汗と涙の結晶を破壊 公演情報 汗と涙の結晶を破壊」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
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  • 満足度★★★★★

    芸術に
    芸術に人生を捧げる人たちの心の叫びのような作品だった。「才能」という言葉で、努力も苦しみも凌駕して片付けてしまうことへの憤り。全ての苛立ちが、堀夏子さんの右足の貧乏揺すりに表れていた。それにしても、作品毎に違う表情を見せる堀夏子さん「才能」に脱帽。肉体の死と、存在感(価値)の死。人はある時期に何故か「生まれた意味」「生きる価値」について考える。同時に「死」への逃避に目を向け期待を抱く。純粋に生きようとする人間ほどその傾向にある。鈍感力が生きる力を生む。ただ、純粋さは紙一重。芸術の世界では、それが価値あるものとして認められることもある。確かに生命力を手にできずに息絶えるものも多いだろう。記憶の中の三人から「絶対大丈夫」が、芸術に人生を捧げる全ての人たちへのエールに聞こえた。その道で死体と化した者たちの向こうに横たわる彼女は、問題ある正常の先へ両足を突っ込んでしまったのか。彼女の脇で読み上げられたメッセージが、「才能は万能じゃない」という芸術への弔辞であるならば、彼女が起き上がったことが意味するものに未来を託そう。原田つむぎさんは器用な女優さんだ。拗ねてキスを迫る同性愛者が可愛すぎる。破天荒な二世芸術家の毒の強さはリチャード4世の姿勢の悪さのように強烈。一番好きだったのは「捨てましょう」のキャスター?決め台詞がツボ。ラストの東に対する行為が意味深。「叫んでいいんだ!叫べよ東!」が、現代の若者へのエールのようだった。彼女が庭に放り投げたものは、夢か希望か…人生か。彼女が大きく吸い込んだものが、過ぎたるは及ばざるが如しものなのかもじっくり考えよう。堀夏子さんの深呼吸と過呼吸がスパイラルしている。

    ネタバレBOX

    唯一の男性キャストの石松太一さん。これまでの作品で見せたソフトな感じや気弱な感じを一掃し、かなりワイルドなスタイルで新鮮だった。坂倉花奈さんの軽やかさは高値安定。そのユーモラスな表現あってこそ、穿いて捨てられる才能が虚しさと優しさの入り混じった諦めで、ぬるぬるした液体に落ちていく絶望と狂気を浮き彫りにする。切り刻まれた才能の破片が、次の芸術の細胞として生きることが唯一の慰め。石川彰子さん演じる西は希望。可能性の片鱗で成功すれば未来があり、目一杯の一発屋は引き際を見誤る。黄色いベレー帽の西は手遅れ直前でシフトチェンジし、水色キャペリンの山本として成功して周囲から認められる。ある意味唯一の成功者だ。看護師の石川さんも最高。
  • 満足度★★★★★

    この作品は・・
    「面白さ」を評価する作品じゃないのかもしれない。

    ・・というのも美大の作品なんかをたまに見たりすることがあるんだけど
    ここに出てくる登場人物と全く同じといって良い学生たちを(作品の中に)見付けた記憶が何個もある。

    ネタバレBOX

    ただ、この作品を見てみて現実と多少違うんじゃないかと思えることは、
    現実の人間たちはそれほど「目立とう」と渇望してはいないんじゃないかってことくらいで・・

    それが若さゆえの青さなのか、作品を作り人目に晒すごとにどんどん自分の才能の無さを自覚するのと反比例して人に認められたい欲求が爆発し始めるからなのか。

    それは分からない。

    ただ、多くの場合才能のない(と自覚している)人ほど認められたいという欲望があとあとになって爆発してしまうのを良く見かける(ように思う)。

    それは何でなのか?

