『iSAMU』 20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語 公演情報 『iSAMU』 20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 2.7
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★

    前衛的な美しい、夢を見た気分
    イサムノグチの作品は、感じることはできても、あまり理解し得たと思ったことはありません。

    どんな人物だったのかも、よくわからない印象。
    そういう、不可思議な人物を、窪塚さんが、体現される様子が、小気味よい舞台作品でした。

    日本の古式ゆかしさを大事にする彼の考え方に、そんなもの、とっくに消え失せたこの国の人間として、辛い戦慄めいた思いが、何度も心をよぎりました。

    村上春樹の作品を舞台化したような非現実的なシーンと、昔の、日比谷芸術座で上演したような東宝現代劇チックなシーンとが、ないまぜになった、一種アンシンメトリーな舞台空間でしたが、それが不思議とアンバランスでもなくて、何だか曰く言い難い観劇体験をさせて頂きました。

    視覚的に、妙に心に残る美しい舞台でした。

    ネタバレBOX

    最初と最後の、航空機の機内のシーンが、大変印象的でした。

    美しい絵画を鑑賞したような気持で、舞台の中に吸い込まれて行って、夢の中を浮遊しているような素敵な安らぎがありました。

    ところが、一転、建築家の丹下さんや、魯山人や、山口淑子とのシーンでは、まるで、舞台進行が、ベタな、東宝現代劇みたい。菊田一夫の演出舞台とかを思い出してしまう。

    とてもチグハグな構成のような気がするのに、あまり違和感はない。

    その不可思議な舞台構成が、まさにイサムその人の人生ををそっと物語るかのような、心ではなく、目で感じる作品だったように思いました。
  • 満足度★★★

    宮本亜門の眼を通した「iSAMU」
    宮本氏が3年の年月をかけて完成させた、という「iSAMU」。

    窪塚洋介の、軽やかで繊細な動きもあって、一時代を単に
    切り取るだけでなく、今の時代にまで脈々とつながるものを
    表現できたのではないかと感じました。

    ネタバレBOX

    まだ母親と暮らしていた時のイサム、功なり名遂げて...
    日本に凱旋し、原爆記念公園の設計に取り掛からんと
    する壮年期のイサム、そして、現代、「9.11」直後の
    ニューヨークに暮らすカップル、の三つの時代が交錯
    する本作品。

    そこで見えてくる「イサム・ノグチ」の姿は、心に
    孤独を抱え、祖国日本でも、第二の故郷アメリカでも
    その国の人間になりきれない寂寥の念を持ち、

    敗戦を経て、すっかり変わってしまった日本の地で
    「昔ながらの自然との調和を基とした日本の美」を
    唱えるも、自身の妻(イサム・ノグチの妻が一時のみ
    李香蘭だったの初めて知りました…)にも理解されない
    苦悩に打ちひしがれる、小さなもの。

    場面場面に入ってくる、後方スクリーンのナレーションが
    またうまいんですよね。「これまで歩んできた過去の自分は
    まるで別の自分のような気がする」

    確かに、振り返ればそんな気もしないではないです。

    最後、イサムは、自分が亡くなって何十年も経過した
    懐かしの土地、ニューヨークで、そこに暮らすカップル達と
    自身が作り上げたさいころ状の立体作品を見上げ、

    恐らく、自分の存在は自身が愛した宇宙よりは小さいのだと
    いう絶対に動かない事実、

    でも、そんな小さな人間でも、もしかしたらその作品は
    時代を超えて残るのではないか、そこで作り手の生きてきた
    人生も完結するのでは、と感じました。

    それにしても…舞台の上の星空なのに、すごく綺麗だった。
    この夏という時期にぴったりの作品でしたね。
  • 満足度★★

    散漫な印象
    イサム・ノグチの幼少期、戦後の活躍期、そして現代が断片的に絡まり合いながら展開する物語でしたが、ストーリー的にも演出的にも大きなテーマに向かって収束しないまま終わってしまった印象を受けました。

    月・飛行機・数字といったモティーフを巧みに関連させてはいるものの、90分間の上演時間は3つの時代を描くには短くて、各エピソードが並列的に提示されているだけで、そこから先の発展があまり無く、物足りなさを感じました。
    各時代でイサムと関わる女性達に重要な役割を担わせようとしている割には描写が浅く、葛藤や愛情といった心情があまり伝わって来ませんでした。
    一つの時代に絞って丁寧に描くか、あるいはもっと断片化してイメージの連鎖として表現した方が良いと思いました。

    立体的な白いセットを照明と映像で変化させてスムーズに場所や時間が切り替わり、スピード感はあったものの、BGMや環境音が常に流れていたり、場面毎に背景をセットに映像で投影したりと説明的な情報が多過ぎで、観客が想像する余白が残されていなくて息苦しさを感じました。

    音楽はミニマル・ミュージックや実験的な電子音楽をメインに用いていましたが、作品の内容からすると人の温かみが感じられるアナログ感のある音楽の方が合っていると思いました。
    映像はプロジェクションマッピング的なこともしていましたが、一瞬目を引くだけで、それ以上の効果が感じられませんでした。

    役者の演技はそれぞれのキャラクターがしっかり立ち上がっていて良かったのですが、脚本や演出が演技を活かしていなくて勿体ないと思いました。

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