満足度★★★★★
鑑賞日2016/09/25 (日)
人々が命がけで生き抜いた激動の「過去」【散華パート】と、「怒り」という観念を放棄し、緊迫感皆無な、のどかな時代【授業パート】のシーンを行き来しながら、学校・家庭・戦争・平和・宗教・憲法などの社会的な主題を等身大の人々の、ささやかな暮らしから描き出す一大絵巻(2幕・2時間40分)。
なお、本作品は、政治的色彩を感じさせるメッセージが内在していますが、プロパガンダな演劇では決してありません。ですんで、ワタシ個人の政治的意見の開陳などという野暮もやりません。純粋に観劇レビューとして、以下、続けていきますね。
作品上の「現在」である【授業パート】と、その授業で「過去の出来事」として語られる【散華パート】、二つの世界を行き来する白い衣の女性(演・田中美甫さん)…平和の象徴・ハトをイメージしているのかなぁ?
【授業パート】に出て来る、何処か人物設定が曖昧な転校生(毛利悟巳さん)に、独りだけチマチョゴリ?巫女装束?を身にまとったクラス委員長(池田優香さん)
その時代を生きている、というリアル感を帯びた【散華パート】の登場人物たち
過去の歴史を遠目から眺めている、ゴルフ場のギャラリーのような【授業パート】の生徒たちと教師
(決して堅苦しくはなく、むしろ笑いも交えてですけど)虚実錯綜する人物たちの群像劇を通して、「命」とか「生きていることの意義」に関して、観客は自然と考えさせられていきます。
そして、私たちが「平和」というコトバから連想する最もポピュラーな文章、日本国憲法第9条第一項を模した「怒りの放棄」を【授業パート】の教師に語らせることで、作者のメッセージが明確に提示されます(とワタシは感じたんですがぁ…)。
ラストは、舞台上に伏していた演者たちが一人・また一人と起き上がって、『ボレロ』の各演奏楽器のごとく加わっていく群舞の波・波・波。その観客に訴えかけてくる迫力というかカタルシス! …ココロ震えました。
「平和がどうした・こうした」に、特段、関心のない方でも、胸に迫る思いを体感できる作品だと思います。
満足度★★★★★
華と散るな、月よ剥がれるな
凄まじい作品だった。
命が失われることに涙を流す私たちは、一方で決死に美しさを感じ続けている。
尊い犠牲を誰も無下にはできず、ミシマの自決にさえ浪漫をみる。
命の華が花火のように散るその様を忘れられない。
その音に意味があるなら、意志があるなら、それをどうか掴みたい。
そう思わずにはいられないのだろうか?
満足度★★★★★
命の存在感。
2回、観劇しました。
2時間半、物語の持つ緊張感、役者さんたちの緊張感、そして、それを受け止める客席の緊張感で、ずっと張り詰めていた気がしました。
でも、それはとてもいい緊張感でした。
無機質な舞台で、生々しいまでの命の存在感が圧倒的でした。
小角まやさんの演じた女性が、印象に残ります。
満足度★★★
月の剥がれる
殺人(主に戦争らしい)に抗議の意を表明するために自殺する。命を賭けた抗議と言えば聞こえはいいが、自殺した本人はその死が果たして意義があったものかどうか確かめようがないのである。そればかりかその思想を持つ平和団体さえも、偉い人たちは会員を増やして自分は死ななくてすむように画策しているだけで、自分たちの行為の確証さえないように見える。そんな団体でもまっとうなものとして受け入れられてしまう流れが恐ろしい。
散華のメンバーだった元フリーターの男が「アルバイトで生計立てて、それでもなんとかやっていけて、たまには焼き肉とかも食べられて特別何もなくて生きているのはいけないんですか?」と言うセリフが胸に刺さる。特別なことなど何もなく生きているから。とても考えさせられる舞台でしたが、登場人物にどういう人なのかわからない人がいたり、ダンスの意味・意義がわかりませんでした。終演後主宰さんを捕まえてお聞きしたところ「言葉のさらに先にあるものを表現したい」とのことでしたが、私から見たらあんなに長くはいらないんじゃないかと。上演時間だって短くできるのではないかと思ってしまいました。
満足度★★★★
重層世界への広がりと視点の転換にアマヤドリの良さを見た
なぜだか初演を観ていない。
なので、初『月の剥がれる』。
一見とてもストレートなテーマなのだが、答えがそこにあるのではなくきちんと考えさせるところがアマヤドリだ。
19時30分からスタートで上演時間2時間30分のアナウンスには、エエッとなったが、最後の最後まで目を惹き付けた。
また長文になってしまった。
以下ネタバレボックスヘ。
心に落ちて来た・・。
アマヤドリ「月の剥がれる」@吉祥寺シアター9/29マチネ観劇(10分休憩有)
観終って、一度止めた涙がまた、零れ落ちてしまった。
何故だろう、初演の時に「?」が多く残ってしまった自分の3年前を取り払うような、語弊があるかもしれないが感情が物凄くシンプルに、舞台から解き放たれた時間。
大きく変わったと感じたのは、テンポの変化。
観客の視線を置くところが見易くなった気がした。
学校のシーン、散華のシーン、より、「個」の成り立ちが明確。
更に、初演からの進化。
まっさらな心に落ちて来た。
色んな場面が流れるように、緩やかに交わる。
ふと、思う。
夜間飛行している彼らがみたのは燃える過去のヒトだったのか?
未来が過去を俯瞰しているのか?