    この作品にはほんの少ししか触れられていないけれど、
    「人に認められる」ということはそれほど蜜の味のするものだからなのかもしれない。

    人に認められることを期待しないで作り始めたものなのに、
    ほんの少し人に認められただけで舞い上がる経験をした人は多いように思う。

    ひょっとしたら自分は才能があるのかもしれない。

    ただ現実はそれほど甘くは無く、そんな風に自問自答している時点で天才からは遠く、本当の天才は現れた瞬間に既に疑いようもなく天才で、瞬く間に栄光の階段を駆け上がるか精神病院に送られるか(この場合は一生出てこれない)ということが多いように思う。

    この世には下らない賞が多すぎる、ということをこの作品は言いたいのかもしれない。

    なんで下らない賞があるのかと言うと、中途半端な才能しかない審査員たちが自分たちより少し才能のない候補者たちを縛り上げてすくみ上がらせて影響力を少しでも長続きさせるためにあるんじゃないか、とも思えなくもない。

    この物語の主人公は、作品を作る才能には恵まれていないが、母親や死んでしまった親戚のおじさんに愛される才能には恵まれている。

    それが妹には眩しい。

    主人公は自分のその才能には気づいていない。

    才能は乏しいものの作り続けられるクリエイターにはこのパターンが多いのかもしれない。

    でもそれも良いと思う。

    常に圧倒的な世界観を突き付けられた作品が立ち並ぶよりも、
    ほんわかした作品、作者の人柄が目に見える作品も悪くないのかもしれない。

    それが欧米に比べて著しく多い日本の舞台芸術作品の数につながるのだとしても。
  • 満足度★★★

    才能
    100分。

    ネタバレBOX

    クリエイターな東(堀夏子)が、繰上げで海外留学し、帰国後彼女(原田つむぎ)にフラれ、友人クリエイターの北(坂倉花奈)が自殺し、実家近くにアトリエを設けるも妹(坂倉花奈)からは絶縁されるも受賞する…。

    前半は、キャラと話を通じてセリフが浸透してくる感じだけど、終盤はじんわりくるものがなく退屈だった。トーンが変わるのはいいけど、言葉が素通りしちゃう感じだったかな。
  • 満足度★★★★

    型すかし
    言葉と音楽で攻め込んでくるcui?の世界が好きだったけど、今回はたんたんと物語は流れていく、もちろんいつものように役者から放たれるセリフは、毒を含んでいるけれどずかずかと心には踏み込んではこない。
    もっと攻めるロックな演劇が見たかった。
    役者さんは、皆さんうまくて、お気に入りは妹役の女の子です。

  • 無題1672(15-361)
    19:30の回(晴)。

    19:03受付(整理番号付)、19:13開場。

    正面にタイトルが投影され、手前にはタイルカーペットが部分的に敷かれ左右に椅子(各2脚)、上手に観葉植物、空気清浄器。

    「きれいごと、(2014/5@眼科画廊)」「暴走~(2015/2@ここ」、「Cui?」3作目。

    タイトルだけでは内容がわからない。

    石松さん「初雪の味(2012/12@アゴラ)」、原田さんは2015年では先月の「メゾン(2015/10@Broader)」と「uni001 パン演劇(2015/7@ぶな)」。

    3作目を観て、冷え冷えとした空間、歪んだ感情、恨み節、出口が見えない状況などが極端にデフォルメされたカタチで提示されたようにみえました。

    劇場の外の世界とは隔絶された作家の深層を描いているのか、内容面や表現方法にはほとんど共感できず、セリフが繰り言集のように聴こえてきました。

    もし、持って生まれた「才能」というものがあったとして、それを活かすのは努力を惜しまないもうひとつの「才能」があるのかどうかなのかな、と思ったり。それもすべて相対的。

  • 満足度★★★★

    羨ましい
    演劇作品が作れる才能が羨ましいと思います。

    ネタバレBOX

    何かオブジェのような芸術作品を作っている作家たちの話。

    天才肌、そこそこ能力があって継続は力という人、挫折して去っていく人、そもそもこの分野の才能がない人などの生き様が暗めのトーンで淡々と描かれていました。

    どの業界でも同じですが、毎年一人とかいった枠があるわけでもなく、ちょっとしたきっかけで重宝がられ地位を築くといった運不運が存在します。

    それでも、歴史の末端に演劇作品が残せる作者は幸せだと正直羨ましく思いました。

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