「蝉の詩」 公演情報 「蝉の詩」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
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  • 満足度★★★★★

    私は月1回、母親と演劇を観に行きます。歌舞伎(たまにオぺラ)ということもありますが、新劇が多い傾向にあります。母は戦前の生まれ、あまり突飛なものにならないことや、割とゆったり観れること、そしてできれば彼女の生きた時代と重ねられることなどを思うことからそうした傾向になっているのだと思います。

    ですから、小劇場などはまず想定していなかったのですが、桟敷童子とチョコレートケーキには、母親にも観るべき何かがあるという気がしておりました。

    そこで求められるのは、昭和の風景です(必ずしも明るく快いものばかりではありません)。しかし、俳優座でも民藝でも文学座でも、昭和という時代を見せてくれくれる舞台には出会えません。苦しさは個人の感情に還元されてしまい、明るさもお茶の間的なほのぼのさとしてしか表現されないのです。

    そして、「蝉の詩」。初めての小劇場でしたが、見せてよかった。それは私もうろ覚えながら知っている昭和であり、感じてきた昭和がありました。生きることへの執着のある時代。これほど見事な世界を作り出すとは。

    この舞台の高い悲劇性・悲惨さも、人間のリビドーが作り出す笑いでうまく中和されています。それが素直な観客の涙につながるのでしょう。けして悲劇への感情移入が涙を流させるのではなく、ひたすら湧き上がる高揚感が涙を流させるのです。桟敷童子の力量の高さです。母に見せて正解でした。

    ネタバレBOX

    ラストの描き方について幾つかのご意見があるようです。

    織江のその後の数十年が判らないのでラストでの感情移入ができない、ましてや、ホームレスの老人になった織江に、今は亡き皆が「もっと生きろ」と言うことに何の意味があるのか、というご批判はごもっともです。

    確かに描かれない、織江の生きた数十年に観客が想いを馳せるのは困難です。亀吉から相続したであろう遺産はどうしたのか、夫はいつどうして死んだのか、子供はいないのか、なぜアイスクリーム屋は失敗したのか。判りません。
    ただ辛いだけの人生ではなかったのだろうとは、織江が姉の言葉(まっすぐに生きろ)を今も忠実に守っていることから推察できます。

    ラストで皆が「もっと生きろ」ということの意味は、題名でもあり劇中で創作される「蝉の詩」にあるのではないかと思いました。

    蝉は「みん」と鳴く、「死にたきゃねえ」と鳴く

    人は死ぬと蝉に転生すると劇中で語られています。また黄金色の蝉を見つけると一生幸せに暮らせるとも。

    織江はその最期を考えれば、黄金色の蝉を見つけることはできなかったのかもしれません。でも蝉に転生した時、彼女が黄金色の蝉になっているかもしれません。それで人を幸せにして、7日目に「みん」と鳴くのでしょう。

    きっと、そうした意味でも織江に、皆はもっと生きろと言ったのではないでしょうか。

    確かに織江は、まだみんなのところ(姉達や亀吉のところー黄泉の国)に行けないのかい、と一瞬嘆きます。ただ、彼らのエールはそんな弱気じゃだめだよ、「みん」と言ってみろということではないでしょうか。織江が最後に、気を取り直してアイスクリームの旗を振るのは、彼女なりの鳴き方だったのではないかと思えて仕方ないのです。
  • 満足度★★★★★

    今まで10作品ほど見た中で桟敷童子のベスト。佐藤誓のうまさが際立っていたが、それに呼応するようにすべての役者がよくなっていた。体言止めがなくなって、台詞がより自然になったのも好ましい。

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/05/04 (木) 14:00

    4日午後、すみだパークスタジオ倉で上演された劇団桟敷童子公演『蝉の詩』を観た。
    始めに書いておくが、今年観た舞台の中で、脚本・演出・役者の3点すべてが充実していた大変優れた舞台であった。

