レディエント・バーミン Radiant Vermin 公演情報 レディエント・バーミン Radiant Vermin」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-3件 / 3件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    「浮浪者を1人殺すと殺害現場が光に満たされて望みどおりに改装される」
    現実ではとてもあり得ないようなダークファンタジー設定を敢えて現実化することで
    “子供のことを第一に考えているような平凡な良い人”のタガがどんどん狂って一線を
    超えてしまうまでを描いた作品。

    最初が絶対にありえないのだから、作品全体も英国的なブラックユーモアがいきすぎていて
    終盤の躁的な演出も込みで辟易する人もいそう。実際、暑い屋外の庭園パーティーで何度も
    何度も連打される近隣住民との意味ない会話の「連続再生」にはちょっと見てて疲れた……。

    オリーとジルの若い夫婦が中産階級や新富豪ならともかく、浮浪者とは2段階くらいしか違わない
    貧乏暮らしをしていた身だと考えると、この劇作がより生々しく感じられるよなと。

    ネタバレBOX

    あらすじとしては、「夢も希望もこの先なさそうな」ボロボロの貧乏住居に
    住んでいたオリーとジルが役所から突然の手紙をもらう。

    その手紙には選ばれた貴方たちに新しい家を贈与しようという到底信じられ
    ないようなことが書かれており、半信半疑で外れにあるバラック街に向かうと
    そこには担当の「Miss D」がおり、引っ越しの代金も何もかもこちらで持とうという。

    最初は疑っていた2人だったが背に腹は代えられないということもあり、怪しげな
    家に住むも、ひょいと侵入してきた近隣のホームレスともみ合いになるうちに彼を
    殺してしまう……

    という話。

    この作品は、劇場に集まった観客たちに2人が奇妙な体験を振り返りつつ、なぜ
    自分たちがこんなに変わってしまったのかの顛末を明かす、という形式で終始
    進められるのだけど、いきなり観客席に降りてきたり観客一人一人を指して
    意見を求めてきたり、多数決を取ってみたりと、寺山修司の天井桟敷ならぬ
    「観客巻き込み型」の演劇になってます。

    見てて思ったのだけど、この客席と舞台の境界を溶解させるのには2つ効果が
    あると思っていて、1つは舞台で起こっていることを他人ごとにさせない、
    観客を舞台の方に無理やり引っ張り込むことでこちらをいたたまれない気分に
    させたり、反発させたりすることで自分もこの現実に「加担している」という
    ことを突き付けるのがそれですね。

    でもう1つなのだけど、主演2人と観客を同じ立ち位置に並べることで、
    姿かたちは人間で自称「いい人」の彼らがどれだけ変貌してしまって、
    自分たちとはもはや異質な「何か」になってしまっているのか、それを
    知るためのリトマス試験紙的な効果がある。

    主役の2人は最初、「いい人」だから人なんか殺さないと言っていた。
    それが人1人殺すと家が素敵に生まれ変わると知った途端、どうやったら
    効率的に大量の人を殺して家をどんどんリフォームできるか、そんな計画を
    笑顔で立てるようになる。

    当然何人も何人もそれこそ数十人、数百人の単位で始末するようになると
    無意識化で良心や罪の意識も襲い掛かってくるんだけど彼らは観客である
    こちらに「告解」することで(ジルが敬虔な環境の家庭に生まれたという
    設定がある他、神の無意味さを茶化すようなセリフが子供から飛び出したり、
    非常にキリスト教の影響も感じる)

    僕らの罪は同じような人間の観客に赦された、だからまた続けて「リフォーム」
    頑張るぞ、おー!みたいな空気になってしまう。

    よくよく考えると、そんな感じの発想の回路になっちゃってる時点で、もう2人は
    「人間じゃない何か」になってしまっているわけで、でも彼らも一番最初は確かに
    「何の変哲もない僕らと同じ平凡なあんまり豊かでもない人間」だったわけで、
    じゃあ、観客たるこちらもまさかもまさかなこんな環境に放り込まれたら殺人
    マシーンみたいな感じに生まれ変わっちゃうのかな……と不安になったりもする。

    それが本作における、作者の狙いな気がする。

    それにしても、あの2人、最初は生まれてきたベンジャミンのためということに
    なってたけど、最後の方は家をどんな環境にするかというよりも、どうやって
    大量に人を一瞬で殺すかに話題の中心が移っちゃってて、

    「ベンジャミンのために仕方ない」とか「ホームレスはクズだから殺しても
    構わない」とか、全部後付けの話で本当は眠っていた「本能」が目覚めて
    しまってて、全部が全部政府の実験だったんじゃないかとすら思っちゃう。

    この2人はホームレスじゃなくても、金持ちでも、普通の市民でも、何か正当化
    する理由が見つかれば殺してしまうのではないか。そんな気がしました。

    あと、「観客巻き込み型」の性質をうまく生かした「Miss D」再登場のラストは
    秀逸すぎた。夢の家は要らんです。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ブラック・ジョークのような作品で刺激的で終始ハイテンションで展開する。人の命が部屋の模様替えの手段程度に軽く扱われるのは何ともきつい冗談。最後も人を喰ったようなエンディング。主役2人は見ていて気の毒なぐらいの熱演だが、見ているこちらがだんだん飽きてくるきらいはある。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「AHー!LOVE BEAT!YEAH!」
    自分で自分の首を両手で絞める決めポーズ。

