アイドル、かくの如し 公演情報 アイドル、かくの如し」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.6
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  • 満足度★★★

    岩松了的アイドル論&観客論
     岩松了とアイドルという取り合わせは、ちょっと意外な気もするが、よく考えてみれば、これまでのドラマ、映画、舞台出演を通して、間近でアイドルに接する機会も決して少なくはなかったはずである。
     「アイドルがドラマ出演すること」について、事務所の意向や、ファンの反応などの実態を見て、アイドルたちにどのような葛藤があったか、それらが演劇化するに相応しい題材だと判断したのだろう。芸能事務所の一室だけに限定された舞台で、そこに集う関係者たちの思惑の違いが作り出すドラマは、極めて繊細で、時には激しく、時には静かな中にも狂気すら感じさせて、観る者を飽きさせない。岩松了お得意の「幻想」シーンも、ここぞというクライマックスに差し挟まれる。
     しかし、観劇後の印象は、一言で言えば「後味が悪い」。それは岩松了の他作品についても言えることだが、登場人物がみな、アダルトチルドレンであり、アイドルに群がる人々が「模範としての大人」とはほど遠く、それはアイドルを食い物にしているマスコミも、そして観客である我々もまたアイドルの心情を思いやる気持ちに欠けた「ダメな大人」であることを暗に指摘されてしまっているからであろう。
     それは岩松了の計算通りではあるのだろうが、劇中のアイドルが哀れさを増すに付けても、芸能界に、そして世間に、もう少しマトモな大人はいないのかという憤懣を抱かないではいられないのである。

    ネタバレBOX

     劇中、アイドル・高樹くらら(上間美緒)が、ドラマ出演に不安を抱くシーンがある。偶然にも先日、AKB48の前田敦子が、役者を続けることのプレッシャーを述懐していた。歌って踊ってだけがアイドルに求められる要素でないのは、アイドルの旬が極めて短期間であることを、関係者の誰もが熟知しているからだ。あえて断言すれば、「役者の道」を選ばない限り、アイドルには殆ど生き残りの道がない。
     事務所の所長である祥子(夏川結衣)と夫の古賀(宮藤官九郎)は、くららに役者の才能がないと思いつつも、無理やり仕事を押しつける。ストレスに耐えられないくららが頼ったのは、ディレクターの「平野」だった。
     この劇の中で最重要人物なのは、この“最後まで一度も登場することがなかった”平野だろう。もちろんこれは『ゴドーを待ちながら』のゴドーなのであって、実はこの世界の中心となる「論理」の象徴的存在である。この平野がどんな人物かというと、未成年への淫行事件を起こして逮捕され、自殺したとんでもないやつなのだ。しかしそんな腐った人間を“愛さなければならなかった”くららの苦悩の深さ、この劇の登場人物の誰一人として、「頼れる大人がいない」という悲痛な現実が、くららという「アイドル」を取り巻く環境なのである。

     自殺したのは、愛された平野の方である。しかし私は、くららと平野の関係に、自殺した実在のアイドル・岡田有希子と、峰岸徹の関係を重ね合わさないではいられない(自殺したアイドルは他にもいるが、象徴的なのはやはり岡田有希子のケースである)。
     岡田有希子は、同世代のアイドルの中では、かなり「しっかりした」印象があった。劇中のくららも、今どきのアイドルにしては、随分と喋り方が大人びていて硬い。それは「頑なさ」の表れでもある。マネージャーの百瀬(津田寛治)はあからさまに自分に好意を抱いているが、気持ちを汲んでくれる人間ではない。所長の祥子は、事務所の先輩であるトシノブ(金子岳憲)を「破滅」に追いやった人物であり、元女優という、まるで「見たくもない自分の未来」を見せつけられているような存在である。そして、自分を芸能界に送り込んだ母親の木山(宮下今日子)は、作詞家の池田(岩松了)と不倫関係にある。古賀もまた秘書の坂口(伊勢志摩)と不倫しているが、当然くららはその事実にも気付いているだろう。
     彼らが淫行事件を起こした平野よりもさらに下劣だったのか、冷静に考えれば疑問ではあるが、少なくとも、くららにとっては「そう見えた」のだろう。彼女の孤独には「救い」というものが感じられない。
     どうしてくららは自殺しなかったのか、平野の自殺が、そして明示はされないが、トシノブの「事故死」が、くららを呪縛したのだ。破滅もさせて貰えない、「アイドル」という名の牢獄の中に。

