すてるたび(公演終了) 公演情報 すてるたび(公演終了)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-12件 / 12件中
  • 満足度★★★

    すてきれなかった名前
    すてるたびを観ていると、なんだか、世界が、白紙に戻って行くような感じがする。

    なぞなぞに、「じぶんのものなのに、たにんのほうがよくつかうもの、なーんだ」というのがあって、答えは、「なまえ」なんだけど、これが、幼稚園のころ、すごく不思議で、怖かった。すてるたびの向かう世界は、「なまえ」が不思議で怖いものだった、ちいさなころの自分がみていた世界に、どんどん帰っていくみたい。

    ネタバレBOX

    なんにもない空間に、パイプイスが四脚あるだけ。これを、どんどん動かして、空間が、いろいろな場面に、次々に変わっていく。それは、パッとかわるのではなくて、だまし船でだまされたみたいに、いつのまにか、ずれている、という感じに、変容していく。

    男の部屋が、葬儀場になって、電車の車内になって、神社になって、穴の通路になって、洞窟になって。イスの動きだけで、場面が、これだけかわる。ナマで観ると、ほんとうにすごい。

    また、それら、変化する場面で、四人の人物たちが、「タロ」という生きものらしいものを、扱う。これも、なにもないのに、四人の動きだけで、そこにいるように見える、不思議な生きものだ。犬だったり、死んだお父さんだったり、タロの実体は、よくわからない。定まらない。でも、それが、そこにあるようにみえる。

    この、定まらない世界を観るのは、なぜか、ものすごく気持ちがいい。自分が、ほぐれていく気がする。いつも、イスをイスとしてみようとしたり、犬を犬としてみようとしたり、そういう仕方で世界を見ている僕らにとって、この、名前をつけようとすると、すり抜けていくような、ゆるやかな世界は、とても自由なものに思えるのかもしれない。

    小さい頃の自分は、名前を、あんまり持っていない。とっても自由な世界だ。ものごとの境界線はとってもあいまいで、全部がつながっている。名前は、力で、名前が与えられると、そのものは、そのものでしかなくなり、安定するが、他のものである可能性は、うばわれる。

    すてるたびの世界だけではない、前田司郎が描く世界は、一様に、こういう、ものごとの境界線を、すこしずつほどいて、世界を、名付けられる前の状態に近づけてていこうとする、たびみたいだ。名前をつけることで、あたらしいものやことが生まれるとしたら、この舞台は、すべてが、生まれる前の世界を目指している。どんどん、はじまりに還っていく。

    還りついた先には、なにがあるのか。残念ながら、今回、すてるたびでは、わからなかった。というのも、この、白紙に還る、名前の呪縛から逃れていくような流れは、途中で、断ち切られてしまったからだ。

    それは、温泉の場面。洞窟の中にいたはずの主人公は、いつの間にか温泉宿の露天風呂に、兄と一緒に浸かっている。そこへ、女性たちの声が聞こえてくる。まずい、隠れよう。二人は、ぴたっと、動きを止める。入ってきた女性たちは、彼らに気づかない。そして、ひとりが、しゃがんだ兄を指差して、「カエル」と言う。この瞬間。

    僕には、しゃがんだ兄が、前田司郎にしか見えなかった。ここには、他の場面では、非常に注意深く用意されている、イメージの下準備がなされておらず、身体的な動きも、なかった。だから、僕は、「これはカエルですよ」という、女性の、言葉による説明を聞いて、しかたなく、前田司郎を、「カエル」としてみることを、承諾した。

    「前田司郎だったものが、そうでなくなる」のではなくて、ここでは、前田司郎が、「カエル」と名付けられる。そして、その瞬間、僕は、名前によって、びっしりと支配された、現実の世界に、戻ってきてしまった。夢から、醒めてしまった。それ以降、かなりの間、夢がもどってくることは、なかった。

    最後、四人は、「お父さん」の棺を、海に流す。でも、流れていかない。捨てきれない。すてるたびが、名付けをほどく、「名前」を捨てるたびだとしたら、それは、捨てきれなかった。それだけ、名前の、言葉の、支配は、強かったということかもしれない。前田司郎は、一瞬、気がゆるんだのか、名付けの権力を、ふるってしまった。

