レディエント・バーミン Radiant Vermin 公演情報 世田谷パブリックシアター「レディエント・バーミン Radiant Vermin」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    「浮浪者を1人殺すと殺害現場が光に満たされて望みどおりに改装される」
    現実ではとてもあり得ないようなダークファンタジー設定を敢えて現実化することで
    “子供のことを第一に考えているような平凡な良い人”のタガがどんどん狂って一線を
    超えてしまうまでを描いた作品。

    最初が絶対にありえないのだから、作品全体も英国的なブラックユーモアがいきすぎていて
    終盤の躁的な演出も込みで辟易する人もいそう。実際、暑い屋外の庭園パーティーで何度も
    何度も連打される近隣住民との意味ない会話の「連続再生」にはちょっと見てて疲れた……。

    オリーとジルの若い夫婦が中産階級や新富豪ならともかく、浮浪者とは2段階くらいしか違わない
    貧乏暮らしをしていた身だと考えると、この劇作がより生々しく感じられるよなと。

    ネタバレBOX

    あらすじとしては、「夢も希望もこの先なさそうな」ボロボロの貧乏住居に
    住んでいたオリーとジルが役所から突然の手紙をもらう。

    その手紙には選ばれた貴方たちに新しい家を贈与しようという到底信じられ
    ないようなことが書かれており、半信半疑で外れにあるバラック街に向かうと
    そこには担当の「Miss D」がおり、引っ越しの代金も何もかもこちらで持とうという。

    最初は疑っていた2人だったが背に腹は代えられないということもあり、怪しげな
    家に住むも、ひょいと侵入してきた近隣のホームレスともみ合いになるうちに彼を
    殺してしまう……

    という話。

    この作品は、劇場に集まった観客たちに2人が奇妙な体験を振り返りつつ、なぜ
    自分たちがこんなに変わってしまったのかの顛末を明かす、という形式で終始
    進められるのだけど、いきなり観客席に降りてきたり観客一人一人を指して
    意見を求めてきたり、多数決を取ってみたりと、寺山修司の天井桟敷ならぬ
    「観客巻き込み型」の演劇になってます。

    見てて思ったのだけど、この客席と舞台の境界を溶解させるのには2つ効果が
    あると思っていて、1つは舞台で起こっていることを他人ごとにさせない、
    観客を舞台の方に無理やり引っ張り込むことでこちらをいたたまれない気分に
    させたり、反発させたりすることで自分もこの現実に「加担している」という
    ことを突き付けるのがそれですね。

    でもう1つなのだけど、主演2人と観客を同じ立ち位置に並べることで、
    姿かたちは人間で自称「いい人」の彼らがどれだけ変貌してしまって、
    自分たちとはもはや異質な「何か」になってしまっているのか、それを
    知るためのリトマス試験紙的な効果がある。

    主役の2人は最初、「いい人」だから人なんか殺さないと言っていた。
    それが人1人殺すと家が素敵に生まれ変わると知った途端、どうやったら
    効率的に大量の人を殺して家をどんどんリフォームできるか、そんな計画を
    笑顔で立てるようになる。

    当然何人も何人もそれこそ数十人、数百人の単位で始末するようになると
    無意識化で良心や罪の意識も襲い掛かってくるんだけど彼らは観客である
    こちらに「告解」することで(ジルが敬虔な環境の家庭に生まれたという
    設定がある他、神の無意味さを茶化すようなセリフが子供から飛び出したり、
    非常にキリスト教の影響も感じる)

    僕らの罪は同じような人間の観客に赦された、だからまた続けて「リフォーム」
    頑張るぞ、おー!みたいな空気になってしまう。

    よくよく考えると、そんな感じの発想の回路になっちゃってる時点で、もう2人は
    「人間じゃない何か」になってしまっているわけで、でも彼らも一番最初は確かに
    「何の変哲もない僕らと同じ平凡なあんまり豊かでもない人間」だったわけで、
    じゃあ、観客たるこちらもまさかもまさかなこんな環境に放り込まれたら殺人
    マシーンみたいな感じに生まれ変わっちゃうのかな……と不安になったりもする。

    それが本作における、作者の狙いな気がする。

    それにしても、あの2人、最初は生まれてきたベンジャミンのためということに
    なってたけど、最後の方は家をどんな環境にするかというよりも、どうやって
    大量に人を一瞬で殺すかに話題の中心が移っちゃってて、

    「ベンジャミンのために仕方ない」とか「ホームレスはクズだから殺しても
    構わない」とか、全部後付けの話で本当は眠っていた「本能」が目覚めて
    しまってて、全部が全部政府の実験だったんじゃないかとすら思っちゃう。

    この2人はホームレスじゃなくても、金持ちでも、普通の市民でも、何か正当化
    する理由が見つかれば殺してしまうのではないか。そんな気がしました。

    あと、「観客巻き込み型」の性質をうまく生かした「Miss D」再登場のラストは
    秀逸すぎた。夢の家は要らんです。

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    2026/06/28 12:19

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