     祥子は、トシノブとくららの姿を幻視する。それは祥子がトシノブの死に責任を感じるがゆえの防衛機制だ。祥子は、幻視したくららの口から、「みんな、平野さんに死んでほしかった」と言わせる。しかし「自己を責める」行為は、本当の意味での贖罪ではなく、たいていの場合は「責めた自分」を認識することによって自己否定から逃れるための手段なのだ。
     大人たちは、誰一人、アイドルの未来に責任を負ってはいない。

     アイドルは虚像である。虚像でなければアイドルとは呼ばれない。しかし、虚像を演じきれる人間などいるのだろうか。「大人にならなきゃ」と言い残して消えたトシノブの言葉が虚しく聞こえるのは、虚像に大人的要素など誰も求めてはいず、そして転落していくアイドルに、周囲の「見かけだけは大人」な人々が、誰も助けの手を伸ばさないということだ。

     もちろん、観客である我々も。
  • 満足度★★★

    有名な役者
    役者の演技にはものすごく魅かれたけど、話がよくみえない感じが最初から
    あった。チケットを買い遅れれてかなり後方で観たせいもあるかもしれない。
    古賀と祥子の夫婦はそれはそれは現実的であって、普通に共感はできたのだけどね。

    ネタバレBOX

    津田さんと伊勢志摩さんがすごくはじけていて面白かった。
    もっと前で観たかったな~~~
  • 満足度★★

    前半が退屈だった。
    休憩ありの前半、後半各70分の舞台だったが、前半の必要性をそれほど感じなかった。
    前半のラストになりやっと物事が動きだし、後半は微妙な人間関係やキャラクターの人間性を見ることができたが、それも薄っぺらく感じた。
    微妙な演技をするには役者の力が足りてなかったようにも思える。
    これだけの時間をかけるなら、せめて後半くらいの密度ですべてやってほしかった。

  • 満足度★★★★

    結構
    見ごたえのある役者さんが揃ってた
    と思います。
    舞台の面白さがでて良かったと思いました。

  • 満足度★★★★★

    人物がとても魅力的に
    登場する人物が誰も謎と欠落を抱えているが魅力的。作品も謎がたくさんあるのだが、惹きつけられて最後まで目が離せなかった。 おもしろい。

  • 満足度★★★★

    よかった
    すっと舞台の世界に入っていけた。配役表が登場順。伊勢さんがいい味を出していた。

  • 満足度★★★★

    大人の恋愛群像劇
    謎を謎として舞台に乗せ、すばやく置き去りにし、観客を翻弄する。私はそれがとても心地いいです。舞台装置そのものが人間に見えました。

  • 満足度★★★★

    虫がつかないように
    クドカンがかっこよくて、ツダカンが熱くて、…。伊勢志摩さんと夏川さんが似ていて…。出演者みんな一癖以上の方々でしかも作・演出の岩松さんがどっしりといやらしく…。前半??がたくさんあったけど後半ふむふむとドキドキしながら笑いました。

  • 満足度★★★★

    ずっと見たかった。。。
    ツダカンさんが面白いです。狂っているのにポップ。

  • 満足度★★★★

    夫婦が微笑ましい
    岩松さんの作品は相変わらずざっくりとした感想しか述べられないです。
    役者としての宮藤さんや津田さんのテンパリ具合、伊勢さんの伊勢さんらしい役柄を存分に堪能させてもらいましたw。
    夫婦の軽口叩いているけど、意外と深ーい会話が洒落てた。

    ネタバレBOX

    玄関脇の睡蓮の感想を皆口々に言うが、それは世間が思い描いている、くららのイメージと思った。
    古賀はなんだかんだで妻が好き。
    祥子の古賀へ見せる女の顔と、他人に接する時の社長の顔の違い。
    そんな夫婦二人をくららが繋いでいるように見えた。
    実の母親以上の信頼関係にも思えた。

