
おにぎり
Antikame?
雑遊(東京都)
2026/04/22 (水) ~ 2026/04/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
3セット6作品を観劇
六つ子を産んだ親は、どの子も可愛いだろうけれど、
それでも思い入れが違うはず。
観た者の特権として、勝手に思い入れを抱かせていただき、『おかか』の『中間的、に於いて』について記す。
作演出の #吉田康一 さんは冒険者であり、チャレンジャーで開拓者だ。
かつて開演から20分も照明を当てず暗闇のまま、囁きを聴かせる作品を上演し聴衆の度肝を抜いた。
演劇界に一石を投じ、物議を醸した。
界隈で激震が走った。
そして今回は一切言葉を発しない無言の作品を上演した。
見せずに聴かせる作品から、聴かせず観させる作品を叩きつけてきた。
狂ってる。(褒めてます)
我が眼が声を聴く。
光と影……
視線と表情……
動きと歩み……
静寂と音……
なんと雄弁に語りかけてくることか。
終演しても終わらない。
我が脳内でずっと語りかけてくる。
人生で……
社会で……
世間で……
彷徨い……
佇み……
座り込む。
視線は泳ぎ……
スレ違い……
交わる一瞬に狼狽える。
他者(ひと)のことが気になり
他者(ひと)の視線が気になり
前者には嫌悪が忍び
後者には恐れが巣喰って
いつも怯えている。
それはまるで依存するネットというパラレルワールド。
時折離脱しても、また戻ってしまう。
果たしてこの世界とその世界には境界があるのか……無いのか。
血が通う世界なのか。
そもそも血の通う世界なんて存在するのか。
人はいつだって、擦り寄ってくる孤独の恐怖と戦い拠り所を探している。
倒れそうになる心を支えてくれる、
キミの手をずっと探している。
観られてよかった。

除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。
キ上の空論
新宿シアタートップス(東京都)
2024/05/09 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
人生は綱渡り。常に転落の危うさを孕んでいる。その危うさの甘美なセカイを一口でも舐めてしまうと、もう戻れない。知ってしまったことを知らないことにはできない。後戻りできない人生。戻れないのだから、新たな魅力を探して、見つけた道へ、見つけられそうな方向へ向かうしかない。好転するのか、更なる転落が待っているのかはわからない。ただ、とどまることは出来ない。
それが性癖であると、日の当たる場所に晒すモノではないから、なかなかに理解されにくい。けれど、性癖に限らず、きっと誰にも多かれ少なかれ拘りみたいなものはあって、そこに生きづらさがあるのは誰もが感じているのではなかろうか。
自己肯定感が低い人間には、その闇からなかなか抜け出せない。我が子という存在には無限の愛を注ぐことができ、誰からも咎められることはない。そこに歪んだ性欲が含まれなければ。
彼が自分の分身となる子どもの誕生に感情が動かされることは理解できる。同時に反対側にいる立場の恐怖も。
改めて、何が彼の転落のスイッチを押したのかを考えている。なぜアレを跳ね除けられなかったのか、その力がありそうだった彼からそれを奪ったのは何なのかを考えている。落書きの主が誰なのかも。
一つ言えるのは、伝聞の恐ろしさ。その情報の信憑性が高くなかったとしても、その小さな棘は体内に入り込んで、心臓へと着実に上っていく。SNSはその最たる棘。
藍澤慶子さんは今作でも素敵だった。

エアスイミング
カリンカ
小劇場 楽園(東京都)
2024/02/28 (水) ~ 2024/03/03 (日)公演終了
実演鑑賞
初日と前楽を観劇。
大好きな俳優二人ががっぷり四つに組んで火花を散らす。いや、違うな。決して戦っているわけではない。可愛らしさも、可笑しさも、激しさもぶつけ合っているけれど、相手を倒すわけでも、やり込めるわけでもない。それぞれが持ちうるスキルと感情を、これでもかと惜しみなく披露して、それが互いを刺激して、高め合う熱情がうねりのように遠心力を増して空間を飲み込んでいく。物凄いモノを観てしまったなという思いを客席が共有した。
ストーリーは二度見ても掴めなかった。理解しようとする程に混乱した。でもきっとそれが正解のような気もしている。なぜなら彼女たちは精神に異常をきたしているという話なのだから。終演後の腑に落ちなさは、まんまとしてやられたのかもしれない。

