満足度★★★★★
①初日。開演時刻ジャストに開演。そんなことをわざわざ公言しなくてもやれることであり、当たり前であることを示してくれた。観劇予定の人は心して行くといい。
砂地が揺るぎなく砂地であることが嬉しかった。その上で、進化し、最上級の砂地を披露してくれた。至福の時👍
②暗い照明、静かに鳴り続けるノイズ、バケツの水の反射光……砂地らしさが生み出す張りつめた空気に酔いしれる。素晴らしい演劇の世界がソコにある。
開演してすぐにクライマックス。そしてクライマックスの連続。その疾走感に振り落とされないようにしがみつく。
③主宰の船岩祐太氏の今作における最大の功績はコロスの使い方。群衆ではありながら、個を際立たせたことで、言葉が力を持った。群衆というより民衆であり、社会の現状を表し、世論の力を示した。それを見事に具現化した6人の女優が素晴らしい。コロスあっての本作だ。
満足度★★★★
壮大なギリシャ悲劇をひとつの家族の物語として再構築した舞台。その壮絶な喜怒哀楽は、我々現代人の感情とは一線を画す神話的な激しさを見せる。
暴力、愛欲、拘束、殺人。罪と罰。
大義や信仰のためではない、家族という狭い関係の中の愛と憎しみは、エッジの効いた光と音と相まって、スタイリッシュといってしまうには荒々し過ぎる、ざらつく手触りを感じさせた。
我々よりずっと神々に近いところで暮らしながら、その信仰は禍々しく、予言は不吉であった。
女性だけのコロスを民衆の声として、舞台だけでなく客席通路や舞台上のバルコニーなど様々な場所に配し、家族の悲劇を揺さぶり続ける。
それぞれに印象的な登場人物の中で、アガメムノンの妻 クリュタイムネストラの母としての顔と女の顔、そして、愛人とともに夫を手にかけた後の迷いのない佇まいが印象に残った。
5つのギリシャ悲劇をもとに紡がれた物語。いかにも古典的に始まったあの冒頭からあの展開は予想できなかった。中盤以降、どんどんと衣装も発話も音楽も現代的になっていく。最後はZARA店内でかかってそうなダンスミュージックに乗せて劇場の外の現在の世界と同化するように、疾走感すら。あれはなんだったんだろうと、いい意味であと味たっぷりで劇場をあとにした。
娘を神々の生贄に捧げたギリシャ軍の総大将アガメムノン。その妻クリュタイネストラは、夫が不在の10年の月日を愛人との情事にふけることで慰め、凱旋した夫を娘の仇にと殺害する。その10年ぶりに再会する将軍と妻のシーン、迫力あった。大沼百合子さんという女優さんの、諦念と飼いならされた復讐心、嫉妬、鋭い狂気等々、女のエロスに魅せられた。さらにそのクリュタイネストラのもう1人の娘・エレクトラ役の永宝千晶さん(文学座)も、若く美しい女が、だんだんと女将軍のように強くたくましく威厳をたたえていくのが魅力的だった。
そして、途中からボーンと入ってくる音楽は、トリップホップ!Smith&Mightyの『Same』、MASSIVE ATTACKもかかっていたか。低音ベースラインがボーンと一拍目で入ると同時に、舞台空間が縦横大きく転換し、物語も大きく展開するというその一瞬間がたまらなかった(トリップホップ好きだし)。全然主眼じゃないだろうけど。。ギリシア悲劇と、トリップホップの空間を切り開くベースラインと浮遊感がめちゃめちゃ合ってるように思え、そんな”この一瞬”を観れたのが満足。
満足度★★★★
鑑賞日2017/02/09 (木) 19:00
座席F列16番
複数の悲劇を組み合わせて構成されており、そのさまはアトレウス単体と言うよりは大河ギリシャ悲劇「アトレウス家の一族」総集編…みたいな。(笑)
照明に浮かび上がる人物や装置など、画的に美しく、絵になる場面が沢山。
いろんな組み合わせ方で使われる4つのテーブル状の装置は「ハムレット」での水槽(だったっけ?)を想起。
満足度★★★★★
鑑賞日2017/02/12 (日)
ギリシャ悲劇ということで、ついていけるか、理解できるか(ストーリーもそうですが、カタカナの名前が覚えられないという…)、しかもこの時差ボケの頭で…、と少し不安でしたが、そんな不安なんてまったく杞憂、とてもわかりやすく、でも考えさせられる深さがあって楽しめました。
満足度★★★
鑑賞日2017/02/09 (木)
ネット民とギリシャ悲劇という着想や舞台美術はgood.
主要人物の中で関係性や時間という重みが効いていないため、単発的なモノローグという感じで、関与するコロスも滑ってる感じがする。
当事者の物語とずれたり合ったりすることがコロスやネット民を考察する上では旨味なのだろうとは感じる。
代替案としては、家族内のコミュニケーションを感情的なだけのモノローグ的ではなく、近いがゆえの複雑さにまで高めること。コロスが物理的な方法だけでなく、精神的にも観客へ深くアプローチした方が良いと感じる。
個々の技術の面でいうと台詞の的の絞りや強度のチョイスに、巧拙ばらつきがあり、流れを妨げている。
活字情報は伝われど、それ以上の深みは感じなかった。
アクションも芝居との糊代が透ける感じがした。
全体として向かう方向が面白いだけに 悔やまれる。