実演鑑賞
満足度★★★★
3度目の非常事態宣言が発令された京都府だったが、ギリギリで予定通りに公演が行われて良かった。翌日から宣言が発令されたので、会場のアルティも閉館となり、また翌日予定されていた神戸での公演も中止となった。何が何でもオリンピックをやりたい政府のために迷惑な話やなあ。この程度の規模の人手を抑えることに何の意味があろうか・・・
さて、今回の上演作品は2002年に「戦場のピアニスト(The Pianist)」でロマン・ポランスキー(Roman Polanski)とともにアカデミー脚色賞を受賞しているイギリス人の劇作家・脚本家ロナルド・ハーウッド(Ronald Harwood)の作品。1980年3月に英国のマンチェスター(Manchester)で初演され、その後ロンドン(London)で2年近くロングラン上演され、また81年11月からは米国ブロードウェイ(Broadway)でも公演された。
さらに1983年にピーター・イエーツ(Peter Yates)監督が映画化し、脚色賞の他、作品賞、監督賞、座長役のアルバート・フィニー(Albert Finney)、ノーマン役のトム・コートネイ(Tom Courtenay)の二人が主演男優賞にノミネートされた(この年の最優秀作品賞は
「愛と追憶の日々(Terms of Endearment)」が受賞。
日本では81年に座長:三津田健、ノーマン(Norman):平幹二朗、座長夫人:栗原小巻、アイリーン(Irene):市毛良枝という顔ぶれで初演された。加藤さんも88年に三國連太郎さんの座長に対するノーマン役をされた。他にもノーマンは柄本明さん、西村雅彦さん、小宮孝泰さんらが務め、2013年の三谷幸喜版では大泉洋さんが演じている。加藤健一事務所では3年前の2018年に初演。
約5か月前に上演された「プレッシャー」もそうだったが、これも第2次世界大戦下の英国の話。折からの空襲と戦時下の心労で心神喪失気味な座長と彼を支えるドレッサー(着付け師)を中心として、シェイクスピア(Shakespeare)の「リア王(King Lear)」を上演する舞台裏を描く。
加藤さんは、今回は座長を演じる。三国さんと演じた時からいつか座長をと思われてたととアフタートークでのお話。3年前の初演の時より笑いを抑えた演技にしたとのことで、確かにいつもの加藤さんとはちょっと違う役。
主役はドレッサーのノーマンだな。加納幸和さんは1960年1月生まれなので、61歳。テレビにはほとんど出ない方舞台の方なので、初めて拝見した。劇団「花組芝居」の主宰で、全作品の脚本、演出を手掛け、主に歌舞伎をモチーフにした作品が多いそうだ。ノーマンはとにかくセリフ量がすごい。最初から最後までしゃべりづくめ。笑いを抑えた座長に対しノーマンは結構笑わせてくれる。他のキャストでは結構座長とノーマンは年の差があることがあるのだが、今回は座長に近い年のノーマンでやりたかったそうで、加納さんはピッタシだったわ。
京都公演でしかやらないと云う、このような裏話を聞かせてくれた加藤さんと加納さんの15分余りの舞台上でのアフタートークも含めて3時間余り、楽しく過ごせた。早く平常の公演に戻れますように!