    U2 の「Vertigo」が格好良く流れ、作品のノリは『ナチュラル・ボーン・キラーズ』や『ハウス・ジャック・ビルト』を彷彿とさせる。(どちらも連続殺人鬼の主人公を痛快に描いた作品。『NBK』はタランティーノの脚本をオリバー・ストーンが台無しにしてしまった失敗作だが)。悪意に満ち溢れた作風はもろラース・フォン・トリアー流。好きな人にはたまらない。ニヤニヤする。

    20代後半の夫婦、オリー(井之脇海氏)とジル(清原果耶さん)。生活は苦しくボロい賃貸での暮らし、しかもジルは妊娠中。そんな時に舞い込む一通の手紙。政府の推進する国家プロジェクトに選出され、無償で一軒の家を差し上げますと。詐欺か悪戯か何が目的か?ジルが封筒の連絡先に電話を掛けると間違いないと言われ、やって来る担当者のミス・ディー(池津祥子さん)。悩みつつも契約し、現地に向かう。そこは荒廃したスラム、浮浪者の溜まり場の地区。広いが老朽化した屋敷、周囲は空き家だらけ。電気も通っていない、お湯も出ない屋敷を自分達の力で改修せねば。ぐったりしながら二階の寝室で寝ると、階下からの物音で起こされる。浮浪者が盗みに侵入して来やがった!

    清原果耶さんは2020年、『宇宙でいちばんあかるい屋根』を観に行った位の接点。いざ目の前で見ると圧倒的美人。鼻が高く山本恵里伽アナウンサーっぽいか。笑顔が満島ひかりに似てる気がした。美人過ぎて役柄が限定される懸念。

    井之脇海氏も魅力的。アスリート並みの運動量。親近感を湧かせるキャラ。

    何と言っても池津祥子さんが凄腕。『黒イせぇるすまん』風味。この世界を力尽くで納得させ成立させる。

    とにかく客を弄る。通路後方から現れ客一人ひとりに語り掛ける。客席の間にまで入る。とにかく観客を巻き込む。これはオハナシではなく貴方の選択すべき現実です。さあどちらを選びますか?お考え下さい。

    終演後、客席後方で演出の白井晃氏、手応えがあったのだろう、してやったりの満面の笑み。コンプライアンスに蹂躙されたこの世界に中指を突き立てる。嘘ばかりの世の中で本当のことを叫んでやる!
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    浮浪者ケイのエピソード、池津祥子さんの二役。後になって気付いた程、全く違って見えた。

    今作、嫌いな人は大嫌いだと思う。非常に危ういネタ。クライマックス、息子ベンジャミン一歳のバースデイを祝って催す盛大なガーデンパーティー。招待した四軒の隣人家族達との遣り取りを清原果耶さん、井之脇海氏二人で精密に再現。狂ったようなアップテンポで躁状態の狂乱を語り尽くす。
    「AHー!LOVE BEAT!YEAH!」
    自分で自分の首を両手で絞める決めポーズ。
    何度も何度も繰り返される遣り取りに段々観客はラリってく。ビデオドラッグにヤラれてく感覚。メチャクチャな荒波に呑まれては流され吹っ飛んでは沈み飛ばされた意識は途切れ途切れてブラックアウト、ふと気付けば何がなにやら朦朧と。

    タイトルの意味は『光輝く社会の汚物』。優生思想への諧謔風味。物語のその先はホロコーストへ突き進むと予感させる。ふと阪本順治の『鉄拳』なんか思い出した。

    日本なら闇バイトの見知らぬ老人を襲う強盗殺人事件に一番ニュアンスが近いだろう。幸せになる為に要らない連中を始末するだけ。浮浪者、障害者、老人、外国人労働者、イスラム教徒、左翼活動家···。汚く醜く迷惑で弱い連中を掃除してやることはきっと良いことなんだろう。綺麗でカッコイイ連中しかいないイカした世の中にしよう。それこそが理想の社会。トランプやネタニヤフ、プーチンに習近平、みんな理想の社会を目指して殺戮している。
    「AHー!LOVE BEAT!YEAH!」
    自分で自分の首を両手で絞める決めポーズ。

    人間を止めるものは痛みと恐怖と不安だけ。それを感じられないと何処までも行ってしまう。そして今、一体ここは何処なんだ?

    BLANKEY JET CITY 「悪いひとたち」

    荒んだ心を持ったHoney ヨーロッパ調の家具をねだる
    SEXに明け暮れて麻薬もやりたい放題
    ツケが回ってくるぜ でもやめられる訳なんてないさ
    そんなに長生きなんかしたくないんだってさ
    それを聞いたインタビュアーが「カッコイイ!」って言いやがった

    ※この『それを聞いたインタビュアーが「カッコイイ!」って言いやがった』って歌詞に当時グラングランやられた。

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