    粗野というか粗暴な面はあったものの、岩松さんの作品で死人とか、暴力的な場面がほぼ出ない展開も珍しかった。
  • 満足度★★★★

    岩松作品にしてはわかりやすい!(笑)
    岩松作品にしてはわかりやすい!(笑)
    「舞台の外で起きる大事件に対応する、右往左往する人々のちょっと変な舞台裏側を、淡々と描く」
    というのが私の岩松ワールドのイメージですが、やはりそうでした。

    何がポイントでな、これを言いたい、などという単純なものでもなく、
    しかしただの平凡な毎日でもなく、
    これまで普通に生活している人たちに問題が起きる。

    この本人たちにしては普通、でも他人が見ると歪んでいたり、
    特殊だったり、かっこ悪かったり。

    それでも、本人たちにとっては日常で、事件の後も生活は続く。
    「その部分」の、彼らのやり取り、会話、翻弄される様子などの、
    それぞれのちょっとしたことが観ていて面白い。

    元女優の芸能プロ社長と、元トラック運転手の夫婦の喧嘩、
    その中にもちょっとした愛情が見える。
    夏川さんは初舞台、でも堂々としたもので、社長の貫録の強気の面も、
    弱くやさしい面もある。
    クドカンはさすがうまい。投げやりでダメなところもあるけれど、
    やっぱり人情派。
    元アイドルと亭主の面は、結果的にはあまり出ていませんでしたが。

    私は「仮面ライダー龍騎」レギュラー出演以来、警視庁捜査一課9係とか、ケータイ捜査官7、
    「呪怨」とかでもよく観ていた津田寛治さん(今回観劇の理由の一つ)は、
    ルックスからして濃い目でかちっとした役が多かったですが、
    今回の、アイドル担当中堅マネージャ役でも、最初は後輩にも厳しくやり手っぽかったのに、
    ある時から、どんどん崩れて暴走していくのが、とにかく面白かった!!

    蛇足ですが、同じく「仮面ライダー龍騎」の主演だった、
    須賀貴匡さん出演のd-倉庫の「プライド」を前日に観ました。

  • 満足度★★★★

    落ち着いた群像劇
    クドカンを観てみたくて。
    岩松了の作品はどうかななんて思ってたけどけっこう面白かった。

    ネタバレBOX

    とある芸能事務所が舞台。売り出し中のアイドル・くらら(上間美緒)を抱える事務所には、いろんな事情がまとわりついて、思惑と感情が動き舞台を形作っていく。
    事務所社長の祥子(夏川結衣)とスタッフの古賀(宮藤官九郎)の夫婦を中心に、芸能関係者やくららの母(宮下今日子)、事務所事務の女性(伊勢志摩)、くららのマネ(津田寛治)らが魅力的なキャラで話に彩を添える。

    事務所の話と、人間関係をうまくからめていて、クドさもなくて観やすい。悩みをかかえつつ前進するという姿勢の夏川や宮藤を中心に全員が大人な舞台であったと感じた。
    宮藤官九郎は、独特の口調のせいか、コミカルに見えてしまうきらいがあるかな。ちなみに、「ブラインドを降ろす」という表現が気に入った。
  • 満足度★★★

    あっ
    という間に時間がすぎました。
    本多劇場で観るのは初めてで興奮しました。
    これからも観にいきます。

  • 満足度★★★

    謎も多くて楽しく見れる
    国民傘は見なかったのですが舞台上で人が死んだりする作品が続いてたので、今回のは静かな中続いて行く時間の中、可笑しい、笑わせてくれる仕草や裏のありすぎる事務員とかを関連も関係なく見せてくれる。好きな作品でした、謎が多く終わるラストもいい感じです。

  • 満足度★★★★

    あっという間!
    舞台に釘付けで、2時間半を越えるとは感じないくらいでした。
    宮藤さん夏川さんの夫婦、あるある、という会話でとってもしっくりしていましたし、伊勢志摩さんの怪演っぷり、岩松さんのやらしい感じ、など楽しめるポイントが多く、再度観たいと思わされました。
    観客の想像に委ねる仕掛けの数々、見事です。

  • 満足度★★★

    初日:)
    初の本多劇場での観劇でした。
    宮藤さんの演技を生で見ることが出来て、本当に良かったです。
    夏川さんのセリフがとんでしまうというハプニングもありましたが、岩松さんのカバーで、より面白くなりました。

    ネタバレBOX

    私的に一番面白かったのは、柿ピーをぶちまけるところです:)

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