満足度★★★★
芸劇プレイハウスとは言え僅か3日の公演が1日減り、さらに時短に対応できなかったとかで2ステージのみの公演となる。しかも間引き客席。旅一座の座長の狼狽と最早一枚岩でない一座の苦悩が、現実の演劇界にシンクロする。カーテンコールに並んだ姿は役人物とは違う人格ながら等身大にも見え、上演をやり切った事に祝福を送る拍手が鳴り響く会場に同期して、痛くなる程手を叩いた。
台詞に込められた洞察の含蓄、演劇人の盛衰のリアルな残酷さを通して人生の儚さと尊さを滲ませる。
満足度★★★★
鑑賞日2021/02/28 (日) 14:00
座席1階
シェークスピアの劇中劇の舞台裏という設定。ドレッサーとは衣装係兼付き人で、舞台裏を支えるスタッフがこの物語の主役である。
第二次世界大戦のさなか、ドイツ軍の空爆を受けて空襲警報が鳴るロンドンで、「リア王」の幕が上がる。空襲という非常事態で、肉体的にも精神的にも弱気になり周囲を困惑させる座長で、王様役を演じるのが加藤健一だ。舞台に穴をあけてはと、なだめすかして座長や座員を鼓舞して舞台の遂行を図るのが今回のドレッサーで、加納幸和が演じた。
1988年にサンシャイン劇場で演じられ、この時は座長を三國廉太郎、ドレッサーを加藤健一が演じたという。それから三十余年。年を重ねたカトケンが満を持して座長役として舞台を引っ張ることになった。
この舞台、戦争とは異なるが、ウイルスとの闘い真っ最中の緊急事態宣言下での上演だ。カーテンコール後のいつものカトケンのあいさつによると、本当はプレイハウスで3日間の上演だったが、午後8時までに終わるという緊急事態宣言ルールに引っかかって一日休演があり、二日間は席を一つ空けての客席だった。三日間で集客は本来の三分の一だったという。それでも、今回の舞台の役者たちは「開演できてよかった」という。僕たちも見られてよかった、と思う。空襲の中、劇場に集まったロンドン市民のような気持ちで舞台を見つめた。
座長のせりふの中で「俺は映画は嫌いだ」という趣旨のものがあった。この演目、演劇人の生きざまを真正面から描いている。なぜ演じるのか、そして我々はなぜ見に行くのか。爆弾とウイルスは本質的に違うけれど、生の演劇の持つ意味を十分に教えてくれる。
カトケンも気に入っているとパンフレットに書いているセリフがある。「役者というものは、他人の記憶の中にしか生きられない」。名セリフだ。自分は役者でないからその思いは分からないけれど、舞台に通い続けるというのは、心に刺さる記憶を刻み続けるためだと感じている。
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加藤健一事務所「ドレッサー」を京都へ見に行く 兵庫公演の日程に予定があったから、京都公演を取ったんだけど、明日25日から緊急事態宣言による休館、兵庫公演中止 社会情勢に翻弄される役者、公演、芝居への想い。テーマと「今日」が共鳴… https://t.co/VRkJ5AqNcF
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丸尾さんにお誘いいただいて 加藤健一事務所「ドレッサー」 観劇してきました☺️ この時期にこの作品… 観れて本当によかった 芝居、続けていこう!! 9月の THE SHOW MUST GO ON も楽しみです☺ https://t.co/4KGhrcRnUU #ドレッサー
3年以上前
しょんぼりである😢明日、タンタン🐼に会う為に事前に予約抽選当選してたんだけど…王子動物園が閉園決定してしまい…夕方から観る予定だった兵庫県立芸術文化センターでの舞台「ドレッサー」も中止になってしまった…!閉園と中止のダブルパンチ…悲しい。仕方ないので原稿でもするか…うっ。
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【4/25(日)兵庫公演中止のお知らせ】 大変残念ながら、この度の緊急事態宣言発出により、加藤健一事務所「ドレッサー」兵庫公演は中止となりました。詳細は下記主催者HPをご確認下さい。楽しみにお待ち下さったお客様に心よりお詫び申し上… https://t.co/yxakieAky0
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【重要】4/25(日)公演中止のお知らせ 緊急事態宣言発出により、下記公演は中止を決定いたしました。払戻し等は決まり次第お知らせいたします。お客様には心よりお詫び申し上げます。 ■河村尚子 ピアノ・リサイタル… https://t.co/7F5exVox9u
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4月25日の兵庫県立芸術文化センター 加藤健一事務所「ドレッサー」は公演中止。 兵庫芸文は緊急事態宣言期間は閉館で全公演中止とのこと。 なんてこと。昨年に続き2年連続とは…
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加藤健一事務所「ドレッサー」公演が無事終了!運営担当の皆さんと、マスクを一瞬だけはずして記念撮影です。この日は学生招待会でもあり、若い皆さんの深い感想に感心する一コマも。劇団の皆さん!ありがとうございました🤗 #加藤健一事務所… https://t.co/l5fBoTf6Sx #加藤健一事務所
3年以上前
舞台「ドレッサー」観てきた。愛すべきロクデナシの暴君カリスマ座長と、そんな彼への愛憎入り交じったくそデカ感情を抱える付き人の話なんだけど、イギリスの原作に忠実なのかな?予定調和なイイ話になりそうでならなくて面白かった
3年以上前
「ドレッサー」 札幌公演が無事終了しました! 札幌は運良く、昨日今日はとても暖かくて、 過ごしやすかったよ✨ ちなみに明日の最高気温は氷点下だそうな。 去年の夏に来た時とはまた違って、 冬の北海道もまた良いもんですね✨ https://t.co/WM0pc369s8 #舞台
4年弱前
朝倉 摂さんの描いた『たくさんのふしぎ』で舞台裏のいろんなお仕事が紹介されていたのはとっても素敵だった! https://t.co/xHdLhobBLf そういえば昨日観た加藤健一事務所『ドレッサー』の公演パンフレットに、演劇の… https://t.co/hnFktADc44
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加藤健一事務所「ドレッサー」面白かったです!
