ラバウル食堂 公演情報 ラバウル食堂」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★

    ディテイルの面白さ
    初観劇の劇団。ラバウル食堂、というタイトルが気になり観劇させて頂いた。タイトルはとある商店街の一角にある古い食堂の名前だ。芝居が進むとこれが至極納得なタイトルである。元店主がラバウル戦線からの帰還兵(病気のため玉砕の前に帰国した)、戦友たちから預かった手紙を遺族に渡すために戦後「ラバウル」と名を冠した食堂を出したという。古くなった食堂を改装した娘、その婿や町の人達が結果的にはその遺志を継ぐ事になるお話、と諸々捨象すれば、そういう話である。
    面白いのは町の信金の営業青年やブティックの店長、その踊りの師匠雑貨屋、ラーメン屋、肉屋といった面子が「町おこし」が恒常的なテーマとなった町の日常の、なかなかリアルに切り取られた光景を再現しているところだ。
    じりじりと逼迫させられている「地方」「地域」の例に漏れないこの町で今イベントが計画されているらしい。そこへ、「ラバウル食堂」とのこの町を探る地域のケーブルテレビの取材が入り、カメラを回す所での、まるでお約束のようなコミカルな場面もある。番組が放映されると皆それぞれの携帯の着信が鳴り、反響に喜び、泣くシーンも用意されている。
    最後には、地域を盛り立てようと奔走していた信金のお兄さんの願いも叶わず支店が撤退となり、また日々味と格闘するラーメン屋の倅がついに独立の意志を親父に打ち明け、すんなり認められるといった、そんなエンディング近くのエピソード紹介。
    地元を愛し地元で頑張ろうとする人々と、「外」へ出て自分を試したい野心を持つ人との、潜在的な対立構図がこのラーメン屋の息子を通して浮かび上がるが、何故か男は父の承諾を得た途端、東京へ行く気を無くす。「憑きものが取れる」と言うが、「東京」「都会」、ある種パターン化した「成功」の図への囚われは、様々な問題を難題と意識させる大元ではある。

    地域の疲弊の問題と、風化して行く戦争という問題が主に盛り込まれた芝居だが、私の常々のこだわり=戦争をドラマの手段として用いる事の倫理的懸念=には抵触せず、人と社会に歴史有り、という単純な事実に気づかせる芝居である。
    もちろんこの社会の「日常」がどうなっているのか、という視点が大事なわけで、「のぞき見る」日常は様々に解釈し得るし、切り取り得る。
    いずれにしても、この芝居のような平和が続くことが願わしいと思える芝居であった。

    ネタバレBOX

    舞台美術は路地と、食堂店内の二つで、路地のほうは前面を使っているが、食堂の豪華な作りに比してそっけなかった。下手の出はけを客席側の扉を使ってやっていたようだが、隠しが無いため劇場の黒い壁がもろに見えてどうしても「作り事」(学芸会)の印象を最初に持ってしまって損である。
    俳優の演技にもう一歩頑張りが欲しい、とは素朴な感想だ。アマチュア劇団として見ればそこそこ頑張ってる、という評価になると思うが・・ 脚本が描き出す人物が、たとえドラマ成立のためそれ以上の掘り下げを要求していなくとも、俳優の人物造形で芝居に深みは俄然違ってくるのではないか。
  • 満足度★★★★★

    因果応報 !
    戦友の家族に手紙を渡すために目印として作った店が逆に自分の家族に手紙が届けられた所が興味深い。しっとりとした芝居は観る者を裏切らない。
    戦後の平和な世の中を暗示するがごとく、大きなドラマはないもののそこが芝居屋の真骨頂である世話物を感じさせる。

    ネタバレBOX

    ラバウル食堂は神岡澄江と婿養子に入った隆文で切り盛りしている今はさびれた地方都市の食堂である。
    この食堂名の由来はラバウル航空隊の基地から戻ってきた澄江の祖父が手紙を友人の家族に渡すために目印として作った店であった。。
    戦後70年を迎え、地元のテレビ局がラバウル横丁の特集を組み、その横丁名の元になったラバウル食堂の関係者たちを取材し始めた。
    しかし、逆に祖父と関係があった人の手紙を届けてくれる人が現れた。
  • 満足度★★★★★

