、その決意には涙。最高でした。
『天気予報を見ない派』
追憶と喪失感との切り取り。時間を解いて、また紡ぐ感覚。切なすぎて。らまのだらしい、時間の切り取り方。
『いまこそわかれめ』
大和田あずさが、活き活きとしてて可愛いくて。そんな彼女に「救われる」彼の視点の物語。決意より「懐かしさ」みたいな言葉を、正しく形にしてくれたような印象の舞台でした。
8
チンチンの冒険
演劇ユニット「巨乳の彼女を創る」
最初から最後まで、笑い続け。笑いよじれて、疲れ果てて。観終わったら、滅茶苦茶お腹空いてた。身も蓋もなく一言で言ってしまえば、テーマは「モラトリアムの終わりへの抵抗」。要は「若いエネルギーの爆発」。悲哀と切実さが、上半身裸の肉体と下ネタに、巧妙に隠されているように感じる。
舞台時間全般を通した肉体のキレの良さが凄まじく、舞台表現としての完成度レベルが、非常に高い。1000円は明らかに安すぎる。4000円でも安い。
9
ゆうめい『姿』
ゆうめい
120分。休憩なし。
いろいろな視点、いろいろな捉え方が出来る物語だけれど。私には、息子の母への決別の物語に思えた。母に対する理解を、丁寧に丁寧に積み重ねたものの、そうして理解しても尚、相手の立ち位置を尊重しても尚、そこに越えられない壁がある、という事を、そっと伝えたかったんじゃないかのか。そう思えて仕方がなかった。切実、という事を感じる物語だった。
10
ビビを見た!
KAAT神奈川芸術劇場
105分。休憩なし。
絵本を基にしているからだろうか。メタファーが多重・多層で、観る人によって様々な感想を持つと思う。しかも、他人の感想を聞くと、そういう捉え方もあったか、という納得をしてしまう、奥行きの深い空間だった。
個人的には、目が見えない蛍が一番世界を観ているという世界への皮肉。目が見えない事が、社会に対する無知を表している点。盲目が、子供の世界は親には見えない、という事と、子供の成長の物語を表しているように感じた。特に、子供の成長の視点では、思わず涙する場面が何度かあった。
冒頭10分の暗転の闇。表現として素晴らしい。ド暗転、というらしい。