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加藤健一事務所『ドレッサー』へ。今まで何度も観てきた作品だけれど、第二次大戦中、空爆の中での劇場の話という設定をあまり意識したことはなかった。今回は緊急事態宣言下の観劇。70年前に劇場に集った人たち(架空だけど)に気持ちがシンクロ… https://t.co/lTMDy1jywp
4年弱前
そんなリア王なのですが、実は2013年に上演されたものの映像化には莫大な予算がかかるという理由で一切映像は残っておらず子猫並びに子ナ界隈の間では伝説とされている舞台「ドレッサー」の劇中で上演された作品でもあり、その時のリア王を演じた演者は橋爪さんが演じられていたのと
4年弱前
今回、緊急事態宣言のなか20時までの終演が難しく、初日公演が中止となってしまった。客席も50%。さぞ悔しい苦しいだろうけど、舞台を続けた劇中の人物と同じように、中央でお辞儀をする加藤健一さん/リア王はとても大きかった。でもね座長…… https://t.co/3HysNzH6Ys
4年弱前
演劇に人生を捧げること。その誇りと意地と不安と矛盾と…そこに渦巻く愛憎や揺れ動きはさながら『リア王』のようで。ドタバタする男2人の関係と、2人の女(女優で座長の妻、若手女優)の対比。それと違う場所に、すっと立つ舞台監督(一柳みるさん/劇団昴)の存在感 加藤健一事務所『ドレッサー』
4年弱前
加藤健一事務所『ドレッサー』 @東京芸術劇場プレイハウス、観劇 第二次世界大戦下、空襲でたくさんの劇場が焼かれたなか、『リア王』を演じる座長(加藤健一)と、彼をなんとか上演を続けさせようとする付き人/ドレッサー(加納幸和)のシ… https://t.co/QAvk4b9JeP
4年弱前
加藤健一事務所『ドレッサー』 https://t.co/Ycnitj3N9c @YouTubeより ロンドン大空襲のさなか、『リア王』を演ずる老齢の座長(加藤健一)。座長を宥めすかして支度をさせる付き人(加納幸和)。冷静沈着な舞台監督(一柳みる)の情感。困難な状況下での演劇!
4年弱前
加藤健一事務所「ドレッサー」初日おめでとうございます(*´꒳`*) 初演も観たけど、ほんと鵜山さんの演出と石井さんの美術に唸ります。 石井さんは通ってた大学の講師でしたが、朝一の授業で起きられず非受講だったのもったいなかった…… https://t.co/XzjsFw0hBA
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加藤健一事務所【ドレッサー】東京芸術劇場。舞台裏の可笑しさと、人の心のかみあわなさ。今の状況と被る戦時下の公演で、カーテンコールの座長の言葉が力強く響く。泣かないでノーマン。あなたのことは私の記憶の中に生きるよ。 東京公演短縮… https://t.co/J5TNYzqx0q
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加藤健一事務所『ドレッサー』へ。前回観た時はドレッサー(付き人)と座長の二人芝居な印象が強かったけど、今回は夫人や舞台監督の思いもグイグイ伝わってきた。自分の経験や状況で視点や感じ方が変わるのもこの戯曲のよさ。カトケンさんと加納さんのタイプの違うかわいらしさ。皆さん素敵でした。
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4年弱前
加藤健一事務所『ドレッサー』@東京芸術劇場プレイハウスを観てきました。わたしこの芝居初めて観るんですけど、同じ狭い楽屋にいながらの、座長(加藤健一)と衣裳係兼付き人・ドレッサー(加納幸和)、それぞれの孤独が素晴らしかった。これ、東… https://t.co/GAPQs1w2cs
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4年弱前
今日はこれから、東京芸術劇場プレイハウスで加藤健一事務所「ドレッサー」。 アルバート・フイニーとトム・コートネイの映画版も84年公開時に観たが、日本初演は三津田健・平幹二朗だったような。白鸚・幸四郎も良いかもしれない。 https://t.co/q0gRkZGIP4
4年弱前
【2/21(日)は発売日!】 ■4/25 加藤健一事務所 「ドレッサー」 ■4/25 河村尚子 Pf リサイタル ■5/12 三浦謙司 Pf リサイタル ■5/13~15 パンドラの鐘 ※3/28 イブラギモヴァVnリサイタルは公… https://t.co/xKaMP1KSWP
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