ミュージカル『Liebe ~シューマンの愛したひと~』
劇団ミュ
シアター711(東京都)
2024/01/27 (土) ~ 2024/02/05 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#チーム
どうしても栗原沙也加さんが観たくて劇場へ。
下北沢の小劇場でのミュージカルとは、なかなかにスリリング。あの距離で聴くそれは、マイクで拾ってアンプで増幅させる訳にはいかない生歌であり、誤魔化しようがない。狭い舞台の中で、それでも少しのダンスも披露。シューマンの妻クララを軸に、有名作曲家たちが、織りなす愛憎劇はなかなかに見応えがあった。
目当ての栗原沙也加さんはエルネスティネ、ある意味恋敵の役どころ。どんな作品においても、そのポジションは美しさが必須。その点でも百点満点のキャスティング。可愛らしい人が、美しさの比重を上げて見事に恋敵を立ち上げた。そこに哀愁まで纏ってみせるのだからお手上げ。客席はみんな彼女の虜。その上、歌が甘くもあり切なくもあり、時に軽やかに聴かせてくれるのだから堪らない。
主役クララを演じた田中海咲さんも、キュートで魅力的だった。
有楽町の大劇場で味わうミュージカルに匹敵する醍醐味と、手の届きそうな小さな劇場だからこその臨場感と独特の空間を楽しむことができる秀作だった。
願わくは、靴にまで気を配って欲しかった。小さな劇場だからこそ見えることかもしれない。とても歌が上手だった彼の靴が、残念なことに傷んで横が破れていては興醒めする。予算の問題もあってキャスト任せなのだろうけれど、そこにも気を遣って欲しかったなぁ。

カンテン「The Foundations」
カンテン事務局(Antikame?)
座・高円寺1(東京都)
2024/01/24 (水) ~ 2024/01/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
selectC 接
架空畳
柔らかい非流線形のフーガ
メメント/アライメント
180分にも感じる60分。疲れた。心地よい疲労感。それは、全速力の110mハードルを短いインターバルで走り続けているように思考がフル回転しているから。いや、✖️18倍速ならば1080分の内容なのかも。とにかく濃い時間だった。
油断をすればすぐに振り落とされてしまいそう。宇津木妙子の速射砲ノックを受けているような、安全バーをせずにバンザイしながら富士急ハイランドのフジヤマに乗っているような、スリリングなスピード感に無防備で挑んでいる感じ。
目まぐるしく変わる語り手、語り部、時空。幾つかの軸が瞬時に、有無を言わさず気持ちよく入れ替わる。その圧倒的な瞬発力。気持ちいい。
そこにキャストが発する言葉の語感、サウンド。気持ちいい。
ただ、ただ、それが気持ちよくて楽しいと思える自分もドラマを追いかけて把握しようという気持ちを、やや諦めながら身を委ねる。それでも気持ちいい。
この気持ちいい……を、たくさんの人に体感して欲しい。
◾️追記◾️
決して少なくないキャスト。その全員に見事なまでに活躍するシーン、見せ場がある。応援するキャストがいらっしゃるなら、存分に楽しめるはず。安心して劇場に足を運んで欲しい。

じごくのそうべえ
CHAiroiPLIN
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2024/01/12 (金) ~ 2024/01/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日。
開演前BGM可愛い♬
衣装可愛い🥰
ダンス可愛い💘
表情可愛い😍
可笑しくて
切なくて
ちょっとエッチで
可愛く仕上がっている。
小林ららさんから目が離せない。泥棒役だから唐草模様の衣装なのだけれど、何とも可愛らしい。
よし乃さんの進化が著しい。これまでになかった役で、とてもセクシー🫦新たな面を堪能した。
ジョディさんの見せ場はハプニングがあったけれど動じることなく、見事な対応で天晴れだった。
そして清水ゆりさんの音楽も冴え渡っていた。これまでの作品で制作した楽曲をCD化してほしい😁聴いて笑ったり泣いたりしながら運転したい。
ゴールデンウィーク公演が楽しみでしかたない。

