全段通し「仮名手本忠臣蔵」 公演情報 全段通し「仮名手本忠臣蔵」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★

    言葉の力
    「元禄忠臣蔵」は毎年12月になると映画やテレビで(再)放映が多くなるが、それだけ日本人の心を捉えた出来事(事件)であると言えよう。その史実を受けて47年後(1748年)に人形浄瑠璃として上演されたのが「仮名手本忠臣蔵」である。一般的に知られている「大石内蔵助」が「大星由良助」のように「浅野」が「塩谷」、「吉良」が「高」へ「太平記」の人物を借りて置換えており、場所も江戸城内から鎌倉になっている。もともとは武家社会の不条理のような物語...しかし当時としては表立って武家社会の批判は出来ない。そこで登場人物、場所等のシチュエーションは変更しているが、そのモデルとなった出来事は容易に想像できただろう。
    本公演は「全11段(大序から討ち入り迄)」を2時間50分(途中休憩10分)であるが、観(聞き)応えがあった。

    ネタバレBOX

    「元禄忠臣蔵」と「仮名手本忠臣蔵」は、本筋は同じ展開であるが、脇筋の膨らませる観点が違うため新たな楽しみがあった。ただ、「元禄忠臣蔵」は人間ドラマであると同時に社会ドラマの要素(封建制度に対する批判)があるのに対し、「仮名手本忠臣蔵」は人間ドラマを中心(重き)で、その心情描写に優れているように感じた。今回からリ-ディングという冠を外したが、芝居のような身体表現が殆どない公演では、本筋に絡みながら「11段」それぞれに趣きのある脇筋・挿話の方が親しみやすいと思う。

    それぞれの場面では、嫉妬・強欲・激高・悔悟・悲恋・試練など、人間のあらゆる心の様態が巧く表現されている。その表現をする役者は、黒服上下に台本を持つだけ。人によって黒Box(椅子代わり)に座るが、基本はその場での立座動作のみ。そのシンプルな演出は、役者が発する言葉と鳴り物の効果音の向こうに、情景や状況が見てとれるような臨場感があった。
    この言葉(台詞)は独特な節回しであり、始めこそ聞き取り難いが、慣れてくると、逆に余韻が残るような味わいがある。視覚での表現力とは違い、自分(観客)の感性・想像力の違いによって受け止め方(幅と奥)が違う。その意味で何回聞いても飽きることなく新鮮に感じことが出来ると思う。

    次回公演も楽しみにしております。
  • 満足度★★★★★

    シェイクスピアを彷彿とさせるシナリオ
     全段通しの仮名手本忠臣蔵も今年で4回目。観る度に進化し深化し続けるこの舞台は年末の楽しみである。休憩10分を挟んで約2時間50分の今作。どの段も飽きることなく引き込まれるが、基本的に用いられている言語は、江戸時代の日本語なのでやや古風と感じる向きもあろう。然し、水産高校出身で古典などの素養の殆ど無い自分でも、類推できる。殊に六段、七段は、描かれている人間関係の因果と宿命との相克が、当にシェイクスピアの傑作に該当するような深く激しく劇的な状況であるため、固唾をのんで観た。
     昨年迄タイトルにリーディングという但し書きが付けられていたが、今回これは外されている。“原作に用いられている言葉から、如何様にドラマを浮き上がらせるか”に集中している為である。音響に関しても奏者が増え、厚みが増した。(若干追記2015.12.9:12.29更なる追記は後送)

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