STONEψWINGS第8回公演「令嬢ジュリー」2007
作品紹介
http://www.stone-wings.com/MISSJULIE.htm
イプセンやチェーホフと同じく世界的に名高いスウェーデンの劇作家、アウグスト・ストリンドベリの代表作『令嬢ジュリー』(1888)は、彼が演劇の未来を予期して書いた作品であり、事実現在も世界中で上演されています。そこには、人間の、もっといえば男女の、満たされない普遍的欲求を内包しているのです。
わたしたちは120年前のこの作品が、男女の容易に解決できぬ葛藤や、上下関係と信頼関係の脆さ、信じることと期待することの危うさを、驚くほど現代的に描いていると理解するでしょう。
美しいものも醜いものも、ありのままに人間を描いたストリンドベリ。目を背けたくなる冷酷な描写もさながら、性的な描写も人々にショッキングを与えました。ただ、ストリンドベリは、「令嬢ジュリー」を未来の演劇を意識しながら書いており、このありのままの人間描写は、現代に来て、より普遍性を感じます。まさに我々が目を向けざるをえない現代のメタファーに満ちているのです。
英国を代表する、ノーベル文学賞劇作家ハロルド・ピンターの作品には「Power-Play」という要素が見られます。これは、立場の逆転です。この元祖こそ「令嬢ジュリー」であり、この両者の作家においては様々な共通点が見られます。
全てにおいてまったく清新な現代劇として甦らせた『令嬢ジュリー』。台詞の一つ一つを丹念に練り直し、原作における多くの難点をクリアにさせ、ハロルド・ピンターのような、緊密な空気が支配する、アーティスティックでイマジナティブな台本に仕上げました。
演出は英国式のメソッドを適用し、STONEψWINGSらしい、芸術性と創造性に富む舞台に昇華させています。
〔原作〕
アウグスト・ストリンドベリ
〔共催〕
中央公論新社
〔後援〕
スウェーデン大使館
〔脚本・演出〕
別役慎司
〔出演〕
藪崎ひと美
別役慎司
水地優子
井上健一
広井憲太郎
江面円香
田代裕季
長真由