    ネタバレBOX

    舞台は、元自宅のあった周辺に出来た公園でホームレスを始めた元アイスクリーム屋の蝉への独白、そして子供の頃の回想で始まる。炭鉱から出る石炭運搬を主な仕事としている鍋嶋舟運送一家と、その中心的取引相手とは聞こえは良いが、要は舟運送に仕事を回してくれている土井垣鳴明堂。娘が刺し殺そうとまで思い詰める鍋嶋の親方で通称・鍋六は飲んだくれで金遣いが荒い。将来舟運送が下火になると察した長女・壱穂はトラックを使った陸運、次女の菜緒はアイスクリームが名物の食堂を始める。10代半ばで米兵に犯された過去を持つ三女の輝美は母親の好きだったレコードを聴きながら部屋にこもり、鍋六がどこからか連れ帰ってきた四女の織枝は高校へ進学する。土井垣から受ける仕事でなんとか続く鍋嶋一家。しかし、過労とヒロポンで壱穂は事故死、菜緒は病死、輝美は恋人にレイプされたことを告白した反応に悲観して自殺。すべては鍋六の放蕩三昧が原因とあって怒りの織枝は鍋六を包丁で刺すが、娘を殺人犯に出来ぬと舟に乗って姿を消す。残った織枝。そして土井垣の女社長が取り出した自社製オルゴールから奏でられた音楽は、輝美が愛したレコードの音楽のそれであった。
    菜緒から製造法を伝授された織枝はアイスクリーム屋を営むが、結局上手くいかず今は年老いてホームレスとなって故郷に戻ってきたのであった。
    苦労が大きく幸せは一瞬という人間の生涯を、蝉の一生に重ね合わせた悲劇の連鎖劇。

    テーマが悲しく重いからであろうか、桟敷童子にしては笑える演技をいつもより多くちりばめて悲しさを和らげていたのは、観客への配慮か、脚本・東の執筆中の心の痛みを和らげるためか。いずれにせよ、それはそれでよい効果を上げていた。
    役者としては、鍋六役の佐藤誓、その長女・壱穂役の板垣桃子、土井垣の女社長役のもりちえ、開演前から舞台で演技をしていた老婆(晩年の織枝)役の鈴木めぐみの4人が出色。四女・織枝役の大手忍も好演で会った。
    名前は挙げていない他の役者達の熱演も素晴らしかった。
    客演役者をも巻き込んでの桟敷童子魂炸裂。よい舞台を見せてもらった。
  • 満足度★★★★★

    悲惨な人生の話だと事前に聞いていたのでハラハラしながらの観劇でしたが、みなさんエネルギッシュで今までにないくらい笑ってしまいました。壱穂さんと亀吉さんがかっこよかったです。男どもはなあ・・・。このだめさ加減をいとおしいみたいに思う人もいるのかもですが、とくに鍋六は殺されてもしかたないかと言う感じですが、頑丈で良かった。
    舞台美術もいつものことながら作り込まれていて良かったです。

    ネタバレBOX

    織枝が鍋嶋家に引き取られ高校を卒業して就職するところまで波瀾万丈でした。その後一人になりホームレスになってしまうまでのことはほとんど語られておらず、想像するしかありませんが、その語り口からして不幸だけだったとは思えません。人生の最後が悲しくてもその人の人生全てをそこで判断はできないなと思いました。幸せな思い出があるからこそ、あそこで「生きろ」と言われてまた生きようと思えるのだと思いました。
  • 満足度★★★★★

    これは五星にしませう。炭坑三部作にもあった兄弟(姉妹)愛のモチーフだが、そのバリエーション(同じ轍に流れない)の書き分けに驚かされる。筑豊炭田を流れる遠賀川の船運送会社の斜陽の時期を捉えた物語で、四姉妹の次女と三女、父、三女を慕う青年四名の客演が申し分なく馴染み、良い意味で際立ち、複数のエピソードの絡まり具合といい、時折「劇」をはみ出す笑い取りといい、二次曲線的に競りあがる激情の瞬間といい、全てが絶妙な按配で「静かな屋台崩し」のラストもドラマの理に適い、完成度という言葉を使うなら、高い完成度を達成した桟敷童子の面目躍如たる、というか往年の舞台。