    心地よい時間
    日常に起こるほんの小さな奇跡。そんなドラマを丁寧に紡いだ作品だった。
    ラバウル横丁に関わる人々は当たり前の様でひと癖ふた癖あるキャラクター。
    あのメンバーの誰かしらが周りに一人はいる感じが親近感を芽生えさせる。
    食堂を営む親子三代(まだ見ぬ孫のエピソードを含め)の想いを軸に、
    中華屋二代目のジレンマ、気のいい銀行マン、雑貨屋の倅、
    母子の様な師匠と弟子、
    様々なドラマをちりばめ短い時間にコンパクトにまとめ上げる演出も光る秀作。

    贅沢を言えばもっと泣かせても良いかも?欲張りか。

    ネタバレBOX

    TV取材に浮かれる人々の姿は滑稽で判り易い。
    ホームドラマは身近なリアリティと気持ちのデフォルメとも思う。
    カメラマンの三脚にはPAN棒を付けてほしかった。
  • 満足度★★★★★

    市井の中で…
    市井の暮らしを通して、戦後の歩みとどのように向き合ってきたかを考えさせる秀作。今年(2015年)は戦後70年であり、そのテーマで多くの演劇が上演されている。本公演では、食堂を開店(ラバウル食堂という店名)した理由が明かされるが、そこには戦中・戦後を通じた悲話が...。

    ネタバレBOX

    この食堂を開店した故先代店主は、戦時中にラバウルで調理兵(軍隊での正式名称は別)として従軍していたが、病のため帰国することになった。その際、多くの戦友から家族などに宛てた手紙を託された。戦後になり一軒一軒尋ねて手交していたようだが、それも限界になった。そこで逆にこの店名にすることで、遺族等に知ってもらいたいと。

    この心温まる逸話とシャッター商店街と言われる地域の街興しを絡める。その手段としてローカルTVが協力することになり、取材などが始まり関係者が狂喜する。その騒動がコミカルに描かれる。登場人物の全員が善人で展開する人情話は、坦々とした日めくりカレンダーのようであり、その日の暮らしを覗き見るようだ。

    人は自分が見ている事象からしか現実を判断できないと思う。同じ時代・社会に生きていても戦争・紛争などが見えない人がいるかもしれない。先の戦争が始まる前も、多くの人は悲惨な戦争を予感することなく、日常を過ごしていたことだろう。
    この公演では、身近な暮らしを切り取って描いているが、その街は常に変わり、愛着ある風景がリセットされる。そんな不安を抱えつつも明るい未来を模索する人々の姿が見える。
    公演全体を通じて、芝居という「箱庭的な世界」を心穏やかに覗いているようで、実に楽しいひと時であった。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★★

    人生ののぞき見
    分かりやすくて、びっくりする展開はなかったが、ドキドキして心が温かくなりました。

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい
    こういう芝居、いいよねぇ~、という思いで観ていました。

  • 満足度★★★★

    良い芝居だった…
    新しもの好きはどう感じるか分からないが、これが芝居ですよね。役者それぞれが精一杯、役になりきっている。話は、昭和? 確かに出演者の役の年齢は昭和だが、やはり平成だからの話だ。人が生きていく、何となく見えることも、大変な悩みも抱えている。終わり方も良かった。敢えて一点直してほしいことは、一幕ものとしては長いので休憩を入れるか、あるいは全体を10分程度短くしてほしい。

  • 満足度★★★★★

    日々失われていく戦争の記憶
    や歴史が、フイと鮮やかに甦り身近になってくる瞬間を描いて深い感動を呼ぶ舞台。「ラバウル食堂」といってもあまり戦争とは関係ない人々が一生懸命に生きていて、それぞれに人生に悩み迷ったりするのだけれど、その冗長とも思える普通の時間が、ラストに至って宝石のように輝いて見える。戦争を描くのに、こんなやり方もあるのだな、と唸らされました。すごい手腕だなぁ・・・。過去というものはいつもこんな風に私たちの傍にあって、発見されることを待っているんですね。

  • 満足度★★★★★

    流石の“劇団芝居屋”
    心に沁みる物語り、心に響く演技に、観劇後の充足感に浸れる。

    それは、“劇団芝居屋”の芝居に対する確固たる姿勢故なのでしょう。

    本作、コミカルなシーンが、とてもいいアクセントとなっていたように感じましたし、さらには、役者さん達の好演が物語をより魅力的なものにしたと思いました。

    殊に、“増田再起”さん、“永井利枝”さんの演技には感服いたしました。

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