命はだれのものなのか?
自分が傍観者でいることは悪なのか?
再演であって、再演ではなく、新たな「祈り」を見届けた時、涙が止まらなかった。
上演時間は数字にすると、長いと思われるが、実際今日観劇してそんな事は無かった。
ああ、とても愛おしい時間となった。
宮崎雄真さんの今作、いつものイメージだととても、温厚なお父さんといったものを個人的に持っていたが、愛らしくも有り、誠実でもあり、引き込まれる。
ザンヨウコさんの語り部的な役は、反則的に素敵だ・・・。
本当にあの方は不思議な俳優さんだと思う。でも、先生はきっとザンさんが演じるのだろうと思っていたので、嬉しかった。
石本政晶さんの今作の役は
初演よりなんていうんだろうか、セクシー度数が高まったような気がした。
初演は、「純愛」なイメージだったのだが・・。
彼の発案も、本当は、最初は些細な事だったのだろう。
そこから「散華」の膨れ上がるスピードが
現実の世界と気持ち悪いほどリンクする。
小角まやさんの言葉に共感する人が一番多いと感じる。
「私ならそう思う」といったある意味観る側の一番置きどころが近い役であるゆえに、台詞が刺さる。
同性である事もそうだが、彼女の「正論」が届かない悲しさ、怖さ、切なかった。
長男が死、その後に次男もまさかの同じ流れに身を投じていく様をみて、別れ際に
「またね」と言って走り去る場面。
縁を切ってもいいくらいの常識的には考えにくい行動をする兄に対して
それでも、「さようなら」と言わず「またね」という所が個人的にナツの優しい心根を観た気がする。
西川康太郎さんの役は、「自分」を持ちながら、一番翻弄されてしまった役なのかなとも感じた。知らない間に、抗う事をしないで、あの場に、自分を置きにいってしまった。
きっと、考えて、考えて、でも、あえて、あの流れに。
優しい人なのだな、と。
倉田大輔さんの役は、この役のイメージが、とても、飄々というかぬらりくらりとすり抜けていく。「散華」というマリオネットを操っていたが、何処かでその糸を切りたがっていた気がする。
「散華」の最期。
人々は死に、それは、新たな再生にむかう・・。
いや、「死」はあくまでも、「死」。
天寿を全うしない「死」はただの「死」。
生き残った者・・。
笠井里美さんの最後の場面。「きいてるよ」と心の中で呟く。
ファインダー越しに、彼女の涙が見えたような気がした。
渡邊圭介さんと、石井葉月さんの最後に死を止める言葉について話してる場面が好き。
震える様な細い繋がりを手繰り寄せる様な会話が切なかった。
そして、劇中、常に皆を見守り続ける
田中美甫さんの役。
天使のような、影のような、もう一人の「あなた」。
テンも、ソラも、
大きく、広く、隔たりの無い、何処までも、何処の場所にもつながっているモノ。
神様が、垣間見た人間たちのほんのちょっとの時間だったのかもしれない。
神様からみたら、人間の一生って、瞬きした位の感覚なのかもしれない。
でも、
親は子を産み、育て、やがて、また、その子が親となり、子を産む。
一個の命は、大きな木の様に過去から繋がって繋がっている。
とても、シンプルに考える。
だからこそ、心音にも似たステップの音の群舞に心奪われる。
善き時間を過ごせました。
楽までお怪我無きよう・・。
満足度★★★★
騙されたくないなー
一番興味深かったのは、誤った思想であっても、そのプロデュース力によって世間に通用させてしまうプロセスの描き方でした。
ドラマチックに印象付けられてしまうと「正義」と勘違いしてしまう怖さ。
そしてドラマチックとは程遠い、薄汚い内情。
今のマスコミはあっさり騙されてしまうほどバカじゃないと思うけど・・ちょっと心配。
今作を完成させるにあたり、どれだけ沢山のエネルギーが注がれているのかと思うと頭が下がります。
思ったより理解しやすいストーリーで良かったですが、この2時間30分の力作に対しては、こちらも相応な気合で挑まなければ負けてしまうのではないかと思いました。(観劇に勝ち負けとは何を言っているんだか)
満足度★★★★
再演
吉祥寺シアターは天井が高いのでセットも綺麗 光も綺麗
それを生かした動きも綺麗で力づよく感じました。
天井が高いのですが声もしっかり通って聞き取りやすい
私は、若い劇団員さんの中で存在感のある先生がとても印象深く、オモイテーマでもその部分でくすっと出来ました。前回はお母さん役で毎回楽しみです。
内容はとても重いテーマですが、平和ってと考える機会を与えて頂け有難うございました。
満足度★★★★
重いテーマ
初演も見てますが、本当に重いテーマです。
「命の格差」見ていて、本当に色々と考えさせられます。
色々な側の立場で考えてしまい、共感したり、共感出来なかったり。
なかなかな舞台でした。
満足度★★★
難しい~
オープニングがダンス公演なのかなと思うような始まりで意外でした。 殺人をしないための自殺行為というのは宗教的に見えました。集団自殺が抗議の意味をなすのか? そもそも自殺は自身を殺す行為ではないか。説得力がない。そして立ち上げた本人は生きている。 自殺をされた家族の気持ちの行き場はどうなる?そこに憎しみが生まれる。もしかしたら新たな殺人の切っ掛けになっていくのかも。そんなことを考えながら観た2時間半。見る側にとっても難しい題材でしたね。