    ネタバレBOX

    甘い結語に流れがちでもある桟敷舞台の中で、鋭く光る断片的な言葉が時折耳を刺激する。その背後の、現実味のある現実と言えば、例えば・・被占領国となるという事はどういう事か。身を粉にして働き、病んで死んで行くという事はどういう事か。
    米兵による強姦殺人の被害者となった沖縄女性を想起する。そうやって劇場の「外」との関連の線を見つける。劇世界の中で完結したい願望と、しかしその中に作り手がこめた「現実」というものの断片を拾うべき義理とを思い、私は「米国に占領され、そして今も協定と密約によって法的に米国による占領に等しい状況にある」という事実を、この作品の横に添えおきたい。
  • 満足度★★★★

    桟敷童子がお好きな方は、満足されることでしょう。
    私は満足したうえに、いままでで一番「役者さんの力」を感じました。
    これは他の役者さんたちだと私の心に響かなかったのではと感じました。

    お若い方にはなかなか難しいかもしれないけれど私はとても好きです……。

    ネタバレBOX

    現在と過去が交差しますけれど、これ、いらなかったのではと、いままではシナリオと構成には感じなかった部分で、はっきりと「過去は過去の話でまとめて欲しかった」と感じました。
    それは私自身がかろうじて昭和の時代を感じることができるからこそなのかもしれないし、シナリオを比較的重視して観劇かるタイプだからかもしれないし、あるいは好みの問題なのかも、それとも私が女性だったからなのかもしれません。
    「あ、女性のことも描くんだ」と感じました。でも、もう一押し……欲しいなあ。どうかなあ。
    だめな男が本当に巧みで、毎回、きゅっと愛おしいですね……。

    野球にこだわり続けるのかな。そこはそこでおもしろいなあ。

    まだまだずーっとこの劇団を見続けたいと感じました。
    女性を描いたもので号泣したいですね……いつか……。
  • 満足度★★★★★

    泣けた。
    やっぱりいいね。
    ハンカチ二枚必携です。

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/04/28 (金) 14:00

    座席B列1番

    価格3,800円

    いつもながら、キャスト、スタッフ全員がその世界を創るために何一つ手を抜いていない、そんな舞台でした。「The 演劇」 という感じです。物語は、もしかしたら若い人には難解な展開や表現も含まれていたかもしれないし、好き嫌いもあるのかも知れません。でも、若い人達にも是非ぜひ観て頂きたい、本物の舞台です。ある程度の人生経験を重ねた日本人にとっては、誰もが感じる過去への郷愁や人生の悲哀、そして生きとし生ける命への普遍的な愛などを見事に、そしてリアリティーをもって表現した、芸術性の高い舞台だと感じました。また足を運びたい団体さんです。

  • 満足度★★★

    前作で危機感を持ったが、今回はまあまあでした。

    きっちりと観れました。

    ネタバレBOX

    「蝉」のように一生を目いっぱい生きてるなと思ったのは、鍋六と亀吉ですね。
    さて、主人公(?)織枝は?

    ラストシーン、何も無い老婆に「生きる」を強要する人々。何の意味があるのだろう?
    彼女にこれ以上の何を求めさせたいのか?
    作家の筆を疑問に思いました。

    姉たちの応援と意思を継ぎ、ひとり社会に歩みだす織枝が描写がないので、彼女はどう生きたのか全く不明。アイスクリーム屋をやったことが語られるが、そこで彼女が得た喜びも悲しみも語られない。
    なのに「まだまだ!」???
    なにがまだまだ生きなきゃならないのだろう?
    理解できなかった。

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