『凪の砦』総収編 公演情報 『凪の砦』総収編」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★★

    結末があまりにも壮絶。絶句というのが終演直後の正直な気持ちでした。

    以降、ネタバレboxへ

    ネタバレBOX

    「三ツ山養生所」と称する、見た目はいわゆるポスピスの様相だが、世話をする方も、される方も実は"ワケあり"ばかりの施設。肩を寄せ合い生きていく風情は、作中で語られる「落ち葉の下のてんとう虫」という表現が言い得て妙。介護に忙殺されながらも愚痴一つ言わぬ…楽しそうと言っても過言ではないスタッフの強く明るい振る舞いが、対照的に悲壮感を滲ませる。

    舞台で幾度となく繰り返される「生死の輪廻」の言葉は、本来そんな悪い言葉じゃないはずなのに、あたかも無間地獄のイメージを刷り込んでくる。死者が今なお成仏せずに普通の生活を続けるラストのイメージは、その無限地獄の体現にも映り、強烈でした。それらの「空気」を作る「役者」の力量を強く感じた芝居でもありました。話の都合で人が順に動くのではなく、各々の生活の集合で舞台が成り立っている感覚が強く、「あぁ、この人たち、みんな各々で生きているんだなぁ」と現実なら当たり前のことを、…非現実の舞台で強く実感できました。

    それ故に、やはり結末があまりにも皮肉で切ない。いや、だからこそ、この結末が活きるのか。

    「生と死」ばかりでなく、震災を引き合いにした「施設の契機と終焉」、すべからく輪廻と対照が際立つ作品でした。
    個別には、「まるでタイムスリップでその場に入り込んでしまったかの様に始まり、進行する回想シーン」の演出、「パイプ椅子を老婆に見立てた下の世話のシーン」、舞台をぐるりと囲む落ち葉、生演奏の音響、…様々に強い印象を残してくれました。
  • 満足度★★★★★

    濃縮した現実感が、感じられた。

    ネタバレBOX

    お芝居を見て、大きく3つあります。
    ■芝居の熱量
    ■颯爽とした感じ♪
    ■身体表現と豊かさ
    それでは、いきます。
     
     
    ■芝居の熱量
    ストレートに伝わるものがある。
    心地よいセリフの音量。なじみある身のこなし。
    まるで、ぜい肉のない、しぼった身体みたいに。

    伝えたい分だけを、キチンと伝えきる演技。
    ここまでくるのは、並大抵じゃないと思えた。
    バランスがいい。そう書けば理解しやすいだろうか?
    大きな声でなくても、声が通る。滑舌だけでなく、母音が聞き取りやすい。

    舞台セットは、シンプルなもの。でも、視線や立ち振舞いが、場所や思い入れを想起させる。
    BGMやパフォーマンスに頼らない、芝居本来の熱量。抑えながらも熱い気持ちが、上質な空間を作り出していた。
    (アコースティックギターや風の音も、腑におちた)

    物語も、役者も生きている。直感で、そう感じる。舞台上には、濃密な時間が現されていた。
     
     
    ■颯爽とした感じ♪

    役者は、よどみなくキャラで居続ける。
    タイミング待ちする様子もなく、時が過ぎていく。
    「颯爽」としか呼べない♪

    同時多発にしゃべり始めるシーンも、それぞれがそれぞれの時間を見せている。バラバラの動きなのに、水の波紋みたくキレイだ。
    波紋が重なり、縞ができる。大きくみたら、動きの中の調和みたいだ。

    今回は、総収編らしい。
    しかし、寄せ集め感がない。
    日常風景があり、エピソードになる。
    ある時の景色が、目の前にある不思議。
    いっしょに体験している感覚が、つきなかった。

    イイね♪
     
     
    ■身体表現と豊かさ
    映画のシーンを切り取ったのか?
    そんな錯覚を、冒頭に覚えた。

    跡地にたたずむ二人。
    風だまり、凪の砦。
    舞台道具のちぢれ紙が、枯れ草の音を立てる。
    立つだけ。立ち位置だけで、何かを想像させていた。

    また、日常シーンも、セットなしで棚や水道、座る人、ありし日の風景を描き出していた。
    パントマイムというより、しぐさの強調。

    例えば、箱があるから、中に何かを入れられるように。
    しぐさがあるから、何かが始まることを予感させられた。
    見えないはずのもの。過去の記憶。熱に浮かされたように、吸い寄せるものがあった。

    人柄がかもす魅力ではなく。表現の積み重ねが引き寄せる何か。
    確かに感じる。言葉にはできない想いを、表現しているんじゃないか。まだ、つかみきれない。
    今はただ、豊かさと呼びたい。
     
    ※蛇足だが、アフタートークでは「能を意識した」とあった。能の幽玄さは、狐が化かしたような感触もある。
    また、劇中には、神楽(かぐら)を踊る演出もあった。
     
     
    ■雑感
    図師さんは、舞台上で景色になっていた。
    独特の「没入感」を知るからこそ、演技の幅と深さが増していると分かる。

    座組みの一体感が、あの芝居の充実感につなげたのか?
    物語もさることながら、オモシロイ体験だった。

    違う面も、ぜひ観てみたい♪

このページのQRコードです。

拡大