小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク『言葉とシェイクスピアの鳥』
スペースノットブランク / 公益財団法人武蔵野文化生涯学習事業団
吉祥寺シアター(東京都)
2024/01/09 (火) ~ 2024/01/14 (日)公演終了
実演鑑賞
初日。
深澤しほさんの素晴らしさよ。開演させて、観客の脳に作品を放り込むナビゲーター。あの緩急とコントロールされた抑揚のある語り口調が最高。そして美しい。もう、いきなりメインディッシュが出てきた感じ。その上あのキレッキレのダンス。冒頭のこの時間だけでも、この公演を観る価値が充分にある。最後までこのまま見せてもらってもイイと思った。
あれだけ大勢のキャストに、それぞれ振り付けをして演出する、その見事な手腕に敬服する。
最近は、ダンスを観るときには頭を空っぽにして見たままを感じ、楽しもうと思うようにしている。
楽しかった。
たくさんの方に、深澤しほさんの素晴らしさを観るて感じでいただきたい。

外地の三人姉妹
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2023/11/29 (水) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
待ちに待った作品の再演。チェーホフの『三人姉妹』を、彼の地で我が物顔で傍若無人な振る舞いをする日本人に置き換えて作られた作品。いろんな『三人姉妹』を観ているけれど、それぞれの人物が背負っているものがどの作品よりもしっくりくる。『この人は何でそんなことを言うのだろう、するのだろう』という違和感がなく、『そうだよなぁ、そうするよなぁ』と思える。汚れた美しくない色の日の丸が舞台の床に描かれていて、その上に絨毯が敷かれてその上で彼等は生きている。背景にも日の丸の映像が映し出されていて、それが旭日旗に変化したりする。それが何を意味し、彼の地の人々に何を強いる象徴であったかを思うと苦しくなる。やがてその舞台から日本人がみな降りて行く。まるで彼の地から追い出されていくように。剥き出しになった汚れた日の丸の舞台では、自分たちを人間扱いしなかった日本人が去り、誇りを取り戻したことを、いや誇りを失わなかったことを喜び讃えるかのように穏やかに踊る。その何と美しいことか。
我々は、過去の過ちをきちんと認識し、本当の謝罪から始めなければ、本当の国際交流なんてできない。ナチスやヒトラーの過ちを認めたところから始めたドイツと日本の違いはそこにある。
こう書きながらも、その日本人に対する怒りのエネルギーは初演よりも抑えられ、そのことで一層、そのメッセージが感情で押してくることなく根幹の問題としてズシリと伝わって来た。
この作品の肝は、原作にはない若い女中の存在にある気がしている。鄭亜美さんが見事に演じられた。そして、次女役の李そじんさんが美しく、切ない。
今作品も、繰り返し上演して欲しい。

モモンバのくくり罠
iaku
シアタートラム(東京都)
2023/11/24 (金) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
2回観劇。今回も十分に堪能した。現代の食の問題についても考えさせられる。三人の娘を持つ親としては、親を選べずに生まれてくる子に、自分は何を伝え、何を守り、その対局として何を押しつけてしまっていただろうかという不安に囚われた。
そして何より、家族の或る中年男が浮ついて見える姿。他者によってバッサリと斬られてしまう言い訳を聞きながら、自分を省みれば心から血が噴き出しているように思えて恥ずかしかった。如何にして生きるべきか、また考えなくては。

マイン
チタキヨ
イズモギャラリー(東京都)
2023/10/16 (月) ~ 2023/10/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
久しぶりのチタキヨ。飾らず、それでいて美しく、現代社会において女性が抱える問題、いや女性に背負わせてきた問題を、力まずにテーブルに乗せて考えてみる作品にして届けてくれた。人と話題にし辛いようなお金の問題も見事に提供してくれた。何ともいとおしい女性たちがそこに生きていた。感情を隠しながらつながっていた人間関係も、少しずつ本音が漏れて、それが嫌味でないから関係が強固になっていくのが何とも羨ましく美しかった。
心が温まった帰路は、少しニャついていたに違いない。恥ずかしいけれど気持ちよかった。

