満足度★★★
前衛的な美しい、夢を見た気分
イサムノグチの作品は、感じることはできても、あまり理解し得たと思ったことはありません。
どんな人物だったのかも、よくわからない印象。
そういう、不可思議な人物を、窪塚さんが、体現される様子が、小気味よい舞台作品でした。
日本の古式ゆかしさを大事にする彼の考え方に、そんなもの、とっくに消え失せたこの国の人間として、辛い戦慄めいた思いが、何度も心をよぎりました。
村上春樹の作品を舞台化したような非現実的なシーンと、昔の、日比谷芸術座で上演したような東宝現代劇チックなシーンとが、ないまぜになった、一種アンシンメトリーな舞台空間でしたが、それが不思議とアンバランスでもなくて、何だか曰く言い難い観劇体験をさせて頂きました。
視覚的に、妙に心に残る美しい舞台でした。
満足度★★★
宮本亜門の眼を通した「iSAMU」
宮本氏が3年の年月をかけて完成させた、という「iSAMU」。
窪塚洋介の、軽やかで繊細な動きもあって、一時代を単に
切り取るだけでなく、今の時代にまで脈々とつながるものを
表現できたのではないかと感じました。
満足度★★
散漫な印象
イサム・ノグチの幼少期、戦後の活躍期、そして現代が断片的に絡まり合いながら展開する物語でしたが、ストーリー的にも演出的にも大きなテーマに向かって収束しないまま終わってしまった印象を受けました。
月・飛行機・数字といったモティーフを巧みに関連させてはいるものの、90分間の上演時間は3つの時代を描くには短くて、各エピソードが並列的に提示されているだけで、そこから先の発展があまり無く、物足りなさを感じました。
各時代でイサムと関わる女性達に重要な役割を担わせようとしている割には描写が浅く、葛藤や愛情といった心情があまり伝わって来ませんでした。
一つの時代に絞って丁寧に描くか、あるいはもっと断片化してイメージの連鎖として表現した方が良いと思いました。
立体的な白いセットを照明と映像で変化させてスムーズに場所や時間が切り替わり、スピード感はあったものの、BGMや環境音が常に流れていたり、場面毎に背景をセットに映像で投影したりと説明的な情報が多過ぎで、観客が想像する余白が残されていなくて息苦しさを感じました。
音楽はミニマル・ミュージックや実験的な電子音楽をメインに用いていましたが、作品の内容からすると人の温かみが感じられるアナログ感のある音楽の方が合っていると思いました。
映像はプロジェクションマッピング的なこともしていましたが、一瞬目を引くだけで、それ以上の効果が感じられませんでした。
役者の演技はそれぞれのキャラクターがしっかり立ち上がっていて良かったのですが、脚本や演出が演技を活かしていなくて勿体ないと思いました。