    もし、流れが断ち切られずに、ほどけつづけて、なにもかもがほどけてしまったら、舞台は、どこへ向かったろうか。観てみたかった。少し、怖いのだけれど。

  • うんうん
    素敵だった。

  • 連勤と連勤の狭間に
    観るには何だか心地よい夢のお話。

  • 満足度★★★★★

    笑いながら(悪)夢を巡るたび
    夢というのは、いろんな記憶が予期せずにやってくる。例えば、トイレに座っていると思っていたら教室の自分席だったとか、ずっと話をしていたのは、カトウくんかと思っていたら、サトウさんだったとか、一見脈絡なく空間や時間をネジ曲げながら続いていく。
    熱っぽいときの夢だったりすると、それは速く目の回るような回転のようなときもある。

    そんなことを観ながらフト思ったりした。自分にとっての悪夢は、他人から見れば、結構笑えたりするのではないかとも。

    弟の(悪)夢のような体験は、観客からの視線だと笑ってしまう。本人は、全身に汗をかき必死なのに。
    もがいてももがいてもどうにもならないような夢、暗い穴に落ちてくような夢なのに、笑ってしまう。
    弟の(悪)夢の原因は、一体なんだったのだろうか。

    他人が巡る(悪)夢を、爆笑しながら一緒に進むたびだった。たまに弟に同化して、やけに息苦しいときもあったりするのだが。

    でも、汗をたくさんかいて目覚めれば、熱はひいているかもしれない。

    五反田団は、これからもずっと観ていこうと雨の中思った。

    ネタバレBOX

    シンプルな舞台美術だからこそ見事にイメージが膨らむ。

    黒い大きなタロウが出てきたあたりと、海の水が満ちてくるあたりは悪夢の絶頂期であった。

    「海の中」から始まって、海で終わるサークルは出来過ぎのような気がしたし、ラストの台詞も、想定内だったような気がしないでもないが、悪夢は続かず目覚めたのだと、勝手に解釈した。
  • 満足度★★★

    わからなさ程度が
    妙に心地よくできあがってますよね。ファンタジーでもありホラーでもあり、人間ドラマにも見える。退屈する部分もあるけど、それはその時の気分やとらえ方による。今日はつまらなく感じても明日観たらわくわくしそうな気もしちゃうのが魅力。いや、今日つまらなかったわけじゃないんだけど。

    ネタバレBOX

    役者さんたちの妙な間の取り方と、椅子4つだけのセットと、脚本のちぐはぐさがやっぱりおもしろい。黒田大輔さんのとぼけ方が絶妙だから次々と展開される場面が見所になる。

    照明の暗さがそそるんだけど、眠気を誘うことも。物語に突き放されちゃうとね、次に寄り添えるまでの間に。

  • 難しい話だった。。。

  • 満足度★★★★★

    五反田団健在!
    とっても不思議なたびのお話。
    たびと言ってもどこかに旅行とか明確な目的地へ向かうというのではなく、話全体がどこかわからないどこかへふわふわと向かっていくような。
    「さようなら僕の小さな名声」のように不思議なたび。
    「タロウ」という、何だかよく分からない存在や父親の存在を語りつつ、長女、長男、次男、次男の嫁の4人が、とにかく不条理で不思議な世界をたびする。

    主人公次男を演じた黒田さんひとりに相当な負担がかかる、体力消耗度の激しそうなお芝居でした。
    黒田さんのお芝居はとにかくテンション高くて楽しい!
    あれは黒田さんだからこそ成り立ってる舞台ですね。

    舞台はほぼ素舞台で、椅子が4つ並ぶだけ。
    ライティングもとても地味なんだけど、この照明だけでいくつもの世界を作り出してしまう技術と演出力に改めて感心しました。

    五反田団はやはり五反田団以外の何ものでもないという存在感を示してくれた傑作でした!

    ネタバレBOX

    場面転換が秀逸。
    大体弟は前のシーンを引きずって存在しているのだけど、周囲が次のまったく別のシーンへ行ってしまう。
    慌てつつも、そのシーンへ馴染んでゆく次男。
    こういった夢の世界のような舞台では、こういった場面転換はとっても効果的ですね。
    五反田団が得意な方法ですが、今回は特にそれが活きていたように思えました。

    電車の中で肩に「タロウ汁」を浴びて洗いに行った長男役前田司郎さんが、次入って着たときは変なポージングで凄く良い笑顔!
    で、そのまま上手から下手へ移動していく。
    「観音様」らしいです!!