さいあい〜シェイクスピア・レシピ〜
CHAiroiPLIN
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2023/08/11 (金) ~ 2023/08/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
2回観劇。それでもお代わりしたくなった。彼等と出会えた大切な作品の久しぶりの再演。さらにダイナミックに進化を遂げていた。それでいて、丁寧に細部にまでこだわって緻密に演出されている。その中でキャストが生き生きと舞う。高校生キャストも若さを発散し溌剌として輝いていた。大好きな小林ららさんは今回も素敵だった。そして、主宰のスズキ拓朗さんとともに二本柱といっても過言ではない清水チャイロイプリオンをチャイロイプリンを初めて観た。もちろん毎回いて欲しい。それでも今回、それを埋めるべくよし乃さんが大活躍していた。彼女の目を見張る活躍に感嘆した。
この作品は定期的に再演して欲しい。

この夜は終わらぬ。
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2023/06/02 (金) ~ 2023/06/16 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日。俳優座稽古場がアゴラ劇場になった。そう思えるほどに伊藤毅さん(やしゃご)が、見事な本を用意し、青年団の空気を存分に取り入れる演出を施した。老舗劇団に思い切ったアプローチで切り込み新風を吹き込んだと言えるだろう。劇団の古参ファンの方は面食らったかもしれない。しかし、それこそが新しい血を取り込んだ価値であるはず。その上で、社会問題を突きつけ、観客に正義を問う秀作。
福原まゆみさんが、役柄も雰囲気も作品に心地よい風を吹き込んでいた。魅力的な俳優さんに出会えた。

天使の群像
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/29 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
千秋楽。
学校は社会の縮図であり、社会の鏡だと常に思っている。世の中の全てがそこにあると思っている。そういう覚悟でいる。
だからこそ、学校だけは正しいことが罷り通る世界でありたい。うまくいかなくとも、そうあろうとする姿勢だけは持ち続けたい。教室を囲む舞台半面の鏡が外界との壁であり、隔たりでありながら、社会を映し出していることを、時に彼らの向こうに客席をも映しながら『お前はどんなんだ⁉️』と突きつけてくる。
「嫌な世の中だなぁ。」
ずっしり重い。社会に対する若者の苦悩や嫌悪。そう思わせてしまう世界を作ってしまった大人の責任を感じて気が滅入る。
監視社会。盗聴、盗撮。
隠し録り、隠し撮り。それを利用して誰かを陥れる。匿名で安全な場所から世に晒して攻撃することで自分を守る。悦に浸る。現代社会を歪ませたのは、間違いなく、米国が生み出したインターネットだと思っている。もちろん便利であり、化学や科学に罪はない。使う人間が未熟で愚かなだけだ。
「誰が見ているかわからない。」
人を信用できない世界。本音を隠してたてまえの鎧で完全武装してパーソナルスペースを守らなければ生きていけない。安心できる場所なんてない。だから、一歩でも踏み込んで来ようものなら徹底攻撃。それもかなりの粘着性をもって。
少子化は甘やかされる子どもを生み、甘やかす大人を生む。大人が大嫌いな思春期の子どもに気に入られたい大人は、大嫌いな大人の代表として子どもの側で子どもの成長を願って心に負荷をかけている教師を攻撃することで機嫌を取り、存在を示そうとする。それが愛情のカタチだと思い込んでいる。厄介なことだ。
賢く立ち振る舞っているようでも、子どもは子ども。身を守るために上手いこと手を打ったと思ってもボロが出る。やっちまったと、失敗した、マズイと感じたあの子はどうするのだろう。
矛盾だらけのエゴが渦巻く世界。それでも、現実の戦いに戻る人たち。そして、姿を消す二人。彼女はどうするのだろう。
ワタシは……どうするのだろう。

夜の初めの数分間
劇団牧羊犬
インディペンデントシアターOji(東京都)
2023/12/13 (水) ~ 2023/12/19 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#夜の初めの数分間
#平体まひろ
出会ってからずっと観てきた平体まひろさんが、また一つ殻を破ったのを目撃したような気がしている。毒を吐くことが心と身を守る鎧。でもそれを脱げば、生身の画子は繊細で、文字通り自分の姿を探し続けている。
人間の姿だけが鏡にもガラスにも何にも映らないという設定が、現代の我々の未熟さを映し出しているかのよう。
写真を加工して別人のような顔になって登場するSNSでの投稿写真は、現代に生きる人間の闇を象徴しているように思う。
年の瀬に、素晴らしい作品と出会った。

