公演情報
「遺産」の観てきた!クチコミ一覧
満足度★★★★
七三一部隊で人体実験を行なった医師と、被験者(マルタ)に接して働いていた特別班の隊員の現在と過去が交錯しながら舞台は進む。
いかにも人の好さげな今井医師(岡本篤)は他の医師が口実を付けて断ったマルタの人体実験も引き受けてしまう気弱なところがある。同時にその今井が平然と白衣を血に染めて人体実験を行なう。
マルタは「丸太」からではなく、素材という意味のマテリアルからつけたものらしい。まさに実験素材だったわけだ。
生きた人間をも解剖したという七三一部隊の人体実験の被害者は3000人にも上り一般市民の中国人も多かったという。
いっそ、医師の彼らが人間の皮をかぶった悪魔であったなら、私たちはどれほど心を撫で下ろしたであろうか。
時代の流れと大きな組織の動きの中で、私たちはどれだけ自分の良心と自分の行動を律することができるだろうか。同じ過ちを犯さないとは言えるだろうか。
満足度★★★★★
鑑賞日2018/11/11 (日) 14:00
座席D列19番
前作「ドキュメンタリー」同様に、関係者の述懐により明かされる医療絡みの事件の真相……であるが、前回と較べて時代的にも隔たっており、創作部分の比率が高いかも?
そして、個人的には731部隊が行った「直接的な」行為よりも、自社の利益を優先させて事実を隠蔽するという「間接的な」行為の方がえげつなく感じてしまうのは時の隔たりも加味されるからか?
その意味で「ドキュメンタリー」「遺言」の両作品を観ることができたのは良かった。
本作について言えば、医学者が「解剖しても人種に違いはなく、「優秀な民族」というのは方便」と言うのに説得力があると言うか、今までにはなかった観点からの発言であることにハッとする。
そして、「戦争とはそういうもの(なのでもう起こしてはならない)」という主張も感じた。(それは「あの記憶の記録」にも通ずるものであろう)
ところで床に置いてある「ガラス製のアレ」を「ビーカー」だの「フラスコ」だのとしているものが散見されるが、あれは「試薬びん」ではないだろうか?
満足度★★★★
まあとにかく上手い
構成も役者の芝居も照明も見せ方も
それぞれの場面の構図の美しさ
犠牲の上に繁栄があるのは間違いない
しかし繁栄のために犠牲を強いるのを漫然と受け入れてよいのか
誰かの罪を追求するのではなく、罪とは何かを考えさせられる作品だった
満足度★★★★
以前からこりっちの受賞履歴などで名前を見ていた劇団チョコレートケーキさん、初見。
731部隊ものということで構えて観てしまったが想定内。
メインにえがかれているテーマに好感が持てた。(仕事で遺言をあつかうので…ちょっとそちらに思いをした時間が生じた。これはいたしかたない)
脚本に対する好みかもしれないが、淡白に感じる場面も。
重いと感じられるテーマを見やすくわかりやすく見せてくれた。力のある団体さんであることがよくわかった。
会場、すみだパークスタジオ倉。久しぶりにあの硬い座席にすわりました、集中して観ていたからか背中とお尻が痛くなりましたね笑 クッションがなければもっとひどかったでしょう、クッションありがとうございました。
満足度★★★★★
戦時中の日本軍、満州で細菌兵器を作った731部隊の話。決して目新しいテーマではないのですが、登場人物の台詞、話の構成が巧みなのです。普通の人間が「組織」や「命令」を理由に凄惨な実験を繰り返した731部隊。しかし研究者としては至福の時だったと回顧する老医師の告白は科学者の性なのか。淡々と語られる中、戦争の闇の部分をこのような形で舞台化することは、とても現代性があると感じました。劇団チョコレートケーキと言えば、浅井伸治、岡本篤、西尾友樹が中心の芝居なのですが、劇団桟敷童子の原口健太郎が客演、とても存在感のある役どころでした。
満足度★★★★★
731部隊を扱っているが、それ自体を非難、否定するというより、携わった科学者達の葛藤がメインと言えるプロットが実に良く出来ていた
劇中のマルタの王静花の「誰も悼まない死、死んでも消し去り続ける死」という台詞は心に刺さった
木下役の原口健太郎と天野役の浅井伸治、そして王静花役の李丹の演技が印象に残った