    この観音様の表情が凄く良くて爆笑でした。

    全体的にふわふわとした世界を旅する感じですが、ひとつひとつのセリフや演出がおかしくって、場内は笑声が絶えませんでした。

    シチュエーションコメディーみたいに計算して伏線を張り巡らせた笑いとは違う、職人芸的な笑いを堪能しました。

    五反田団、大好きです!
    来年も活動が活発みたいで楽しみです。
  • 夢ならもっと…。
    受付で料金が1500円といわれ、思わず聞きかえす。安いなあ。
    そして、弟(黒田大輔)がひたすら愛らしく、
    兄役の前田司郎の役者としての佇まいも相変わらず好ましい。

    面白かったし、終演後の印象もやっぱり安いなあ、なんだけど、
    ただ、
    タイトルの「捨てる旅」あるいは「捨てる度」という軸がきっちりしすぎちゃってるように思えて、
    ちょっと展開に自由度が不足していたように感じてしまった…。

  • 満足度★★★★

    ヘリコプター
    ってほんといいアトリエ。超いまふうな、大崎超高層マンション街を抜けると、いきなり、昔ながらの大崎の工場街、「東洋現像所」が「イマジカ」に替わるようにどんどんおしゃれーな町に…。その中で、ほんとに「町工場」って感じの、ヘリコプターはすてきすぎます。1階ロビーには図面入れの木製キャビネットや計測機器なんかが、セットのようにおかれ、うーむ「明和電機」(?)という雰囲気も。
    でもそのアトリエに100名からはいるんです。
    すごいです、さすが前田司郎です。今回1500超の動員予定とか、、、
    アトリエ公演の規模を越えてますね。

    とにかく「紐付き」の助成金で芝居をやるのは止めたほうがいいってことですね。
    あんな、妄想形ゆるゆるは「新国立」ではできません(笑)。
    シャンプーハット黒田が激しくて、いいパッションを高いテンションで表現。次はサンプルだって、楽しみ。

    いいアトリエもってるんだから、好きなことをやってくれたまえ。

  • 満足度★★★★

    白昼夢か、それとも人生か。
    前田司郎の思うような展開にほくそ笑む。なるほど、紛うことなく変な夢だ。
    彼がしつこくテーマとしてきた「生と死」が、今回も根強く見えている。
    人生を旅に例えるだけなら安易だ。
    しかしながら、ニッチなところを攻めるのは流石の五反田団クオリティ。

    4つの椅子で、情景を浮かび上がらせるのはチープだけど、凄い。
    「チープだけど」という枕詞がつくのは、五反田団として正しいんだと思う。
    今までとは少し違った見せ方が新鮮であった。

    それにしても、黒田大輔に五反田団は似合いすぎる。

    ネタバレBOX

    子作り神社(酷い名前だ…)の穴(まあ、椅子なんだけど)を潜る所など、
    どこまでも飛躍していく感があって、温泉に辿り着く所など秀逸。
    まあ、暗喩と言えば暗喩なんだけど。

    しかしながら、ラストにかけて、ちょっと失速。
    なんか、脱力というよりは失速の感がある。
    息切れというか、まとめにかかりつつ散らかそうとしたというか。

    結局、有機的な繋がりに欠けるものになってしまった感が否めない。
    不条理とは言え、繋がりは大事。
  • 満足度★★★★

    各駅停車のたび
    いろいろな考え方のできる、うつらうつら夢見ながら観ることのできる演劇。なんか素敵で詩的。なっとくなセリフがちりばめられていて、ガタンガタンゴトンゴトンピタピタ…ときこえてくるような、温泉旅行へ行きたくなるような、、、観て良かったです。初めての五反田団でした。

  • 満足度★★★

    おもしろかったのですが‥
    自分なりに深層心理を読解をしながら観てましたが、
    前半楽しめたけど、付き合い続けるのはちょっとつらく‥

    黒田さんは、ハイバイ「ポンポンお前の自意識に‥2007年」と
    同じテイスト。本当にこの手のキャラクターの作り方うまいなー

このページのQRコードです。

拡大