天使の群像
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/29 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日。
個に応じた教育が叫ばれて久しい。その理念は正しいし、そうあるべきだけれど、ネットの匿名で誰かを叩くことでストレスを解消するような現代では、ただ教育力を失っているように思えてならない。生徒や保護者の顔色ばかり伺って当たり障りのないことに終始する学校で夢は語れない。夢は育めない。
世に学校へ行けなかった人はいても、学生でなかった人はいない。エピソードはどれも、うんうん そうだそうだと頷けるモノばかり。大人になれば、それはちっぽけなことなのだよと分かっても、その時はその世界が人生の全てであり、うまくいかないことがこの世の終わりのように思えてしまうもの。けれど、今なおそんな若者の中に立ち続ける大人は、それを客観視させてもらえない。だから……この作品から少しばかりの光が見出せないかと願いながら150分を生きてみる。
良い作品はあっという間と言う。そうそう……いや、それは違う……そんな感情にグラグラと揺さぶられていたら、突然その時が訪れた。こんなに短い150分を経験したことがあっただろうか。
遠く彼方に光は差していたのだろうか。差しているのだろうか。混乱したまま数日を過ごしている。答えなんて見つからない。けれど、少しの勇気を渡されたような気もしている。もしかしたら責任なのかもしれない。千秋楽を観た時、もう少し先へ進めるだろうか。光を感じることができるのだろうか。それはわからないけれど、もう一度あの150分を生きることが嫌ではない。
少し違う立場からアプローチする井神沙恵さんととみやまあゆみさん、パラレルワールド的なハマカワフミエさんが作品を色鮮やかにする。
堤千穂さんが立ち上げたキャラクターが秀逸。同僚に居たらどう接するのか、自分でも想像がつかない。ただ、本音をぶっちゃけてしまうヤラカシ具合が似ていて苦笑する。
幸あらんことを願う。

霞色のライラック
アップスシアター
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/08/26 (土) ~ 2023/09/04 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
40年の観劇人生で、誕生日に観たのは初めてな気がする。
とにかく小川祥子さんを観たくて、予定をこじ開けた。
ずっと消えない日本とアジア諸国との遺恨。それが融解する時は来るのだろうか。
日本人の心の奥底に染み付いているアジア諸国やアジア人に対する優位性や差別感情。それは長い時間の中で刷り込まれていて簡単には洗い流せない。アメリカの原爆使用ばかりをメディアは取り上げるが、日本がアジアにしてきた暴挙や琉球を犠牲にしてきた歴史を傍に置いたまま友好関係を進められるはずはなく、そこに立ち返り、世界に向けて非を認め謝罪することから始めなければ、この国の未来は無い。国家主義の愚かさを認識せねば、また同じ過ちを繰り返すことになる。ドイツが世界に向けて反省を示して謝罪し、負の遺産として国の至る所に痕跡を示しているからこそ世界が認め受け入れている。日本も誤魔化し続けていては置いていかれるだけ。いくら吠えてみても、中国の力には勿論、韓国の躍進にも太刀打ちできない。エリートを育成する韓国は、経済やスポーツに加えて、今や映画がアカデミー賞を獲得し、K-POPは世界を席巻している。日本は素直にアジア諸国の魅力を認め、対等に向き合って、本当のアジア融和の一翼を担わなければいけない。
そんなことを改めて考えさせてくれる作品だった。

現象グラデーション
Oi-SCALE
サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)
2023/08/28 (月) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#童話が生まれた【初日】
#山田梨佳 さんを観るために劇場へ。三作品の短編でトータル80分弱。
僅かな時間だったけれど、儚くもたおやかに確かに存在した。生と死の狭間の夢と現の世界に彩りを与え、奪っていった。
本当に美しい人で、これからも観続けたい俳優。
幸せな時間だった。