意表を突く“アフター”の本編登場人物3人によるひとり芝居は秀逸、皆好演だった
ビーカー(フラスコ?)を散らべた舞台は奇抜なアイデア
照明の微妙な調光、特に“アフター”における音響も効果的で素晴らしかった
あの題材をこう処理したかと感心し 途中からはずっとどういう結末に持っていくのだろうかと考えていた
計3時間近くがあっという間だった
「死んでも消し去り得ない」舞台になったかもしれない
こうした硬派の芝居が完売御礼のキャンセル待ち状態になるなら日本もまだ捨てたものではないなと思った
残念ながら終わってしまいましたが・・・
満足度★★★★★
鑑賞日2018/11/15 (木) 14:00
座席1階c列15番
前回公演の「ドキュメンタリー」とのつながりは、パンフレットやここに書かれている皆様のご指摘通り。登場人物が重なっていないとのことだが、西尾友樹氏や浅井伸治氏は役柄が全く異なるのだけれども、岡本篤氏の今井は「ドキュメンタリー」の元グリーン製薬研究員だった老医師とどうしても被るなあ。実際、途中までそういう目で見ていました。
いっそ、それでもよかったのではないかな。この一点で人物の繋がりが明確になると、かなり、731部隊→非加熱製剤投与への連綿とした倫理観の一貫性が判るような気がするので。つまり731部隊で問われる倫理観(軍としての細菌兵器の開発、人体実験)と非加熱製剤投与の倫理観(利益至上主義、官民癒着構造)は、本来異なるもののはずだったのに、実はこの2つに関わった一部の者たちの倫理観には、通底するものがあった(人命の軽視)ということ。
731部隊に関わった「ドキュメンタリー」の老医師と、今回の今井は、共に731部隊での研究時代を至福の時間だったと回顧しながら、前者は非加熱製剤投与に抗い、後者は一生の後悔の念に苛まれる。しかし、そうではない、そうは思えない人々が、間違いなく関与していいたという事実、この方が戦時下という言い訳をも許されない決定的な証拠だと思う。
私は、こうした歴史的事実に基づいたフィクションに、誤謬の指摘をしたり、情報量を求めることにあまり意味があるように思えない。その解釈に意義を唱えるのは自由だけれど、あくまでもこれは創作活動なので、観客は舞台自体がどうなのかを語るべきだと思う。もちろん、その舞台観劇を契機に各々の事件について語ることは、舞台作者の意図するところでもあるかもしれないし、観劇者の探求心の発露でもあろうから、一向に構わないけれど。
だから、731部隊どうこうよりも、人間の宿業や贖罪への意識というものが、どれだけ重要かということを感じた。53人殺めた今井と川口少年に「生きろ」と言った今井は矛盾する存在ではない。それは、匿名な個人と知人との対応の違いではない。
李丹のラスト近くの舞は、見事。誰に悼まれず、隠蔽され続ける死の朦朧が良く表現されていたと思う。終盤に至るまで、その生と死の狭間を行き交うような、儚くそれで強い存在感は秀逸でした。
「マルタ」という表現は、「材料」という意味で「マテリアル」から来ているらしいのですが、私は「ドキュメンタリー」からずっと「丸太」だと思っていました。
枝(手足=自分の行為を司どり死生を左右する部位)を切り取られ、ただ無機質に並べられた材木。何に使われるかをただ待つ存在として。
満足度★★★★★
珍しく折込チラシの宣伝文句くに惹かれて出かけたが、とんでもない重たい拾い物だった
731部隊を扱っているが、それ自体を非難、否定するというより、携わった科学者達の葛藤がメインと言えるプロットが実に良く出来ていた
表を突く“アフター”3人によるひとり芝居は秀逸、好演だった
李丹演じる劇中のマルタ王静花の「誰も悼まない死、死んでもっ消し去り続ける死」という台詞が心に刺さった
記憶から消し去り難い舞台だった
満足度★★★★★
命を救うのが仕事であるはずの医者でも、研究に憑かれて人体実験を行い多くの命を消してしまう。相手が支那人だからできたのかと思ったら、伝染病に感染した同胞でも生きたまま解剖してしまうと言う話があり、業としか思えない。戦争中のことだからですませられることではない。
舞台に置かれた標本を入れるようなガラス瓶が緊張感を生んでいた。危うさの象徴なのだろうかと思われたが、ぶつかったら倒れたり壊れたりしないのだろうかと・・・
