満足度★★★★
鑑賞日2016/10/26 (水)
「見知らぬ女」のために、餌取(えとり)家の人々は一人づつ、精神的に追い詰められていきます。そのありさまが、観ている側(観客)にも、その場に居合わせるのがバツが悪過ぎたり、あまりの修羅場に皮膚感覚でヒリヒリしたり…。
とはいえ、どこか懐かしい、というか、家族・親族というものへの温もりが感じられて来るのは、登場人物と同じく田舎モンで、何度も家族の死出の旅路を見送ったことがあるからかなぁ。
そして、中盤、ある登場人物が「見知らぬ女」の正体に気づいた件(くだり)からは(非情さの裏返しでもある)この温もりが一層恋しいものになりました。
どうも作者の意図から離れた感想になったきらいは否めないのですが、個人的には、懐かしさと緊迫感と(作品の内容への)充足感がごちゃ混ぜに押し寄せてきたような2時間でした。
満足度★★★★
家族問題告発ドラマ/ループ脱出ミステリー
真の主人公は、たまたま「そこ」に居合わせた饒舌な文筆家。だがこの男は本編においては「家族ドラマ」を単に目撃する第三者。
語り手であるこの小説家は、執筆のため編集者に紹介された交通便の悪い宿にやって来る。折りしも宿の先代主人が亡くなったその通夜の晩、方々に散っていた子らが伴侶を連れて集っているが・・・「謎」はそこに当然な顔をして父の友人を名乗る女。「ドラマ」の冒頭では、ヤケに済ましている女への追求が起きるが、各家庭の事情を承知しているらしい彼女は、問いをするりと交わしては話の矛先を相手(親族たち)に向けて埒が明かず、一旦解散。その後、兄弟同士の対話や、嫁同士の会話シーンの合間に、兄弟の一人が「女」と会話を交わすシーンがあり、この女とやり取りした者が少なからず動揺しているという話、また女が全ての相手と一対一で話をしたらしい話、だがそれは物理的に「成り立たない」という話を宿の者がしたりしている。「女は一体何者か」を主たる謎として進行するミステリーは、やがて女が何者かは「知りえない」という予感とともに、ドラマの目的は家族問題の露呈へとシフトしてくる。もっとも、それぞれの家族問題は、子を授からない責任のなすりあい問題、不倫、娘の妊娠等などと出てくるものの、これらが「一つの問題(原因)」に集約される気配はない。というより、何らかの直接的な原因が謎解かれることはない。話はもっと遠大な、形而上学的な次元にリンクする。語り手=小説家が冒頭に提示した問いである。ドラマが収束に向かう頃、その意味深長な問いが再度提示される。即ち、彼が「抜け出せない」時空のループにいること、そしてこれ(旅館で展開されたドラマ)がそこから脱するための最後の試みであること。ここで小説家はその饒舌をフルに発揮し熱弁をふるう。恐らく作者の化身であろう彼の弁舌の内容は抽象的でうまく再現も要約もできないが、名調子であった。繊細であり傍若無人にもなる「小説家」の演技によって芝居は作者の望む閉じ方で閉じる事ができたのではないだろうか。入れ子構造の処理、場面配置や転換、ラスト処理も含めて気合のこもった、「熱い芝居」だと感じた。が、本体の「ドラマ」での家族問題の一つ一つは、多くを説明していない分、背景を深く想像できもするが浅くも見えてしまう憾みあり。
この先が楽しみだ。
満足度★★
タイトルだけが最悪
千秋楽終わったから書くが、
熱気もあってクスグリもあって不条理が独りよがりになってなくて話も役者もいいんだけど、奇をてらい過ぎのタイトルがダメ
小劇場は何でアングラが高尚だと思うんだろう
例えばこの話、知り合いの役者が出てない一般的な芝居好きに「只のチケットあげるよ3枚のうちから1枚選びな」と言って
1、餌取家のお葬式
2、沼田ホテルの不条理な殺人
3、愛の技巧、または彷徨するヒト胎盤性ラクトーゲンのみる夢
どれを選ぶと思う?
作演出がマスターベーションしてんじゃねえよ
満足度4、タイトルでマイナス2
言葉のドライブ
言葉を繋げる中で劇をドライブさせていく印象があって、久しぶりに言葉で押していく演劇を観た印象。ラスプーチンと仏教信仰が繋がって一家族のそれぞれが隠してた膿が溢れる中盤の展開にドキドキした。