オイ!
小松台東
ザ・スズナリ(東京都)
2023/08/03 (木) ~ 2023/08/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
千秋楽。
オイ(親父)……から、オイ(息子)まで。間に、オイ(お前)やオイ(ちょっと待って)などを挟みながら。
修学旅行、体育大会…学生時代の思い出が走馬灯のように立ち上がって、卒業式の答辞のようにキュンとする。それでも大切なのは何気ない毎日の放課後の帰り道や寄り道。人生を決定づける出来事も、そんな中に紛れ込んでいたりする。
ハラスメントを受けること以上に、無自覚にしてしまうことを恐れる世界になって、人とも友人ともどう接すればいいのか迷子になっている。それでも、やっぱり仲間が必要で大切なんだな。
あの恋は実って終わりを迎えるのか、別の道を生きたけれど戻ってくるのか。
ズケズケ人の心に踏み込む厳しさと優しさ。
同じキャンパスで同じ時を過ごしたヒューマンジャーナリスト山本美香さんのことを思い出している。このひと月ほど「見て見ぬふり」について度々考えている。
卒業生たち同士が、たまには集って繋がっていてくれることを願う。
昨日、教え子から「母が2週間前に命を絶った」と打ち明けられた。残された者はどうしたって『もっと自分にできたことがあったのではないか、自分がああしたことやこう言ったことが悪かったのではないか』と考える。どうしてそういう時に、何も言ってあげられないのだろう。かけてあげるべき言葉が見つからず自分の無能さを痛感した。
目に見えているモノは何てことはないようでも、裏側にはそこに映らない物語がそれぞれにある。
犬は散歩で無邪気に走るし、飛び出したら危ないし……目撃したら苦しい。
covid-19は会社経営を難しくしたし、SNSは匿名で人を痛めつけストレス発散の場の様相。
毎度のことながら、115分の中にはない物語を、説明せずに伝える脚本に感心する。
ちなみにわたしは給食以外で牛乳は飲まない。
そして、バスのシーンが好きだった。編み物をしている眼鏡のお婆ちゃんが可愛かった。

オイ!
小松台東
ザ・スズナリ(東京都)
2023/08/03 (木) ~ 2023/08/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#竹原千恵 #吉田久美
#尾方宣久 #小椋毅
#松本哲也 #小園茉奈
#今村裕次郎 #瓜生和成
(敬称略)初日
生きる
生きた
生きて
生きるので
生きれば
生きよう
生きるから
生きなさい
生きよう
生きると
生きてこそ
生きなきゃ
生きていれば
生きろ
人生は静かな激動の連続
或いは大騒ぎの微風
愛しき我が人生

バナナの花は食べられる
範宙遊泳
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2023/07/28 (金) ~ 2023/08/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#埜本幸良 #福原冠
#井神沙恵 #入手杏奈
#植田崇幸 #細谷貴宏
(敬称略)
岸田國士戯曲賞受賞作がcovid-19を経て帰ってきた。ただ再演しているのではなく、世界が病んでいた時間をしっかりと作品が飲み込んで、ある意味で栄養にしたのだと思う。
語られる物語の以前に起きていたであろう退廃した生活やバイオレンスが何だったのかは観客の想像力に委ねられている。
人が存在すること生きることの意義や本質は何なのか。関わることと関われないこと、関わることのできる人間と関わることのない人間、そうした人間たちの狭間で生きている。騙し騙され、虚構を纏いながら関わり生きている自分と彼と彼女の実像とは何なのか。そもそも実像などというものはあるのか。ファンタジーを噛み締める。
作品の中の人物と俳優の相互のキャラクターが化学反応を起こし、畝るように絡み合う。
佇まいも台詞も美しかった。
大好きな井神沙恵さんが踊るように、時には泳ぐように滑らかに絡み近づき突き放し、美しく生きてみせた。目が離せなかった。彼女の叫びが我が心臓を貫いて血を吹き出させている。
入手杏奈さんの柔らかな存在感は愛しさを増していた。その愛らしさが悲しみを増幅させる。
男性陣の伸びやかさとウィットが今作品の肝であるけれど、ファンタジーでくるんだ人間愛がズドンと揺るぎなく貫かれているように思える。
豊かであっという間の200分だった。