満足度★★★★★
涙を制してこみ上げる、エゴイストとは何者か。 熱狂のうちに刻み込んだ気で、その実、上っ面を引掻いたに過ぎないようで・・・ 仄めく交差軸の上で 遺産の行方が定まらぬ。 開いてみて開かない選択肢に迷う弱さを嗤えるか。 悟りとも諦めともつかぬ境地へと彷徨う。
満足度★★★★★
鑑賞日2018/11/08 (木) 19:00
いろんな意味で「遺産」でした。視点を多く設定しながらも、ぶれない1本の筋がある。戦後にあったと思われるアメリカとの密約、裏取引に関する作品も見たい。
満足度★★★★★
本が良くできていて、緊張感がとぎれない。床に置かれたビーカーのようなガラス容器が印象的だったが、役者さんが演技中に誤って蹴飛ばしてしまうのではないかとちょっと心配だった。
満足度★★★★★
重い内容で、サイコっぽいところもあったけど、私も医療に従事する理系女(というには歳だが。。)善悪よりも探究心が勝ってしまう感じってわかってしまう。とにかく、めっちゃ良かったです。
重い、迫力、力作、問題作。
私の知っている知識の範囲内ではありますが、変なところや事実と食い違っている点はないように感じます。
きっと物凄く丹念に調査して書いたのでしょうね。
なりよりこういう題材を取り上げるという意欲や問題意識、志が素晴らしいと思いました。
石井部隊をよく知らない層や若い方々に見てほしいと思います。
満足度★★★★
今年演劇ファンが最も注目している舞台と言っていいだろう。古川健もチョコレートケーキも正念場である。今年の乱作を乗り越えて、その期待に十分に応えた作品だった。
素材は戦時中の日本軍の満州での細菌兵器731部隊である。どの国でもあるが、いったん政府が拙いと秘密にした情報はなかなか出てこない。この舞台では、現在公知の情報に基いて(政府が認めたと言う事ではなく)書かれたフィクションという枠組みで、国という集団と、その中にいる個人、の関係を追っている。戦争が世界各地で目に見える形で行われているいま、極めて現代的なテーマである。
国には、個々の国民にとっては迷惑でしかない「戦争」を行う権力があり、個人には個人の尊厳に加えて、ここでは医学者の倫理と言う国を越えた普遍的なコードがある。
ここでは、戦争遂行のための反倫理的な兵器製造を巡って、両者の様々な尺度から見た対立が描かれ、カタストロフに直面した時の人間の対応と感情が問われる。それぞれの人物も登場人物としてよく書き込まれていて、2時間余だれることなく見せてしまう。相変わらず構成もキャラの設定も旨い。
今回感心したのは、現代の観客、90年代の今井の死、戦時中の満州、という今現在生きている三つの世代に広く網打ちした舞台を作ったことだ。どの世代でも、このドラマが問題にしている対立は続き、それがこの社会の考えるべき問題だ、と演劇の世界から明確に発言している。感動的な舞台でもあった。
しかし、と、ここからは注文になるが、特殊な素材をうまく普遍化することには慣れているはずの古川のはずだが、超特殊な素材だった「治天の君」ほどにも、人間的に広がらない。天皇夫婦に託した演劇性が、このドラマでは中村という医師に託されているが、彼のドラマとしての位置がどうだったのだろうか。また、最後に(以下、ネタバレ欄で)
この公演に先立って、「ドキュメンタリー」と言う公演があったが、これはなくもがなであった。中途半端で意味がない。しかし、情報に立脚している今回の公演が、成立する基礎として、この情報がどう出てきたかというドラマは、別の視点のドラマとして面白いと思う。歴史ドラマを扱うとき、史実かどうかは、今作者が気を配っているほど、重要ではない。デタラメをやれば、ネット攻撃にさらされうっとおしいことは事実だが、たとえ情報操作と言われようとも、世間が納得sる情報で発信するのはやむを得ないし、それでひるむことはない。日本ですら、この731部隊の裏側で、同時期に国内の演劇では、菊田一夫が「花空く港」を書き、森本薫は「女の一生」を書いていた。
現代では、前世代の単眼的視点を複眼で見直すことは必要不可欠である。この作品にはそういう第一歩も感じられた。