メゾンの泡 公演情報 メゾンの泡」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-7件 / 7件中
  • 奈落にも妹のような人もいる、と前向きにとらえたくなった。

  • 満足度★★★★

    色白の棲息者たち
    憂鬱な顔をした近未来の姿というものは「予見する」=今見えていないものを見る=ことの価値を、云々する以前にそこに現前させて溜飲が下がる。「今見えていないもの」への憧憬が辛うじて、現在の生を生かしめている、そういう所が(とりわけ現代には)ある。と思う。『ブレードランナー』『惑星ソラリス』(この二つは「遠未来」だが)『ストーカー』等の映画には、環境の大変化した場所で人間が美しくも病的な漂白された姿を見せる。「現在」に居る我々には、未来の彼らが(過去として我々の現在を知る者ゆえ?)神々しく映り、静謐の中に無尽蔵な情報の存在を予感させる。彼ら自身は多くを忘却しているにも関わらず。
    この芝居では、小さな自室の内部で胎内回帰していくように女性が無言・無動作でたたずむ時間がある。太陽に背を向け地下に「引きこもる」生を選んだ人間はモヤシやカイワレを連想させる。イキウメの『太陽』はパンデミックの末に生まれた人間の亜種が世界を(一時的に)支配する社会の一コマを描いていた。今作は「想定」のつじつまに関して突っ込みどころはあるが「近未来」の提示に相応しい作法が貫かれていた。憂いを帯びた表面の向こうにある「何か」を探り出そうと思わず手を伸ばし、思考を巡らす楽しみ(憂いを帯びた)があった。下へ行く程上位に位置する完全階級社会の設定は、上位の階級がもてる力をより積極的能動的に行使するイメージとは異なり、「引きこもり」「眠った状態」のイメージを重ねた。だがある見方をするなら、小金を持つ分だけ守勢にシフトするその延長には、貪欲を通り越した「眠り」に等しい生の姿を見出せるのかも・・等等の連想も愉し。

  • 満足度★★★★

    海の写真は美しい。

    不思議そうな日常には惹かれました。

    ネタバレBOX

    地上が汚染され、金持ちなどが地下に住む、しかもより選ばれた階層の人々がより深い地下に住むようになった人類引きこもり時代における、比較的地上に近い部分に住む引きこもり女性の話。

    一応地上でも即死するようなことはないらしく、海は少なくとも見た目は美しいようで、じゃあ何を恐れて地下に潜ったのか、地下で何を産業にして生きているのか、前提が今一つ理解し難いところがありました。
  • 満足度★★★★

    星空を見上げる幸せを感じつつ、羨望と畏怖の混じる眼差しで手元を覗き込む人波に呑み込まれ・・・あ、上下逆転はもう始まってるな。詰まる所、自分が ”そうあって欲しい” ように生きて行く、生き物。善し悪しで片付かない、ピンポン・ダッシュでチャラにはならない。方向音痴を気取る人たちへの不発(?)弾。

  • 満足度★★★★

    ■約75分■
    現役大学生とは思えない老練な脚本・演出に舌を巻いた。
    とりわけ驚いたのは演出力。演出がポテンシャルを引き出したのか、無隣館公演で何度か見かけた役者たちがこれまでで最高の、凄みのある演技を披露。その生々しさに何度もゾクリとさせられた。
    劇中人物の関係性を分かりやすく可視化する、独特なセット組みにも感心。これと関係するけれど、ビジュアルセンスにも見るべきものあり。

    ネタバレBOX

    賤民の住む汚染された地上世界のその下に地下世界が作られ、下層へゆくほど住民の地位が高くなる仮想世界が舞台。差別構造を強めつつある現社会の写し絵のごときその世界で差別に苦しみながら生きる人々を、現代口語演劇寄りのリアルな脚本・演出で描く。
    となれば、描かれる世界は当然ながら暗くて重いが、愉快犯的作家の創る浅薄なディストピア演劇と違うのは、劇中の世界と同じく差別構造を抱えながらも改善への意志が見られない現社会への、若い作者の本気の苛立ちが感じられる点。世界をペシミスティックに描き出して悦に入ってる劇作家があまりに多くてうんざりするが、若い劇作家がものした本作には構造悪を放置して変わろうとしない社会への歯痒い思いが手に取るように感じられて、今後の作品への期待値が否でも応でも高まった。
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/01/09 (月)

    面白い。80分。

    ネタバレBOX

    地上が汚染され、金を持ってる人間は地下に作られた施設に移り住んでいるという世界。地下にも格差が存在していて、不満に思う川上はテロを起こすが、結局上級層の住む下層部分には全く影響なかった…。

    京子(林ちゑ)…下層出身の夫は、隣の女子大生宅に入り浸っているという別居状態。下級にあたる川上と接し、さみしさを紛らわせている。
    川上(吉田庸)…下級民。出稼ぎ的に地下に単身で入居し、京子が監視役となって日報を届けている。テロを起こすが失敗に終わる。
    直(鶴田理紗)…京子の隣人。下層出身のいいとこの出だが、ワケあって追い出された。京子の夫と同棲しているが夫からの愛情は感じていない。
    真矢(うらじぬの)…京子の妹。仕事をクビになり、姉宅に居候する。
    上級民、下級民(という言葉は使われていないが)という、格差がはっきりとしているという、デフォルメされた世界観で、男女の愛情の衝突とか揺れ動きを内包した作品。
    大々的に下級民をバカにするマスコミなどはよいとして、ほぼ同じ階層に住む4人でも、格差への意識が根強く、人間関係に影を落とすという寒々とした空気感。現実世界でも劣等感とか人から見下されてる感とか、いやーな感情を内面に抱えて生きている我々をチクチク刺すような感じかな(多分上級民でも同じだろうけど)。そんなとこが面白さでもあるし、一転して男女の狭い感情のぶつかりあいという等身大なとこもあるのが魅力に感じたのかな。
  • 満足度★★★★

    無隣館若手自主企画vol,15 柳生企画「メゾンの泡」@アトリエ春風舎

    作品プロット『地上は汚染されて健康的に暮らすのが困難になった時代。ほとんどの人間は地下の巨大な集合住宅に居を構えている…』が、あぁ"宇宙戦艦ヤマト"みたいな世界観だな〜と不純な動機wで足を運ぶに至った訳だが、脚本だけでなく、狭い春風舎の中で表現された地下改装空間セット・それを補う照明など、SFの世界観をきちんと表現してくれた世界観にも惹きこまれた。

    今日が成人の日という訳ではないが、若い世代からみた今の世の中への(生まれてから死ぬまでの有りとあらゆる場面で突き付けられる比較と格差に対する)大きな不満と少しの希望を観た気がする。

    ネタバレBOX

    地上人である彼が、上下左右を分断していた境目である"ガムテープ"を剥がす、というのは、象徴的なシーンだった。地下に住む者は決してしない、結局、カーストの下位階層が行動しないと世界は変わらないってことか…

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